奥深い日本酒の秘密、その重要な4つの工程について

日本酒

日本酒

知れば知る程、日本酒が美味しくなるのではないでしょうか。

日本酒は多種多様、その米となる原料から造り方の工程、作り手の想いなどによっても味わいは全く変わると言います。

これからの季節、美味しいお料理のパートナーとして日本酒を選ぶ方も多いと思います。

そんな日本の代表的なお酒。

日本酒について少し知識を深めてみると、また違った方向からその美味しさの秘密を知り、更に好きになるかもしれません。

ここではその日本酒を造る工程として、重要とされる【原料・酵母・ろ過・火入れ】について、出荷するまでの裏側をご紹介します。



①原料について知る~酒米について~

酒の原料となる米は、酒造りに適した『酒造好適米』のほか、食用の『一般米』を使用することもあります。

酒米とは一般的な米よりもふっくらと粒が大きいのが特徴的で、タンパク質の含有量が少ないとされています。

人にも様々なタイプがいるように、酒米の個性も多種多様です。

原料となる米というシンプルな材料を、複雑な工程と人の手によって酒へと変えていくのが日本酒醸造の特徴です。

どこまでが原料の米の力で、どこからが人の技や発酵の力なのかをはっきり見極めることは難しいものです。

良い酒米とは?

酒を醸す酵母にとっては、酒米(=麹)は栄養分となります。

米がきれいに溶けることで、発酵もスムーズに進む事になる為、良い酒米とは一様に、『よく溶ける米』と言われています。

酒米の最高峰、山田錦

酒米の中で最も有名なブランドといえば山田錦です。

主な原産地は兵庫県。

全国の酒米の生産量のうち、約9割以上を占めるとされています。

『粒が大きく精米しやすい、麹にしたときに綺麗に溶けやすい』といわれ、低温で発酵する大吟醸づくりで効果を発揮する酒米です。

米の個性をいかした工程

日本酒にはいろいろな工程があり、麹菌の量や、発酵温度、それぞれの米に合った施しを行う事が大事とされます。

米によって変化させる作り手の創意工夫が酒の質に反映されるところも、日本酒の興味深い点ではないでしょうか。

酒米を精米し、その後に洗米(せんまい)、浸漬(しんせき)蒸米(じょうまい)、麹(こうじ)づくりといった工程を経て、発酵過程に入ります。



②発酵とはどんな工程?~奥深き酒酵づくりについて~

発酵過程となる酒酵づくりについてです。

アルコール発酵をつかさどる酵母を大量に培養する酒母(もと)づくりから行います。

蒸した米に麹と水を加えて混ぜ合わせ、酵母を加え、2週間ほどかけて増殖させます。

この発酵の過程で不可欠となる『酵母』について知っていきましょう。

酵母とはなにか?

基本は生き物による微生物の活動です。

一番大切な働きは、『食べて生き延びて、糖をアルコールに変化させる』こと。

良い果汁が絞れても、酵母がなければジュースのまま、ワインにはなれません。

同様に、どんなにいい米麹ができても、酵母がなければ酒のアルコールは造られないのです。

また、麹が酵母にどんな栄養素を与えて発酵していくかで、酒の風味はいかようにも変化していきます。

どんな日本酒なのか知ろうとしたとき、酵母の性質を知っておくことは近道になりそうです。

酵母の選び方とは?

