グラフィックボードのハンダ割れや剥離について!
デスクトップパソコンを利用するユーザーの多くは、3Dグラフィックが使用されたネットゲームのプレイや高画質なネット動画の視聴をします。
その際に、画像処理性能を向上させるため、高性能かつ高額なグラフィクボードを使用すると思います。
しかし、よくハンダ割れや剥離による破損が騒がれますがどのような原因が想定されるか考えたいと思います。
熱でははんだは不良にならない
グラフィックボードの故障によく、はんだ不良が騒がれます。
しかし、熱ではんだ不良が生じるなら家電製品のほとんどは高頻度で故障することになります。
確かにグラフィックボードも精密機器ですが、現在ではオーブンレンジや炊飯器などより高額で高温になる製品が家庭内に散在します。
特にオーブンレンジなどグラフィックボードとは比較できないほど高温になります。
最新のオーブンレンジなど300℃近い温度になります。
オーブンレンジは高温でもなかなか壊れません。
つまり、グラフィックボードが高負荷で稼働して高温になったとしても、はんだ不良になることは非常に考えにくいことになります。
熱ではんだ不良にならない理由
では、グラフィックボードのはんだが熱で不良にならない理由は、はんだの溶融温度にあります。
現在は鉛フリーはんだが主流になり、一般的に240℃以上でなければ溶融しないです。
これが、グラフィックボードのはんだ付けにも利用されています。
つまり、高温になった程度ではんだが溶けることは非常に考えに難いことになります。
もし、グラフィックボードのはんだが溶けるのなら、マザーボードだって同様の事象が発生します。
しかし、マザーボードのCPUがたとえ高温になったとしても、はんだ不良といった事象はほとんど聞きません。
つまり、パソコンケース内の温度でははんだ付け箇所に異常が起き難いことになります。
はんだ不良の要因は?
それでは、はんだ不良になる原因とは何か疑問が残ります。
ズバリ、物理現象によるものです。
つまり、はんだ付けした箇所にヒビが入ったり、剥離したりするような力が加わったことになります。
一般的に『グラフィックボードの基盤が変形したからはんだ不良になる』など言われています。
しかし、グラフィックボードが変形するような力がどこで加わったか疑問にならないのが、不思議だと思いませんか?『熱でグラフィックボードが変形したから』とか聞きますが、電子部品を実装する基盤の耐熱温度は相当の温度です。
240℃のはんだ付けに耐えられる訳ですから、パソコンケース内の温度では考えにくいです。
真の原因は、取付時に無理な力が加わったことが原因です。
スロットにグラフィックボードを差し込む際やケースにネジ止めするなど物理的に力を加えてしまいます。
つまり、人の手で引き起こされる問題です。
グラフィックボードの変形もこれが原因なんです。
取り付ける際は、優しく取り扱うことをおすすめします。
特に、たまごの黄身を箸でつまもうとするくらいの注意を払ってください。
最終的に酸化被膜が形成する!
では、何故直ぐにグラフィックボードが破損しないかというと導通不良が発生しないからです。
はんだ箇所にクラックが入った程度では導通します。
実際のところ、時間経過により酸化被膜が形成されることが原因です。
はんだのクラックや剥離個所に酸化被膜が形成されると導通が無くなり、電気信号が送られなくなります。
これが故障原因です。
実は、『パソコンケース内の温度でははんだ付け箇所に異常が起き難い』と説明したのは、酸化被膜の形成時間に影響するからです。
ある程度の温度と湿気があることでは、酸化被膜の形成が加速されます。
特に、湿度の高い部屋でグラフィックボードを高負荷でしようしていたらあっという間に壊れます。
まとめ
筆者自身、本業において製品の不具合調査に関わることがあります。
そこで、グラフィックボード同様にはんだ付けされた精密機器の故障を経験しています。
製品は暖房機器に使用される基盤でしたが、結果的には取付時に無理な力が加わったことで、はんだが割れて酸化被膜が形成したものでした。
製品製造や精密部品の取り扱いなどにはどうしても人間の手が入ります。
作業者毎に感覚は異なるため、製品の出来栄えやその後の耐久性に差が生じます。
皆さん、最終的には扱う人が一番重要であることを忘れないでください。