新たな時代の幕開けを告げるRTX2080の真価は「純粋な性能の高さ」
RTX2080は衝撃的な製品として発表されました。
NVIDIAの一般向け製品ラインであるGeForceからリアルタイムなレイトレーシングを可能とするものがリリースされるというのは大きなニュースといえます。
それまでレイトレーシングというと映画を始めとする映像製作の分野で大きなコストをかけて利用されてきた技術だからです。
そして発売されるようになってから、各サイトなどでベンチマークやレイトレーシングの実力が公開されるようになりました。
今回はそんなRTX2080の真価について探っていきましょう。
目次
ラスタライズ法が基本
一般的に3Dゲームではラスタライズ法というものが使われています。
これは描画方法の一種で、3Dゲームを作るなら必ずといって良いほどラスタライズ法が用いられてきました。
むしろ開発者にとってそれ以外の方法は存在せず、半ば常識的な話でもあります。
ラスタライズ法は3Dを基本的には三角形のポリゴンとして表現します。
このポリゴンを組み合わせたものをメッシュと呼び、ポリゴンにはテクスチャという画像データを貼り付けている形です。
いわば色を塗った三角形でペーパークラフトを作っているようなものといえるでしょう。
そしてラスタライズ法にとって最も必要な情報が「頂点」です。
各三角形を構成する頂点には、座標や色、テクスチャや光に関連する法線などの要素が含まれています。
頂点の情報さえ把握しておけば2点間で辺を構成でき3点あれば面も作れるという仕組みです。
そしてグラフィックボードはこの頂点の処理に特化したパーツとして長い間開発されてきました。
グラフィックボードに搭載されているGPUという演算装置にはVertex Shaderというものを搭載してきたのです。
Vertexとは頂点、Shaderとは陰影処理をそれぞれ意味し、まさしく頂点情報を処理するための装置となります。
またPixel Shaderという画素(Pixel)を操作するものも搭載されている形です。
最早グラフィックボードというハードウェアの時点でラスタライズ法の利用が前提とされている設計といえるでしょう。
頂点情報の処理をするためのVertex Shaderを搭載しているわけですからラスタライズ法に適したパーツなのです。
その後は進化を遂げ現在ではUnified Shader(共有シェーダー)というマルチな役割を担うシェーダーが搭載されるようになりました。
そしてUnified ShaderはNVIDIAにおいてCUDAという名前で開発されるようになったのです。
CUDAとは「Compute Unified Device Architecture」という名前で日本語では「統合シェーダーアーキテクチャ」などと呼ばれています。
テクノロジーが進むに連れてグラフィックボードも多様な処理ができるようになったといえるでしょう。
このCUDAは現在、グラフィックボードの性能の指標として知られています。
1個よりも2個あればそれだけ処理できる内容も増えるというシンプルで分かりやすい目安といえるでしょう。
なおRTX2080にはCUDAが2944基搭載されており、1つ前の世代であるGTX1080には2560基搭載されている形です。
RTX2080に新しく搭載された2つのコア
RTX2080にはCUDA以外にRTコアとテンサーコアというものが実装されています。
RTコアはレイトレーシングの計算に用いられ、テンサーコアはレイトレーシングのためのディープラーニングに利用される装置です。
先述したように、ゲーム開発ではラスタライズ法が一般的に用いられているのが現状です。
ではレイトレーシング法はどのような形で用いるのかというと、ラスタライズ法とは根本的に発想が異なります。
そのためラスタライズ法を前提としたグラフィックボードでは演算に無理があるといえるでしょう。
そこでNVIDIAが開発したのがRTコアです。
レイトレーシングに特化した専用のパーツをハードウェアの一部として実装した形となります。
未だレイトレーシングとゲームが市場に受け入れられるのか不透明な状況での決断でした。
実際、既存のグラフィックボードでリアルタイムレイトレーシングをするよりも遥かに素早く処理を行ってくれます。
