グラボの性能を狙って下げる?「ダウンクロック」の意味とは

グラフィックボード(グラボ)

MSI GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G グラフィックスボード VD6302

グラボの性能を上げるために「オーバークロック」を行う人が居ますが、全く逆の方向性として、進んでグラボの性能を抑える「ダウンクロック(アンダークロックと呼ぶ事も有ります)」を行う人も意外と少なくありません。

なぜ、自分からグラボの性能を下げて使うのか、またダウンクロックをすることによるメリットはどこにあるのか、ダウンクロックを行う事によるリスクなどについてまとめました。



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クロックの操作はオーバークロックだけではない

GPUやCPU、メモリといったパーツに対してクロックの上限を強制的に引き上げる事で、本来の性能よりも高い性能を発揮できるようにする操作を「オーバークロック」と言いますが、それとは逆に本来発揮できる性能よりも低い位置を上限にしてリミッターをかける操作「ダウンクロック」も存在します。

性能を下げてしまうため、意味のない行為にも思えるダウンクロックですが、その利点は意外と多く、わざわざダウンクロックしても性能が見劣りしないように最高クラスのパーツを購入するというユーザーまで存在します。

また、オーバークロックを比べると、調整の手間などは同じくらいかかるものの、冷却関連の懸念などは殆ど無く製品をそのまま使える事が大半であるため、行うために必要なハードルそのものはかなり低いという点もオーバークロックとは異なる点の1つです。



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ダウンクロックは基本的には必要無い

最初に断言できる事として、最近のグラボの多くは基本的にダウンクロックの必要性がほぼ皆無と言っていいです。

というのも、最近のグラボの多くは処理の負荷によって自動でクロックを最適化する仕組みになっているため、わざわざダウンクロックしてクロック上限に蓋をしなくても負荷を調整すればそれに対応する形で自動的にクロックが減少、発熱や消費電力も減少するからです。

ですが、では必要な場面が全く存在しないか?

というとそういう訳ではありません。

ダウンクロックをすると、負荷がピークに達したときの発熱や消費電力が減少します。

スペックの高いグラボの中には発熱量や消費電力が凄いモデルも少なくないため、それらのグラボを使っていて、多少スペックを犠牲にしてもピーク時の発熱や消費電力を抑えたい場合にはダウンクロックは効果的な方法の1つとして考えられます。

ダウンクロックの主なメリットは?

ダウンクロックの主なメリットは、基本的にオーバークロックでデメリットになっている事をそのまま反対にしたと考えればいいです。

代表的なメリットは次のようなものが挙げられます。

●発熱量減少・消費電力減少以上の2点が特に大きなメリットです。

特に発熱量の減少はこれからの季節のような、室内の温度が上がりやすくなる時期にはぴったりで長時間の連続稼働でも室温が上がりにくくなるなどのメリットがあります。

また、熱暴走による強制終了や熱による破損などもある程度防ぐ事が出来ます。

消費電力の軽減も、PCパーツの中でも飛び抜けて消費電力が大きいグラボでは十分効果的と言えます。

また、ダウンクロックは負荷がかかりづらくなるため、グラボの寿命が安定し易いという説もあるものの、そもそも数値で測れるものではないため一概に「必ず寿命が長くなる」という訳ではない点には注意が必要です。

夏の間だけダウンクロックを行うユーザーも

ダウンクロックのメリットでも触れた通り、クロックを下げることで処理性能は落ちてしまいますが、同時に発熱量を抑える事が出来るという利点があります。

その点を利用して、夏場の間接的な冷却方法としてダウンクロックを選択するPCユーザーの人も居ます。

処理能力が落ちてしまうため、いつもは普通に処理が出来ていたものが出来なくなる事があるため、ダウンクロックをする場合には同時に各種アプリケーションの設定などを見直すことも重要です。

中でも、3Dゲームなどは稼働中ほぼずっとクロックが上限付近になることが多いため、上限を下げるダウンクロックは効果的と言えます。

一方で上限が下がる分だけ処理に時間がかかるようになる点は他のアプリケーションと変わりないので、今までと同じ感覚で遊びたい場合には描画設定の調整などが必要になります。

