ウイスキーの蒸留工程

ウイスキー

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ウイスキーの製造工程では、大麦を発芽させることにより発芽酵素であるデンプン分解酵素の力を借りて糖分をつくりだし、酵母と乳酸菌の働きによって醸された発酵モロミは、かつての錬金術師達が考え出した銅製のアランビック型単式蒸留器であるポットスチルに移され、蒸留液としてアルコールと芳香成分が取り出されることになります。



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スピリッツ

モルトウイスキーは主張する酒という意味のラウドスピリッツ、グレーンウイスキーは沈黙の酒という意味のサイレントスピリッツと呼ばれていますが、このスピリッツというのはウイスキーなどを含む蒸留酒という意味になります。

日本語では蒸留酒のアルコールを酒精とも呼びますが、スピリッツにも精霊という意味があります。

液体を加熱していったん気化させたあと、気体を逃さないように集めて冷やせば再び液体に戻ります。

液体の加熱を適当な所でとめれば、その温度で気化しやすい成分のみを気化させて、それを冷やせば必要な成分のみを凝縮して取り出すことが出来ます。

これは錬金術師たちの求めた生命の水ではありませんが、今では多くの人々に求められるウイスキーの製造です。



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ポットスチル

ジャパニーズウイスキー、スコッチウイスキー、アイリッシュウイスキーなどモルトウイスキーの場合はポットスチルと呼ばれる特殊な形状をした銅製の単式蒸留器が用いられます。

これはアラビアの錬金術師たちが蒸留実験のために作り出したアランビックの流れを汲むもので、ウイスキーの蒸溜所の象徴ともいえるものです。

ポットスチルは大きく考えると3つの部分から構成されています。

発酵モロミを入れて加熱し、揮発性の成分を蒸発させる釜の部分、蒸発した蒸気を冷却して凝縮させる冷却器の部分、そして釜と冷却器をつなぐライン・アーム と呼ばれるパイプの部分です。

パイプとつながっている釜の上部の部分は膨らんでいてカブトと呼ばれています。

蒸留器の美しさ

ポットスチルを外から見ると芸術的な美しさがあると言われています。

特にラインアームの部分はその形状の優美さからスワンネックとも呼ばれています。

しかもポットスチルはすべて銅製なので、赤銅色のポットスチルが並ぶ様は誰もが圧倒されますので、ウイスキーラヴァーは一度見に行ってみることをおすすめします。

一つの蒸溜所に様々な形状のポットスチルがあるのが普通ですが、その理由はポットスチルの形状によっても出来上がってくるニューポットの品質が異なるので、様々なニューポットを作り出すためにあえて、形状の違うポットスチルをいくつも用意します。

蒸溜されるアルコール

沸点の低い揮発性の成分を揮発させて、優先的に取り出すのが蒸留技術です。

ウイスキーの発酵モロミの主成分は水と発酵工程により産み出されたエチルアルコールです、水の沸点は100度、エチルアルコールの沸点は78.3度と水より沸点が低いエチルアルコールは蒸留によって水より先に気化して濃縮されるため、蒸留液のエチルアルコールの濃度が高くなります。

アルコール以外の成分

発酵モロミの中にはエチルアルコール以外にも、原料の大麦麦芽やピートに由来する芳香成分や発酵由来の高級アルコーとその酢酸エステル、様々な有機酸類とそのエチルエステル、グリセロールや環状のエステルであるラクトン類など、非常に多くの成分が含まれています。

また、これらの発酵工程に由来する成分に加えて、酵母や乳酸菌などの菌体の成分も含まれています。

このように複雑で多様な成分を含む発酵モロミが蒸留されることによって、その中の多様な揮発性の成分が取り出され、これらがニューポットの特徴を決定します。

そのうち代表的な揮発性の成分は、高級アルコール、有機酸類、エステル類、カルボニル類であらや、成分の数としては数百を超えます。

ですが、ニューポットを特徴づけるという点では、これらが含まれる個々の含有量よりも、その香りや味の強弱が大きな意味を持ってきます。

ポットスチルの設計

蒸留によってエチルアルコール以外にも多数の複雑な揮発性成分が取り出されてくるわけですが、ウイスキーの場合ポットスチルの形状により成分の濃縮率のバランスが複雑に変わっていきます。

釜の中で加熱されて蒸発した成分は、釜の上部のカブトまで上がっていきます。

ところが成分によっては蒸留器の壁に触れることにより気体温度が下がり凝縮し、再び釜に戻ってしまうことがあります。

こういった現象を分縮といいますが、分縮が起こると揮発性成分は再び蒸留されてしまうことになり、その分エチルアルコールの純度が高まります。

これを精留と呼びます。

従ってカブトの大きさや形状がウイスキーの品質に大きな影響を及ぼします。

カブトの表面積が大きければ、成分が蒸留器の壁に触れる時間が増えて分縮率も上がり、精留効果が、高まるためにすっきりしたタイプのウイスキーになるし、カブトの表面積が小さければアルコール以外の成分を多く含むウイスキーが出来上がります。

ポットスチルの形状

ポットスチルは様々な効果を計算にいれたうえで形状を設計されています。

カブトの表面積が小さくくびれのない形状のものはストレートヘッドと呼ばれ、一つのくびれがある鏡餅のような形状のものはランタンヘッドと呼ばれます。

そして2回くびれのある二段重ねのような形状のポットスチルは、ボールヘッドと呼ばれています。

一般的にはくびれのあるほど揮発性成分の滞留が長くなるため、すっきりしたニューポットが出来上がります。

カブトにつながっているパイプであるラインアームによっても、ニューポットの品質が変わっていきます。

ラインアームの首の太さや首とパイプの取り付け角度によって影響を受けますが、首の長さでも影響を受けます。

首が長ければ揮発性成分が滞留する時間が長く、すっきりしたタイプのニューポットになりますし、逆に短いと重いタイプになります。

また、パイプの角度が下向きの場合も滞留してしまうため、精留効果がたかまりすっきりしたタイプのニューポットになります。

銅製である理由

ポットスチルが銅で出来ていることも、ウイスキー作りでは大切です。

おそらく蒸留器が発明された当初は、柔らかく加工がしやすい素材という理由で銅が利用されてきたことが考えられますが、銅は非常に高価で耐用年数も短いです。

それでも現在でも銅でポットスチルが作られているのは、金属触媒として様々な反応を起こす銅の性質がウイスキーの蒸留に有効だからです。

発酵モロミを蒸留して得られる揮発性成分はすべてがウイスキーに良い香り成分であるわけではなく、硫黄系の成分のように不快な香りをもつ成分もあります。

なかでも硫化水素を始めとするチオール化合物は悪臭の原因として有名です。

ですが、素晴らしいことにこの銅という金属はこれらのチオール化合物と反応を起こし補足する性質があります。

さらに蒸留工程では加熱によりバラの香りと呼ばれているβ-ダマセノンや、フラールなどの香り成分が生まれ、糖とアミノ酸のメイラード反応、有機酸類とアルコールのエステル化などが進みますが、熱効率が良い銅製にすることによってこれらの作用が促進すると考えられています。

まとめ

モルトウイスキーのジャパニーズとスコッチでは蒸留は通常、初留と再留の2度にわたり行われますが、初留で5~8時間、再留で6~9時間ほど行われます。

このようにただでさえ時間のかかる発酵以外にも、蒸留という工程で沢山の時間を要するのがウイスキーの製造になります。

さらに熟成によっても果てしない時間がかかり、遥か先の未来にやっと完成するのがウイスキーです。

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