グラフィックボードチップRTX2080はなぜ高額なのか?価格を決めた3つの新機能

GeForce GTX1080

MSI GeForce RTX 2080 GAMING X TRIO グラフィックスボード VD6723

NVIDIAから発売された新世代のグラフィックボードチップRTX2080シリーズは性能の高さもさることながら、価格が高いことでも大きな話題を集めました。

RTX2080シリーズ搭載グラフィックボードの販売状況を見ると、下位モデルでも13万円前後の値札がついています。

最上位モデルのRTX2080Tiになると18万円以上に達するため、こうも価格が高いのかと疑問に感じている人も少なくありません。

RTX2080シリーズの販売価格がこれだけ高額となった理由を、3つの新機能に分けて解説します。






次世代のTuringアーキテクチャを採用した最新GPU

NVIDIAのコンシューマ向けグラフィックボードチップGeForceシリーズは最上位モデルのGTX1080発売から2年が経ち、次に発売される新たな上位モデルの型番と新機能に関して大きな話題を集めていました。

その型番も当初はGT1180と推測されていましたが、発売直前になって発表された最終的な型番には「RTX」が採用され、まったく新しいシリーズへと生まれ変わったのです。

Pascal世代のアーキテクチャに基づいて設計されていたGTX1080シリーズから、RTX2080シリーズは次世代のTuringアーキテクチャへと刷新されました。

Turingアーキテクチャで最大の特徴と言えば、レイトレーシングをリアルタイムに実現するRTコアが搭載されているという点です。

同時にグラフィック向けGPUとしては初めてディープランニング用のTensorコアも搭載しており、AIなどの深層学習においても高いパフォーマンスを発揮します。

GDDR6規格の新たなグラフィックメモリをサポートしている点も、RTX2080シリーズで見逃せない点です。

グラフィックボードチップRTX2080のトランジスタ数は過去最大の186億

RTX2080シリーズがGTX1080シリーズと比べて大幅な性能向上を実現させた背景には、製造プロセスが従来の16nmから12nmへとよりいっそう微細化した点が挙げられます。

GeForceシリーズのアーキテクチャはKepler世代からMaxwell世代までの4年間、製造プロセスが28nmのまま足踏みを続けていました。

2016年にはGTX1080で採用されたPascalアーキテクチャで製造プロセスが一気に16nmへと微細化され、半導体を製造する際のプロセスルールが小さくなったことでトランジスタ等の集積化が加速したのです。

RTX2080シリーズではこの製造プロセスが12nmにまで微細化されたことでより多くの半導体素子が搭載可能になり、上位モデルRTX2080Tiのトランジスタ数は186億個にも達します。

並列計算を行うCUDAコアの数もGTX1080の1.2倍に増加しており、それらの技術革新がRTX2080シリーズのさまざまな新機能を支えているのです。






リアルタイムレイトレーシングに対応したRTコア

NVIDIAが満を持して市場に投入したグラフィックボードチップRTX2080シリーズ最大の特徴は、レイトレーシングをリアルタイムで実現する革新的な新機能です。

レイトレーシングは光線追跡法とも呼ばれており、3DCG画像を表現するためのレンダリング工程の1つとして利用されてきました。

3DCGの画像をリアルに描画するには画面上で光線を生成するだけでなく、3D空間の奥へと光線を伸ばして反射や拡散・屈折を表現しなければなりません。

こうした処理には極めて複雑な計算が必要となるため、従来の技術ではリアルタイムでレイトレーシングを行うのが困難でした。

RTX2080シリーズにはこのレイトレーシングをリアルタイルでハードウェア処理するために開発されたRTコアが実装されています。

RTコアによって大幅に加速化されるレイトレーシングの演算速度は、Pascal世代のGTX1080シリーズと比べて最大25倍にも達するのです。

70万円のワークステーションにも匹敵する機能

従来の技術で同様のレイトレーシングを行うには、ソフトウェアを使って1000以上の命令を実行しながら処理するしかありませんでした。

当然のことながらこの方法では計算量が膨大になるため、70万円以上のワークステーションでなければ実現困難だったのです。

グラフィックボードチップRTX2080シリーズを導入することによってレイトレーシングがグラフィックボード1枚でハードウェア処理されるようになり、コストの大幅な削減が実現可能となりました。