それこそラスタライズ法を前提として開発されたCUDAがあるように、レイトレーシング法を前提としてRTコアが存在するわけですから当然といえば当然です。
一方、テンサーコアはディープラーニングをするパーツとして生み出されました。
一体何をディープラーニングするのかというと、それは擬似的なレイトレーシング処理です。
ノイズ除去やアンチエリアシングといった画像加工というレベルでのレイトレーシングを実現するために生まれました。
こうしたディープラーニングによるレイトレーシングを実現する方法をNVIDIAではDLSS(Deep Learning Super Sampling)と呼んでいます。
レイトレーシングが目を引きやすい状況
ハードウェアレベルで新しく導入された要素なので、リアルタイムレイトレーシングには注目が集まるのは自然な流れでした。
むしろNVIDIA自体がリアルタイムでレイトレーシングができるということをしきりに宣伝していたほどです。
そしてユーザー側もレイトレーシングに対して期待したり不安を抱いたりしているのが現状となります。
といっても実のところ、完全に描画をレイトレーシングに移行したというわけでもありません。
GTX1080に比べRTX2080ではCUDAコアを増やしたことからも分かる通り、ラスタライズ法にもきっちりと対応しています。
ラスタライズ法とレイトレーシング法のいずれかという構図ではなく、ラスタライズ法を前提としてレイトレーシング法にも対応できるようになったという形なのです。
シンプルに性能が高いRTX2080シリーズ
一旦レイトレーシングから目を離してCUDAコアの数をチェックしておきましょう。
GTX1080は2560基、その改良型のGTX1080 Tiは3584基。
RTX2080は2944基、その改良型のRTX2080 Tiは4352基。
これだけをみるとRTX2080はGTX1080 Tiよりも性能が低いと思われるかもしれませんが、メモリの世代がより新しいこともありスペックは高くなっています。
無印とTi同士を比較してみると、どちらもシンプルにCUDAコア数が増加していることが分かります。
レイトレーシングを抜きにしてみてもRTX2080シリーズは単純に性能が高いのです。
レイトレーシング有効化によるフレームレートの低下
リアルタイムレイトレーシングが可能になったからといってもその処理の重さからは目をそらすことができません。
RTコアが完全無欠のパーツかというと現状はそうでもないのです。
処理内容が増えれば増えるほど、RTコアのスペックをオーバーしてしまいます。
具体的には「バトルフィールド5」で負荷の高い設定のリアルタイムレイトレーシングを切るとFPSが約130、つけるとFPSが約70程度になるといった映像もあります。
参考:https://www.youtube.com/watch?
v=n68s9I28AvY
レイトレーシングを使わないという選択肢もある
FPSの低下が気になる場合はレイトレーシングを使わずに利用するという方法もあります。
シンプルに性能の良いハイエンドなグラフィックボードとして考えるのです。
そう考えればレイトレーシングという要素に惑わされずに価値を見極めることができるでしょう。
3連ファンを搭載した「MSI GeForce RTX 2080 GAMING X TRIO」
3連ファンによる冷却性能が期待できる製品です。
ただ重量が1.55Kgとなかなかに重いので支えが必要になるかもしれません。
グラボを支える「MSI Graphics Card Bolster グラフィックカード つっぱり棒」
これは重いグラフィックボードを支えるためのつっぱり棒です。
近年のグラフィックボードは何かと重いものが多いのでマザーボードの変形を防ぐためにも導入しておくことをおすすめします。
まとめ
RTX2080の真価についてみてきました。
確かにリアルタイムレイトレーシングに対応した画期的な製品ではあります。
ですが最新のゲームに適用すると処理の重さからFPSの低下を招いてしまうこともあるのが現状です。
そのためハイエンドなグラフィックボードとして考えてみると判断しやすくなります。
純粋に既存のものより性能が高いので、そのあたりを中心にして検討していくと良いでしょう。