グラボの冷却方法、空冷と水冷どっちがいい? それぞれのメリット・デメリット

グラフィックボード(グラボ)

NZXT 水冷クーラー用GPU冷却ユニット ブラック KRAKEN G10-BK

高負荷のゲームや動画処理をしている気になるのがグラボやCPUの排熱です。

自作PCで良く使われるのは空冷と水冷の2種類が多いかと思います。

ですが、「空冷って実際のどのくらい冷えてるの?」「水冷ってそんなに冷えるの?」といった疑問がある人も居るのではないでしょうか。

今回はそういった、グラボやCPUの冷却方法である空冷と水冷それぞれのメリット・デメリットについてまとめました。

参考にしていただければ嬉しいです。



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空冷について

空冷式は、いわゆる「普通の方法」です。

ファンを回転させることで空気を循環させ、ヒートシンクを冷却する事でCPUやGPUの温度を下げる方法です。

空冷式の主なメリット・デメリットは次のようなものがあります。

●冷却性能は普通
●導入コストが安い(ほぼ0に近い)
●ファンが回るため、音がする

中でも、導入コストの低さが非常に大きなポイントです。

グラボなどは大抵は元からヒートシンクやファンが取り付けられた状態で販売されているため、出力不足による電源ユニットの買い替えなどを除けば、商品を購入するだけで他のコストはかからないことが殆どです。

空冷式と一口に言っても、大きく分けて「内排気」と「外排気」の2種類があります。

いずれもメリット・デメリットがはっきりと分かれているため、自分の用途に合わせて選ぶのがおすすめです。

空冷方法の1つ「内排気」

主にオリジナルモデルのグラボや大半のCPUで使用されいるのが内排気式です。

この方法ではケース外から常温の空気を取り込み、ケース内に暖かくなった空気を吐き出して冷却しています。

内排気式の主な特徴は次のようなものがあります。

●冷却性能を上げやすい
●効果が高い分、低負荷時は静か
●小さいケースでは使いにくい

等の点があります。

内排気の大きなメリットは空冷式でありながらある程度の冷却性能が期待できる点と、その分、低負荷時には回転数を落とす事で空冷式のデメリットである音の大きさをセーブすることができる点です。

その反面、ケース内部に暖かい空気を吐き出す都合上、ケース内に一定以上のスペースが必要になります。

このタイプの製品はミドルタワー以上のケースを使っている人や、エアフローがしっかり構築されたケースを使用している人におすすめです。

空冷方法の1つ「外排気」

主にリファレンスモデルのグラボに使用されているのが外排気式です。

基本的な仕組みは内排気式の真逆の方法で、シロッコファンという特殊なファンを回すことでケース内から常温の空気を取り込み、ケース外に暖かくなった空気を吐き出す仕組みを取っています。

外排気式の主な特徴は次のようなものがあります。

●外に熱を出すため、小さいPCケースでも安心して使える
●冷却性能は比較的低い
●その分うるさくなりがち
●埃が詰まると効果が一気に弱くなる

などの特徴があります。

外排気式の一番のメリットは、外に暖かい空気を吐き出すため、内部のスペースが少なくても導入しやすい点です。

MicroATX以下のケースや内部が特殊な配置になっているケースを使っている人でも使いやすいのが特徴です。

反面、冷却性能自体は内排気式と比べて低いため、どうしても稼働音は大きくなりやすいのがデメリットです。

また、シロッコファンに埃が詰まると冷却性能が著しく低くなるため、定期的な掃除とチェックが必要になります。

この方式のグラボは、主に小型ケースを使っている人におすすめです。



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水冷について

水冷式は、クーラントと呼ばれる冷媒を含んだ冷却水を用いた冷却方法です。

空冷式ではヒートシンクが熱を吸い取っていましたが、水冷式ではこの役割を冷却水が代わりに行います。

水冷式の主なメリット・デメリットは以下の通りです。

●高い冷却性能
●初期コストが高い
●メンテナンスが面倒

大きく分けるとこのよう点があります。

特に目立つのはその冷却性能ですが、それと反比例するように導入時のコストが高く、冷却水の漏出トラブルの可能性、定期的なメンテナンスもとても面倒なものになっています。

水冷式は全体的に「ハイリスク・ハイリターン」な構成とも言えるもので、どちらかというと自作PCに精通している人が更に上を目指すか、あるいは一つの趣味として取り組むような物であると言えます。

水冷式の冷却性能はなぜ高い?

