AMDが出した久々のハイエンドモデル「RX VEGA」が使えるグラボ?

グラフィックボード(グラボ)

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AMDから久々のハイエンドモデルとして「RX VEGA」が発売されました。

VEGAは事前のリーク情報などでものすごい消費電力を持つことが分かるなど、悪い意味で話題になってしまった感のあるグラボでしたが、実際のところは詳しい仕様等については意外と知られていません。

今回は、そんな「RX VEGA」を実際に使うとした場合にはどの程度のグラボになるのか、また実用性はあるのかなどについてまとめました。



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RX VEGAのバリエーションは?

RX VEGAは大きく分けてVEGA56と上位機種に当たるVEGA64の2機種が存在します。

また、リファレンス仕様のVEGA64には通常の空冷仕様のものに加えて簡易液冷仕様(以下、VEGA64LCEと呼称します)の製品が存在するため、VEGA56と合わせて3バージョンがあります。

VEGA56と64の基本的なスペックの差はクロックやメモリクロックの差などがありますが、ゲームなどの実用レベルの点で見ると、おおよそ1割から最大で2割程度の差が生まれます。

また、同じくAMDから出ているRX480と比べるとVEGA56の性能は1.5倍程度、RX480のクロックアップ版に当たるRX580と比べると1.2~1.3倍程度になる事が多いです。

ちなみに、世界的に見てVEGAは機種を問わず流通量が非常に少ないため、現時点ではオリジナルのクーラーを搭載したモデルに関しての国内販売される様子は殆どありません。

そのため、国内でVEGAを購入する場合にはリファレンスモデルを購入する形になるのが殆どという状態になっています。



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VEGAの各モデルの基礎スペックは?

VEGAシリーズ3機種の基本的なスペックは次のような形になっています。

  • RX VEGA64:ベースクロック1247MHz、ブーストクロック1546MHz、消費電力295W
  • RX VEGA64LCE:ベースクロック1406MHz、ブーストクロック1677MHz、消費電力345W
  • RX VEGA56:ベースクロック1156MHz、ブーストクロック1471MHz、消費電力210W

また、メモリが特徴的で、全ての機種で現行世代のセオリーであるGDDR5ではなく、広帯域メモリ「HBM」の技術を踏襲して作られた「HBM2」を8GB搭載しています。

全体的に見ると、いつものRadeonのハイエンドモデルという感じで、そこそこのクロックと物凄い消費電力、広帯域メモリといった感じのグラボです。

スペックを見る限りではVEGA56がGTX1070対抗で、VEGA64がGTX1080(GTX1070Ti)対抗となる、とされることが多いグラボですが、実用的な動作を求めた場合にはVEGA56はGTX1060と1070の中間、VEGA64がGTX1070と1080(1070Ti)の中間といった感じになる事の方が多いです。

VEGAの特徴は豊富な動作モード?

VEGAには機種を問わずパフォーマンス重視のプライマリBIOSと、省電力重視のセカンダリBIOSの2種類のBIOSを搭載しており、電源を落とした状態でハードウェア上に搭載されたスイッチを切り替える事で変更できる機能が搭載されています。

更に、AMDの公式ツールであるWattmanを使用するとそこからさらに以下の3種類の動作モードを選択する事が可能になるため、実質的には全ての機種で6パターンの動作モードから選べる形になっています。

  • Turboモード:パフォーマンス優先、消費電力が増大
  • Balancedモード:中間状態
  • PowerSaveモード:低消費電力優先、パフォーマンスが減少

の3モードから選択可能になっています。

これにより、自分の運用方法に合わせた動作形態を選択することが可能になっているのがVEGAの大きな特徴と言えます。

各モードの差はどのくらい?

そうなると気になるのが各モードの実性能の差ですが、リファレンス仕様のVEGAの場合には各モードの差はそれほど大きくありません。

特にTurboモードではその傾向が強く、Balancedモードで動作させた場合を100%とすると、Turboモードは環境等に左右されるもののおおよそ105~110%になります。

あまり性能が伸びない理由として、Turboモードは発熱が多くなるのに対して排熱量の少ないリファレンスのGPUクーラーでは冷却が追い付いていない事や最適化がまだまだされていない点が挙げられます。

Turboモードでは伸びが悪く、消費電力の増加度合に対して割に合わない部分が多い一方で、PowerSaveモードはBalancedモード比で95~85%程度に収まりつつネックであったワットパフォーマンスが大幅に改善されるなど、使いやすいモードになっています。

消費電力が物凄い?