ダウンクロックのデメリット

ダウンクロックする際にデメリットは主に以下のようなものがあります。

  1. 補償対象外になる可能性がある
  2. 処理能力低下による遅延
  3. オーバークロックと同等の面倒くささ

等があります。

特に、クロックを絞ると必然的に処理能力が低下するため、それ以前と比べて処理に時間がかかるようになることがあります。

ゲームなどでグラボを使っている場合には、プレイ中のストレスになってしまう事もあるため、快適さを重視したい場合にはおすすめの方法とは言い難いです。

また、ダウンクロックはその特性上オーバークロックのような深刻なハードウェアトラブルには繋がりにくい傾向がありますが、極端にクロックや電圧を下げ過ぎたりすると動作不良や遅延といったトラブルが起きる事があるため、実際に行う際にはオーバークロックと同様に様子を見ながら段階を踏んで調整する必要があるなど、意外と手間がかかる点もデメリットの1つとして考えられます。

グラボにおける身近なダウンクロックの例

グラボのダウンクロックで、一番簡単かつ身近なものとして「オリジナルのオーバークロックモデルのグラボを、リファレンス相当のクロック・電圧設定で動作させる」というのもある意味では(オーバークロック状態を基準として考えれば)ダウンクロックしていると言えます。

オリジナルモデルはオーバークロックによる発熱量の増加をフォローするために冷却性能の高いGPUクーラーを使用する事が多く、発熱量が減るダウンクロックと合わせることで、ファンの回転速度の低下による簡易的な静音化としても使う事が出来ます。

特に最近はこの方法を採用しているグラボがかなり多く、ユーザーが設定するのではなく、予めグラボに2種類のBIOSが組み込まれていて、専用ソフトを使った切替や物理的なスイッチ1つで簡単に切り替える事が出来るものなどが登場しています。

簡単にクロックを変更出来るグラボ「MSI GAMING Xシリーズ」

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複数のBIOSを搭載しているグラボとして代表的な物の1つに、MSIが出しているゲーム用向けのグラボシリーズ「GAMING X」があります。

ゲーム向けからスペック最重視、静音かつ低発熱・省電力という3種のモードを選ぶ事が出来るため、わざわざユーザー側でダウンクロックをしなくてもある程度の使い分けが出来る気軽さが特徴です。

また、搭載しているGPUの種類もGeForce、Radeonともに豊富なため、自分の用途に合わせて色々選べる点もメリットです。

実際にダウンクロックする際の手順

グラボのダウンクロックを実際に行う場合、GPUの各種設定が行えるアプリケーションを用います。

この時に、クロックだけを落とすのではなく一緒に電圧も調整する事でより高いワットパフォーマンスを得る事が出来るようになります。

手順としては段階的にコアクロックを少しずつ下げて運用(元のクロック-100~150MHz程度が目安、下げ過ぎると動作不良を起こします)して、問題が無ければ電圧を絞る、電圧を下げた後に動作に不具合が起きるのであれば元の数値に戻す、という形で進めていきます。

また、段階を踏むのが面倒な場合には、先述したようにリファレンスモデル相当の設定を試してみるのがおすすめです。

BIOSが複数搭載されていない場合には、上限クロックをリファレンスの最大ブーストクロックに合わせて調整し、電圧なども調整してみましょう。

ちなみに、グラボの種類にもよりますが、初期の設定では電圧に若干余裕を持たせてある事が多いため、クロックをいじらずにこの点を少し(50mVくらい)下げてみるだけでも効果が出ることがあるため、グラボのパフォーマンスを落としたくないという人は電圧の制御だけ調整してみるのもおすすめです。

まとめ

ダウンクロックの利点と言えば、やはりグラボからの発熱と消費電力の抑えられる点です。

また、オーバークロックと比べるとパーツに負担がかかりにくい分、クロックと電圧の調整を段階的に進め、行き過ぎた設定を試したりしなければ壊れたりするという事も殆どないため、比較的気軽に試せる点も魅力的です。

夏場の高負荷動作は見た目以上にパーツに負担がかかっているため、グラボの熱が気になる人は一度試してみるのもおすすめです。