水冷式は冷却性能が高く「よく冷える」と言われますが、これは少し違います。

水冷式では熱の吸収効率が非常に良く、熱として放出されるよりも早く吸収・解消されます。

そのため、よく冷えるというよりも温度が上がりにくい、と表現するほうが適切です。

そもそも何故、水冷式と空冷式でそれほどの差が生まれるのかというと、空気と水で熱伝導率が大きく異なるからです。

そのため、より多くの熱を吸収することが出来ます。

例えば、一般的な空気と水道水では凡そ20倍の差があるとされています。

水冷式で使用される冷却水は水道水ではなく冷媒を含み、より効率的に熱を吸収できるものなため、この差は更に広がります。

また、熱伝導率が高いことで冷却水から熱を取り除くときの力もより少なく済みます。

そのためラジエーターも直接ファンで空冷するよりもはるかに低速かつ一定の回転数で効果的に熱を逃がすこと出来るのも水冷式の冷却性能が高いとされる理由の一つと言えます。

水冷の耐用年数は?

水冷式は使用するパーツにもよりますが、比較的長く使えます。

取り付けるだけで使用できるタイプの簡易水冷キットの場合は、中に充填された冷媒の減少や劣化などで徐々に効率が落ちますが、概ね2~5年程度使えるとされています。

そのため、定期的にPCの構成を更新している人は殆ど故障よりも時期が来ての交換する事のほうが多いです。

本格的な水冷式の場合にはパーツ単位での交換ができるため、その気になれば10年単位で使い続ける事も出来ます。

特にチューブやリザーバーといった可動部品の少ないパーツは長持ちしやすいです。

ただし、冷媒の劣化や揮発などがあるため、定期的に冷却水の量をチェックしたり、時には全て抜いて交換する必要があります。

またポンプがキチンと冷却水を循環させているかのチェックや、各部からの漏出などの点検が必要になります。

水冷は難しい?

水冷式は、ハードルが高いと思われがちですが最近では取り付けるだけで水冷化出来る簡易水冷キットなども販売されています。

水冷式は気になるが、本格的な水冷化をするのはちょっと…という人にはおすすめです。

簡易水冷とは言いますが、冷却効果は水冷式のそれのため、空冷式とは比べものにならないほど冷えます。

注意点として、PCケースのサイズによっては取り付けられない事があります。

小さいケースだと収まらないといったトラブルがありますが、簡易水冷の場合にはチューブの長さがあるため、大きすぎるケースでも取り付けられない可能性があるため注意が必要です。

また、チューブが黒いタイプは冷却水の残量が把握できない(密閉されているため蒸発することは稀ですが)ため、製品に書かれている使用期限は守るようにしましょう。

一般的な用途であれば、空冷で十分?

正直、空冷式でも一般的な用途の範囲内であれば冷却性能としては十分です。

また、静音性が高いから水冷式と考える人も居ますが、コストや手間を考えるとあまりおすすめできません。

PCを静かに動作させたいのであれば、静穏ケースと静音ファン、セミファンレスのグラボなどを利用した方がはるかに少ないコストで実用的な物が組み上げられるためです。

逆に、静かさではなく高い冷却効果が必要な人(オーバークロック用など)やPCを組む事自体が趣味の一環という人には簡易水冷、本格的な水冷PC問わずおすすめです。

特に紫外線に反応して発光する冷却水と透明なチューブやリザーバー、アクリル製の窓が付いたサイドパネルなど使用して「水冷機構が光るPC」などはまさに水冷だからこそ出来る楽しみです。

興味がある人は検討してみはいかがでしょうか。

まとめ

グラボの冷却方法に関しては空冷と水冷、どっちがいいかとなると正直、水冷を導入する分のコストでスペックの高いグラボを選び、空冷のまま使う方がおすすめです。

水冷はそれでは足りない人向け、といった要素が強く、少なくとも最初からいきなり水冷にする必要はないと思います。

どうしても水冷が試してみたい、という人はいきなり本格的な物から始めず、まずは簡易水冷キットを試してみるのがおすすめです。