公式発表ではVEGA64が295W、VEGA56が210W、VEGA64LCEに至っては345Wとかなりの消費電力を持つ事が判明したVEGAですが、これは基本的にパフォーマンスを最優先した動作時の消費電力となっています。

また、先に書いた2種のBIOSと3種の動作モードを選択することで最大消費の半分程度まで消費電力を抑える事が出来るため、実用範囲での消費電力は公式のものよりもかなり少なくなります。

例えば、VEGA64の消費電力は公式発表では295Wですが、省電力重視のセカンダリBIOSにPowerSaveモードを併用すると、150Wまで低下するとされています。

また、この手の低消費動作モードは性能も併せて下がってしまう事が多いですが、VEGAの場合にはパワーを抑えた場合でも性能の低下幅が少なくなっています。

そういった意味では、VEGAに関しては伸びの悪いTurboモードで劣悪な消費電力で動作させるよりも、ワットパフォーマンスに優れるBalancedやPowerSaveモードでロスを抑えつつ使用できる点こそが利点とも言えます。

各モデルの消費電力は?

VEGAの3モデルの6モードは付属しているガイドにそれぞれの消費電力が記載されていて、次のようになっています。

VEGA64の各モードの消費電力は、

  • プライマリBIOS時PowerSave:165、Balanced:220、Turbo:253
  • セカンダリBIOS時PowerSave:150、Balanced:200、Turbo:230

VEGA64LCEの各モードの消費電力は、

  • プライマリBIOS時PowerSave:198、Balanced:264、Turbo:303
  • セカンダリBIOS時PowerSave:165、Balanced:220、Turbo:253

VEGA56の各モードの消費電力は、

  • プライマリBIOS時PowerSave:150、Balanced:165、Turbo:190
  • セカンダリBIOS時PowerSave:135、Balanced:150、Turbo:173

となっています。

(単位はいずれもWです。) 水冷クーラーを動作させる事と高クロック設定である都合上、VEGA64LCEに関してはPowerSaveモードでも若干消費電力が高いですが、それ以外の2機種はいずれの場合でもPowerSaveモードで動作させている時の消費電力の低下度合がかなり大きくなっています。

そのため、消費電力を気にしつつパフォーマンスをある程度維持したい場合、プライマリBIOSのPowerSaveモードかセカンダリBIOSのBalancedモードで動作させるのがおすすめであると言えます。

ゲーム用として見た場合の実用性は?

ゲーム用のグラボとして見た場合には、実用性皆無という事はないものの、やはりワットパフォーマンスがネックになります。

特に現行のGTX1000シリーズは性能に対する消費電力が抑えられているため、比較するとどうしてもVEGAが劣って見えてしまう部分が多いです。

また、最適化されていないタイトルが多い点もVEGAにとっては向かい風になっています。

そのため、ゲームで4K画質やWQHDといった高解像度での動作や高fpsを維持したい用途の場合には、残念ながらVEGAよりもGeforceのハイエンドモデルを選ぶのがおすすめです。

とはいえ、VEGAの性能自体は高いため、それらの環境を使用しない場合、例えばフルHDや60fps制限といった環境下ではVEGAでもかなり快適に動作させることが出来ます。

そういった意味では、ゲーム用として考えた場合にはAMD大好きなマニア向けとまではいかないものの、ある程度割り切って使える人向けのグラボと言えます。

ネックは価格と入手性

グラボに限らず自作PC向けのハードウェアの多くは日本国内販売のみ少数、というパターンが珍しくありませんが、VEGAの場合には世界的に見て流通量が非常に少ないため、入手性が非常に悪い点がネックになっています。

また、流通数が安定しないためか、価格も高止まりになってしまっていて、性能の割に価格は高めになっている事が多いです。

大抵のグラボは、海外の通販サイトで購入すれば安く済みますが、ことVEGAに関しては海外でもそれほど大きな差が無い状態になっています(物によっては国内で買った方が安い事もあります)。

まとめ

RX VEGAは「PCゲーマーならこれで間違いなし」という感じのグラボではないものの、個人的には実用性などを考えても、ハイエンド帯のグラボの1つの選択肢としては十分「アリ」なグラボだと思います。

ただ、現状は価格が高い点とオリジナルモデルの入手が難しい点がネックになってくるため、それらの点が解消されれば更におすすめしやすくなるかなという感じが強いグラボでもあります。