ATG製作の邦画ベスト10ランキング

第10位 「エロス+虐殺」

あの頃映画 松竹DVDコレクション エロス+虐殺(ロングバージョン)

完全版で見ると三時間半を越えるという大長尺の前衛的映画。

過去と現代のふたつのパートのうち、現代パートが今見ると古臭くなっていて、正直退屈します。

ただ大杉栄の三角関係を描いた過去の部分は完成度が高く、ここだけで独立した映画にしてくれたらもっと良かったのにと思います。

第9位 「儀式」

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大島渚のATG映画の中でも最も普通の商業映画に近く、そのせいか当時のキネマ旬報ベストテンで一位を取っています。

旧家の人間模様を描き、その意味では大島渚らしくないフィクショナルなドラマ性に富んだ内容で、出来栄えはいいにしろ、これなら別に大島渚が監督する必要もない、と思ってしまいます。

第8位 「初恋・地獄篇」

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素人の男女ふたりを主役にしたいかにも羽仁進らしい青春ものです。

この映画に関する羽仁進の講演を聞いたことがありますが、「篇中に出てくるSMがらみの場面を共同脚本の寺山修司の趣味だと思う人が多いが、あれは全くの僕の趣味。当時SMの写真などを集めていた」とのこと。

こういう事を大勢の前でノンシャランと告白する監督自身にビックリしました。

第7位 「田園に死す」

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寺山修司が映画的な枠組みに囚われず、奔放な詩的イメージを画面に溢れさせた代表作で、寺山監督が自主制作の十六ミリ映画で試みていたようなギミックをここでも用いて、観客をあっと言わせます。

雛人形が川を流れてくるところなど、新鮮なショットがいくつも出てきて圧巻です。

第6位 「祭りの準備」

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シナリオライター志望の青年を主役にするという、新藤兼人の「愛妻物語」と似た設定ですが、こちらの方は思春期の青年の悶々とした日常を描いていて、別にシナリオに興味がなくても共感が持てます。

原田芳雄の演技が圧倒的に良く、「竜馬暗殺」と並ぶ代表作でしょう。

第5位 「心中天網島」

心中天網島 [東宝DVD名作セレクション]

篠田正浩は「沈黙」や「少年時代」のような優れた原作を映画化の際ダメにすることもあって、どちらかと言うと信頼できない監督なのですが、この「心中天網島」は傑作に仕上がっています。

低予算を逆手にとった様式的なセットが効果を上げていて、特に前半の会話のシーンは緊迫感あふれる名場面です。

小松方正の太兵衛役がいかにも柄にハマっていて、これは一世一代といっていい名演技でした。

第4位 「サード」

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東陽一監督の傑作。

ドキュメンタリー的な手法を活かした映画は色々とありますが、これは羽仁進の言うように素人が演技をするという様子をドキュメントするような面白みがあり、その新鮮さに驚かされます。

性的な描写も即物的なのが非常にリアルで、今でも永島敏行を見るとこの映画の初体験の場面を思い出します。

第3位 「少年」

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大島渚の映画は問題意識を前面に押し出してこちらをアジるような作品が多く、今見ると辟易させられることが多いのですが、この映画に関してはその弊害がなく、素直に見られます。

当たり屋をさせられる少年という題材がこちらの感情に訴えるということが大きいのでしょうが、とにかく描写が叙情的で、ラストなどは泣いてしまいました。

第2位 「股旅」

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当時巨匠と呼ばれるような監督がATG映画を作ることはなく、この市川崑作品が唯一の例外です。

「木枯し紋次郎」をテレビで監修していたことがこの時代劇に影響していて、「イージー・ライダー」の時代劇バージョンという印象を与えます。

冒頭の一宿一飯の挨拶からいかにもオフビートで、この監督の特異な感覚が現れています。

第1位 「竜馬暗殺」

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個人的にATG映画の中でも最高作のひとつと思う作品です。

いわゆる一千万円映画では時代劇は難しく、リアルなセットなど作りようがないため、「心中天網島」のような様式的なものでごまかすことが多いのですが、この映画では神社の境内や古い建物の内部だけを写したりして、うまく時代劇らしい時代劇を成立させています。

内容は革命に関するディスカッションのようなもので、幕末と製作当時の世情を重ね合わせているわけですが、今見てもそれが生き生きしていて、別に左翼的な傾向のない人でも楽しめます。

まとめ

ATGは製作費の制限と引き換えに監督の自主性を重んじ、次々と傑作秀作を製作して一時代を画しました。

東宝松竹東映などで却下された企画だけに野心的で、現在かえって実現が難しいような作品もあります。

有名な作品をリストアップしてみました。