国産ウイスキーを楽しむ、その前に。

ウイスキー

サントリー シングルモルト ウイスキー 白州 700ml

ウイスキーの種類を大きく分ければ、モルト(大麦麦芽)だけを原料にしているモルトウイスキー。

グレーン(トウモロコシなどの穀物)を原料にしているグレーンウイスキー。

その2種類をブレンドしているブレンテッドウイスキーがあります。

国産ブレンテッドウイスキーは繊細で奥深く魂に火をつけるような香りと味を持ち、それは今や世界に誇れるウイスキーとなっています。



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国産ウイスキーの誕生

日本では日本酒、焼酎、ビール、ワインなどは古くから馴染みがありましたが、ウイスキーは意外と新しく、国産ウイスキー第一号が販売されたのは1929年「サントリー・ウイスキー白札」が始まりです。

ただ、その「白札」はスコットランド直輸入の製法で作ったにもかかわらず、ビートの焚きすぎで焦げくさくなり、ほとんど売れませんでした。

その時の工場長はNHK朝の連続ドラマ「まっさん」でお馴染みの竹鶴政孝でした。

竹鶴政孝がふたたびイギリスに派遣され改良されたものの、当時のかぎられた愛飲家からそっぽを向かれたままでした。

国産ウイスキーは全く売れず、日本では輸入ウイスキーが飲まれ続けていたのです。

その10年後、1939年12月「サントリー・ウイスキー角瓶」が発売され状況は一変していきます。

この「サントリー・ウイスキー角瓶」は西のスコッチ、東のサントリーと絶賛されるほどの傑作だったのです。



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国産ウイスキーが美味いわけ

1929年に国産ウイスキー第一号「白札」が発売されて1939年「角瓶」が販売されるまでサントリー・ウイスキーは、とことん売れませんでした。

売れなかったのが幸いしたのです。

売れなかったから国産ウイスキーはダメだという印象を残さず、原酒を貯蔵庫で寝かすことができたのです。

そして12年物と言われる「角瓶」が誕生しました。

ウイスキーはソロ(独奏)ではありません。

3年のモルト、5年のモルト、7年のモルト、たくさんのモルトを調合して作り出されるのです。

その骨格になる傑作の原酒ができたのです。

その香りと味のシンフォニーを、タクトを振って総指揮をするのが「ブレンダー」です。

色々な要素を組み合わせたり、ほどいたりしながら彼(あるいは彼女)の鼻と舌と全神経のざわめきの中から、同時代の日本人の秘めやかで強力な欲求を洞察し、それに応えるウイスキーをブレンドするのです。

そのような官能の精だからこそ国産ウイスキーは日本人の舌と喉に沁みわたり、腹と心に火を灯すのです。

日本人がウイスキーを飲み始めたきっかけ

傑作の国産ウイスキー「サントリー・ウイスキー角瓶」が発売されたといえ、ウイスキーは他のアルコール飲料のように常飲されるものではありませんでした。

では、ウイスキーを飲み始めたのは、何がきっかけだったのでしょう?

角瓶が発売された1939年(昭和12年)は日華事変勃発の年でした。

戦争の影響は強く、強い酒・ウイスキーは男の酒として、軍隊にとって特に必要なものでした。

つまり、軍隊の酒保には国産ウイスキーがあり、男たちは軍隊にはいって初めてウイスキーを飲み、そのスピリッツを知ったわけです。

戦後、その味を知った多くの男たちが軍の解散と共に日本各地に散っていき、ウイスキーは次第に日本人の舌に浸透し、現代へと発展していくのです。

「昭和な人におすすめ」サントリートリスウイスキー

いつの間にか、アクティブシニアからエイジドシニアに移行してしまった団塊の世代の方なら覚えているでしょう。

「トリスバー」とそこに置かれていたPR雑誌の「洋酒天国」。

私がウイスキーを覚えたのも「トリスバー」でした。

今では婦女子も飲んでいるハイボールはトリスバーの定番メニューで、VANやKENTのジャッケトを着こなし、トリスハイボール片手にジッポーライターでショットホープに火を点けるのがトレンディーでした。

そして、日本人の食生活はチーズ、バター、肉へと変化していきました。

街の歓楽街には「トリスバー」が増え、ロックンロールのリズムが若者たちの体を揺すっていました。

そんな時代に覚えたトリスウイスキーを愛飲し、ハイボールならトリスなどと、いらぬこだわりを持ち続けているのです。

ウイスキーグラスを傾けて夢想する

NHK朝ドラ「まっさん」でモルトをブレンドしている場面を見ました。

自分の舌と鼻だけを信じ、繊細で奥深く神経をざわめかせ一人孤独にブレンドする。

グラスを傾けたとき、琥珀の液体の向こうに、そんなブレンダーの光景が見えてきます。

でも、ひょっとすると病院のように清潔で、顔が映るほどでピカピカの廊下で、メガネをかけた白衣の女性がいくつものフラスコに向かい、モルトの匂いを嗅ぎながらタブレットに何か入力しているのかもしれませんね。

それもいいじゃありませんか…、彼女がブレンドしたウイスキーが私の残り少ないスピリッツに火を入れてくれるのですから。

まとめ

世界5大ウイスキーはスコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアン、ジャパニーズで、それぞれ伝統に培われた技術で世界をリードしています。

そのひとつひとつに個性と味わいがあり好みも別れます。

5大ウイスキーのなかで国産ブレンデットウイスキーは、日本特有の優美さや繊細さを持ち、同時代の日本人のピュアな嗜好を洞察した素晴らしいウイスキーです。

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