倉の仕込み水との相性が一番大きく、どんなに良い酵母であっても、その蔵が使用する水質によって、発酵力の強弱は変わってくるといいます。

仕込み水として使用されるものは、地域によって中硬水であったり、軟水であったりと様々です。

酵母にとっては、栄養分となる仕込み水のミネラル含有量によって生き物としての活動に強弱をもたらし、酒の口当たりや味わいの違いに繋がっていくのです。

その後に、もろみづくり、搾りの工程を経て、ろ過をします。

③ろ過~するのとしないのではどんな違いがあるのか~

絞った酒は静置して『おり』ひきした後、一般的にはろ過して、よけいな味や香りを調整し、安定させます。

においの元となる不純物を取り除き、色を透明に近づけます。

この工程で、酒の風味や香りまで除かれてしまう場合もあり、ろ過をしない『無ろ過』の日本酒も存在します。

ろ過の方法は2種類

活性炭素を使用した『炭ろ過』は、酒に残る余分な色や雑味を吸収させ、スッキリとクリアなお酒に仕上げてくれる効果を持つと言います。

もう1つの方法は、炭を使わずお酒をそのまま機械へ通す方法を用います。

多くのろ過の仕方では、この炭を使用した炭ろ過と、珪藻土や木綿を使用したフィルターを使用した2種類の方法で行います。

ろ過と無ろ過の味わいの違い

グラスに移してみれば、その違いは一目瞭然です。

無ろ過のものは薄く、曇りがかっており、その白い濁りが印象的です。

この状態が美味しいのが『若飲み』とよばれるタイプの日本酒。

熟成でゆっくり旨みを感じたいなら、こちらも是非おためし頂きたいです。

④火入れ

ろ過までの工程を経ても、酒の中には微々たる酵母菌や酵素などが残り、多少なりとも味を変えてしまう可能性があります。

日本酒の酒質を安定させるために一般的に『火入れ』と序ばれる加熱殺菌を行います。

火入れとは時間を止めることとされ、重要なのはいつどのタイミングで火入れをするか、がポイントとされています。

火入れのタイミングで日本酒の名前は変わります。

火入れのタイミング・回数・時期を変えることで、味わいも異ります。

・生酒…火入れなし【搾り】▷【貯蔵】▷【出荷】・生詰…火入れ1回【搾り】▷【火入れ】▷【貯蔵】▷【出荷】・生貯蔵…火入れ1回【搾り】▷【貯蔵】▷【火入れ】▷【出荷】・一般的な日本酒…火入れ2回【搾り】▷【火入れ】▷【貯蔵】▷【火入れ】▷【出荷】

火入れをしない『生酒』

『生』と名称につきますが、火入れのしない日本酒は『生酒』のみです。

搾り立ての生酒は、香りも味も華やかで、ガスを含んで弾けるスパークリングワインのような新鮮さと美味しさがありますが、時間が経つにつれ味の変化が起こることがあります。

甘さであったり重さを生むやすくなりやすいといった弱点もあるため、新鮮なうちに早めに頂きたい貴重なものです。

そのままで頂く『生酒』と『火入れありの日本酒』、どちらもまた違った魅力があり、その違いを楽しむ事ができるでしょう。

挑戦してみたい!日本酒のことをもっと知りたくなった方に、おすすめの資格

日本酒を提供する飲食店・販売事業者や、知識をもっと深めたいという消費者の方に向けた、資格や検定があります。

種類は一般の人でも受験可能な『日本酒検定』と、プロ向けの『利酒師(ききざけし)』・『酒匠』・『日本酒学講師』など幅広く存在します。

日本酒検定は日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会が実施している資格試験です。

消費者の方が、もっと楽しんでもらうことを目的として実施され、テイスティングは行わず、日本酒についての様々な雑学知識が問題として用意されます。

級数は10級から1級まで。

10級から4級までは、インターネットで無料で受験が可能です。

3級以上からは受験料がかかり、会場での受験となります。

好奇心を持って日本酒をもっと楽しむための知識を取り入れると、その世界は広がり、普段飲む日本酒がさらに魅力的に、美味しく感じるのではないでしょうか。

まとめ

日本酒は出荷されてから消費者にたどり着くまでに、日本の職人さんの手によって様々な工程をたどり、最後まで宝石の様に磨きに磨かれ、純度の高い美味しい日本酒に仕上がります。

その一杯を注ぐまでに、本当に大変な過程を経て頂く事が出来るという事を知ると、また違った方向から日本酒を楽しむ事が出来るのではないでしょうか。

日本酒