リアルな映像が楽しめるレイトレーシング対応ゲームも増えており、RTX2080シリーズの発売を受けて今後さらに対応ゲームの発売が相次ぐと予想されます。

従来は70万円のプロ用マシンでも使わなければ実現困難だった映像表現を味わえるなら、20万円近い価格でも安いものです。

上位モデルのRTX2080Tiはもちろん、13万円前後で販売開始された下位モデルでもレイトレーシング対応ゲームをプレイするのに不足はありません。

ディープランニング用にTensorコアも実装

最近では各分野で人工知能の活用が話題を集めていますがが、そうしたAIの進化を支えているのはディープランニングとも呼ばれる深層学習の技術です。

深層学習とは機械学習の1手法で、コンピュータが人間の脳のように学習しながら成長していくことで従来の機械学習の限界を打ち破ることができます。

深層学習を実現させるには膨大な量のデータを高速に処理していくための仕組みが欠かせません。

グラフィックボードチップRTX2080シリーズには、GPUコンピューティング向けGPUのVoltaにも採用されたTensorコアが実装されています。

Tensorコアは深層学習をサポートするユニットで、RTX2080シリーズのTensorコアはVoltaで採用されたコアより推論の精度などの点で強化されているのが特徴です。

GTX1080Tiと比べて深層学習の性能は4倍に

一見するとこのような深層学習の演算処理はCPUが担っているように思われがちですが、実際にはCPUよりグラフィックボードに搭載されるGPUの方が深層学習に向いています。

深層学習に伴う事前学習の膨大な演算処理は画像処理に近い面があって、連続的な演算処理を得意とするCPUよりも並列計算を得意とするGPUの方が適しているのです。

一方で深層学習用のTensorコアは画像のジャギーを目立たなくするアンチエイリアス処理を得意としているため、グラフィック処理も高品質となります。

RTX2080TiはTensorコアの効果で深層学習の性能がGTX1080Tiの4倍にも達し、ゲームの画面もよりいっそう美しく表現できるのです。

そのためRTX2080シリーズは最新の3Dゲームを楽しみたいというハイエンドのゲーマーにおすすめのグラフィックボードチップですが、AIの利用などゲーム以外の目的でも威力を発揮します。

GDDR6に対応したグラフィックメモリ

グラフィックボードチップRTX2080シリーズのもう1つの特長は、次世代グラフィックメモリのGDDR6 DRAMが採用されている点にあります。

グラフィックボードチップはさまざまなテクノロジーに支えられながら進化してきましたが、グラフィックメモリの性能向上もそのうちの1つとして重要です。

NVIDIAのワークステーション向けグラフィックボードチップには、積算メモリ技術を使ったHBM2というメモリ規格が採用されています。

広帯域と大容量を特徴とするHBM2はグラフィックボードの性能を大幅にアップさせる反面、コストも割高となるためコンシューマ向けグラフィックボードには向きません。

一般ユーザーにも手の届く価格で発売されるGeForceシリーズでは、これまでグラフィックメモリにGDDR5というメモリ規格が使われてきました。

RTX2080シリーズで新たに採用されたGDDR6はGDDR5を拡張させたGDDR5xよりもさらなる高速化が実現されると同時に、消費電力が大きいというGDDR5xの弱点を克服している点でも注目されます。

最大14Gbpsにも達するメモリ転送速度は4Kゲームにも有利

従来のGTX1080で使われていたグラフィックメモリ規格のGDDR5xは、メモリの転送速度が最高でも11Gbpsでした。

RTX2080シリーズに採用されたGDDR6はメモリ転送速度が最大14Gbpsにも達し、大幅な高速化が実現されています。

グラフィックメモリの転送速度が上がると、リアルタイムで膨大なデータを処理していかなければならない4K動画の描画にも有利です。

GDDR6はメモリ転送速度以外にもさまざまな点で効率化されているため、従来のフルハイビジョンと比べて4倍の解像度を持つ4Kゲームのプレイ時にも威力を発揮します。

GDDR6のメモリ規格を採用したRTX2080シリーズは、4Kモニターの美しい画面で4K対応ゲームを楽しみたいというユーザーにもおすすめです。

まとめ

以上のようにグラフィックボードチップRTX2080シリーズはリアルタイムレイトレーシングと深層学習用コアに加え、メモリ転送速度の高速化という3つの新機能が特徴として挙げられます。

そうした機能が生かされる最新の3Dゲームや4Kゲームを楽しみたいハイエンドユーザーを満足させるには、コンシューマ向けグラフィックボードであっても相応の開発コストが必要です。

同様の性能を持つプロ向けGPUやワークステーションはあまりにも高価で一般ユーザーにとっては現実的な購入選択肢とは言えません。

そうした点を考慮すると、高いと言われるRTX2080シリーズの価格も妥当だと結論付けらます。







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