骨盤が原因?女性特有の腰痛のメカニズムとその改善法
一般的に、腰痛は女性に多い悩みだとされています。
身体の構造上の問題だけではなく、女性には妊娠・出産などの大きな転機もあるため、体質や身体のバランスの変化などが原因で「もともとそうでもなかったのに、あるきっかけで腰が痛みだす」という方も少なくありません。
今回は、そういった女性特有の腰痛のメカニズムと骨盤との関係について解説していきます。
女性の腰痛の原因とは
なぜ女性に腰痛が多いのでしょうか。
それは、はじめにも述べたように、身体の構造に原因があります。
大まかに述べると、
●女性特有の筋力不足
●筋力不足からくる冷え性
●妊娠や出産を契機とした体幹の崩れ
●加齢による骨密度の低下が男性よりも顕著である
こういったところに端を発します。
他にも、尿道に大腸菌が入りやすいため腎臓炎が起こりやすいといったこともあり、こういった内臓疾患の併発症状としての腰痛もあります。
今回は身体バランスや構造を原因とした腰痛に焦点を当てて、詳しくメカニズムを説明します。
腰痛のメカニズム
インナーマッスルの不足
女性よりも男性のほうが筋力量が多いのは周知のとおりですが、その理由は男性ホルモンの一種「テストステロン」にあります。
これは女性でも、スポーツや筋力トレーニングによって分泌量を増やすことができます。
テストステロンの主な効果は筋力の増強・加えてセロトニンに似た「気分の高揚」なども謳われており、今非常に注目されているホルモンです。
それはさておき、女性はこのホルモンの分泌量が元々少ないため、特にこれといったトレーニング習慣がない限りは加齢と共に筋力の低下も著しくなります。
ここで腰痛に関係するのが「インナーマッスル」、中でも内臓を包み保護する役割をもつ「腹横筋」の存在です。
実は、この筋肉が骨盤の維持や身体の中心バランスを決める要となっています。
この筋力が衰えることにより、骨盤が前傾、あるいは広がってしまい、腰回りの痛みの直接的原因になり得るのです。
ヒール靴の功罪
オフィスでもオフの日のおしゃれでも欠かせない、ヒールの存在。
実はこれが、つらい腰痛の原因となることがあるのです。
ヒールを履き始めたとき、姿勢が前傾になるのを必死に立て直した覚えはないでしょうか。
履きなれている人も、実は無意識に前傾姿勢を下半身全体で垂直に保つように歩行しているのです。
このとき、足の筋力が不足しているなども一因ではありますが、上半身を後方にそらす…つまり、腰が反った状態になります。
イラストで描かれるヒールを履いた女性も、お尻が出ていて腰が反っているというものが多くあります。
この状態は非常に危険で、歩行時の負荷を腰が一手に引き受けていることが無きにしも非ず、と言えます。
心当たりのあるかたは、お持ちの靴を一度見直してみてもよいのではないでしょうか。
骨盤痛のサイン
さて、腰痛を骨盤が原因であるという側面から掘り下げてみます。
この場合、厳密には「腰」ではなく「骨盤」が痛みを起こしているということも考えられます。
筋力の低下などは前述した通りで、稀に感染症ということもあり得ますが、骨盤痛の目安となるものをここで挙げていきます。
●靴のかかとが片方だけすり減っている
●鏡の前で立った時、どちらかの腰が下がっている
●すぐに座りたくなる
●腰を大きくひねることができない
●腰に力が入らない
これらの症状が起きているときは、「骨盤痛である」可能性が非常に高くなります。
さて、骨盤痛の代表格ともいえる産後の痛みについても、後述します。
産後の腰痛はこれが原因
出産後に腰痛が起きるようになったという体験談は、少なくありません。
原因の多くが、出産時に開いた骨盤が元の位置に戻っていない事。
スポーツの習慣があるかたや元アスリートのかたは、筋力の回復とともに骨盤が矯正され元通りに自然に閉じ、こういったトラブルは比較的起きにくいのです。
デスクワークメインでお仕事をされていたかたや、どちらかといえばインドア派の人は、もともとの筋力がないために骨盤が閉じず、開いた状態で長く過ごすことになってしまいます。
また、腰回りはちょうど脊椎の大きな神経の通う場所でもあるため
●自律神経の乱れ
●育児によるストレス
こういったことが原因で、痛みが起きることも考えられます。
身体を鍛える
女性特有の腰痛を防ぐために、普段から体を鍛えておくことは非常に効果的と言えます。
前述にもあった「テストステロン」の分泌量増加は、骨盤を支えるインナーマッスルの強化だけではなく、生理前の抑うつ状態や自律神経の乱れなどにも期待できます。
これらはいずれも腰痛の原因となるため、筋力トレーニング・あるいは軽い運動の週間を持つだけで多角的に腰痛の予防につながる可能性があると言っても、過言ではないでしょう。
ただし、現在進行形で腰痛にお悩みのかた・体をひねることすらできない程度の痛みを伴うかたは、医師・整体師などとよく相談しながらトレーニングを行うようにしましょう。
月経前の腰痛対策
月経前の腰痛の原因は、
●ホルモンバランスの変化
●骨盤内の血流の乱れ
この2点にあります。
今回は後者にスポットを当てて、どんなことが出来るかを考えてみましょう。
身体をあたためる
生姜やゆずなどが入った飲料を活用する・月経が近くなると入浴の頻度を高めるなどをして、なるべく身体を温めるようにしてみましょう。
骨盤を支える筋肉の血行がよくなり、月経中のつらい痛みにも効果が期待できます。
正しい姿勢で座る
これは普段からの生活でも言えることではありますが、
●椅子には深く腰掛ける
●お腹に力を入れて、腰を押し戻すようにする
これらを意識して、正しく座るように心がけてみましょう。
産後の身体を立て直す
出産後の身体のバランスを元に戻し、腰痛を防ぐためには、まず専門家の意見を仰ぐことをおすすめします。
自力で戻すとすれば、産褥ベルトなどの使用が挙げられるでしょう。
しかし、これについてはテーピングなどと同じ理論であり、1人1人にあった使用方法や着用型があるため、専門家に相談することは不可欠と言えます。
産褥体操のすすめ
ストレッチとは少し異なりますが
●出産後1日目からできる
●もともと運動の習慣のない人でも、簡単にできる
●腰痛だけではなく、子宮収縮の促進や全身の血流改善にも役に立つ
以上のような多様な効果があり、産婦人科でも勧めるケースが増えています。
これから出産を控えているかた・出産後痛みだしたかたは是非実践されてみてはいかがでしょうか。
腰痛に効くおすすめの栄養素
腰痛改善に期待できるサプリメントまたは栄養素として、カルシウムが挙げられます。
前述したように、女性は男性よりも骨密度の低下が早く、骨盤周りの骨がもろくなりがちです。
こうした骨の再組成にも期待できるほか、月経前のいらいらやホルモンバランスの変化にも効果が期待できるため、積極的にとるべき栄養素と言えるでしょう。
できれば、サプリメントとして摂取するよりは、月経前・産後のみ食事のカルシウム量を増やしてみることをおすすめいたします。
まとめ
女性の腰痛の原因の多くが、骨盤の骨密度低下・開いた状態になっている・骨盤周りの筋力の低下などにあります。
今回はこうした症状を詳しく解説させていただきましたが、他にも女性の身体の構造上「感染症」や「内臓疾患」などといった原因が隠れていることもあるため、あまりにも腰痛がひどいなどといった場合は、早めの医師への相談をおすすめいたします。