自作PCのグラボ関連の話で見かけるSLIやCrossFireってなに?

グラフィックボード(グラボ)

MSI GeForce GTX 1080 ARMOR 8G OC グラフィックスボード VD6193

グラボ関連の話題になると、よく登場するワードとして「SLI」や「CrossFire」があります。

特に出てくるのはベンチマーク関連のページや自作関連のページで見かける事が多いかと思います。

今回はSLIとCrossFireを導入することによるメリットとデメリット、注意点についてまとめました。

今後、導入しようか迷っている人も含めて参考にしていただけたら幸いです。



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そもそもSLIやCrossFireって何?

SLIとCrossFire(略称はCFX)はマルチGPU技術の名称で、SLIはnVidiaの対応したグラボを、CrossFireはAMDの対応したグラボを複数枚使用する事で使う事が出来ます。

いずれも単一のマザーボード上に複数のグラボを搭載し並列処理することにより、処理能力を飛躍的に上昇させることが出来る技術で、シングルGPUでの限界を超えた処理能力を発揮できるようになるのが特徴です。

一方で複数枚のグラボを動作させるために必要な大容量の電源や、複数PCIeスロットを持つマザーボードを準備する必要があるなど、グラボ以外の点にもコストがかかる等の弱点があります。

コストを度外視して性能を追求するための技術として使われる事が多いため、ハイエンド帯のグラボを複数搭載することが多いですが、ミドルエンド帯の比較的価格の安いグラボを複数枚使って、ハイエンド帯のグラボと同じレベルまで性能を引き上げる用途でも使われる事があります。

搭載枚数分だけ性能が上がる訳ではない

SLIにせよ、CrossFireにせよ、大前提として「枚数を増やしたからといってその分がそのまま性能に上乗せされるわけではない」という点があります。

また、これは3枚以上使う構成の場合でも同様で、4Way-SLIなどを使用している場合でも4倍になる事はありません。

その一方で消費電力に関しては搭載しているグラボの数だけ消費する形になるため、消費電力あたりの性能は若干落ちてしまいます。

SLIにせよCrossFireにせよ、あくまでもコストを度外視して性能を追求する側面が強いと思った方が良いです。

ちなみに、2枚使用している時のおおよその上昇率に関してはSLIでは1.87倍程度、3枚使用する3Way-SLIを使用する時は2.8倍程度であると言われていて、枚数が増えるほど1枚当たりの効果は減る傾向があります。



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アプリケーションが対応していないと効果は無い

SLIにせよCrossFireにせよ、ゲームなどで性能を効果的に生かすためには対象となるアプリケーションがそれらの機能に対応している必要があります。

対応していないアプリケーションの場合には、グラボ1枚のときと大差ない性能になってしまい、最悪の場合にはFPSの低下や画面のチラつきなどといった通常の状態よりもさらにひどい状態になる事も有るため、導入前に自分が遊んでいるゲームなどの対応状態を良く確認した方が良いです。

また、DirectX12の登場などもあってかSLIやCrossFireに対応したタイトルそのものが減少傾向にあるため、今後を見据えるのであればグラボを複数枚使用する事のメリットは非常に薄いのでおすすめではありません。

SLI、CrossFireに必要な物

SLIやCrossFireを使用する場合には、大前提として同型のグラボが2枚以上必要になる他、対応したスロットを持つマザーボードや、グラボ2枚分の電力消費をまかなえる大容量の電源ユニットなどが必要になります。

また、SLIの場合にはグラボ同士を接続するためのブリッジケーブルも必要になります。

SLIでは同型のグラボを2枚以上用意する必要がありますが、CrossFireでは同世代の同アーキテクチャを使用したグラボであれば、コアクロックやVRAMの容量などは低い方に合わせられるものの型番自体は異なっていても動作します。

例えば、Polarisアーキテクチャを採用しているRX480であれば、もう片方はRX470などでもCrossFireを行う事が可能になりますが、RX470のCrossFireという形になります。

SLIの設定方法

SLIの場合はただグラボを2枚挿すのではなく、対応しているマザーボードなどに付属しているブリッジケーブルで繋ぐ必要があります。

なお、GTX10xxシリーズでは新規にHBブリッジという新しい規格を使う事でdual-link SLIモードが使用可能になるとされています。

このモードで動作させるだけなら、既存のSLI用ブリッジケーブルを2本使う事でも可能ですが、安定させたい場合には新規にSLI HBブリッジを購入するのがおすすめです。

SLIを設定する場合、PCが起動したのを確認した後は、NVIDIAコントロールパネルを起動し、左のプルダウンメニューから「3D設定」項目の中にはある「SLI、Surround、PhysXの設定」をクリックし、「3Dパフォーマンスを最大にする」を選択し適用する事で、SLIが有効になります。

SLIにおすすめのグラボ「MSI GTX1080 ARMOR 8G OC」

MSI GeForce GTX 1080 ARMOR 8G OC グラフィックスボード VD6193

ハイエンド以下のグラボの場合には枚数を増やすよりも、グラボのランクを上げる方が効果的なため、SLIを使う場合には必然的にハイエンドモデルでの使用が想定されます。

そのため、おすすめのグラボも価格も高い物が多くなりますが、その中でもおすすめなのがMSIの「GTX1080 ARMOR 8G OC」です。

単価は6万円前後とGTX1080搭載のグラボとしては比較的安いものの、それでも決して手に取りやすい価格とは言えないため、2枚一気に買わずに最初は1枚だけ購入して、後日更に性能が欲しいと思ったら追加する、というのがおすすめです。

なお、単体での消費電力は180W前後とされているので、SLIでの使用を想定する場合は750~900W程度の電源ユニットを使う必要があります(シングルでは500~700W程度)。

CrossFireの設定方法

CrossFireを現行のドライバーで使用する場合、AMD Radeon Settingsから設定する事が出来ます。

Radeon Settingsを起動した後は、上部タブにある「ゲーム」をクリックし、その中から左上にある「グローバル設定」をクリックすることで、使用中のグラボが横一列に表示され設定を行う事が出来ます。

この画面で、CrossFireの対象として使用したいグラボを選択し、画面下の方に表示される「AMD CrossFire」をオンにすることでCrossFireの対象になります。

グローバル設定から設定した場合、全ての状態でCrossFireが適用されますが、特定のゲームだけで適用したい場合には、ゲームタブからCrossFireで動作させたいゲームを選択した上で、上記の操作を行うことでゲームごとの設定が出来ます。

CrossFireを使用する際の注意点として、フルスクリーン状態でアプリケーションを動作させることが条件になります。

CrossFireに対応しているタイトルであっても、ウィンドウモードや仮想ウィンドウモードでは効果が得られないため注意が必要です。

結局シングルとSLI、CrossFireはどれが優秀なの?

もし、ミドルエンド帯のグラボ2枚によるSLIやCrossFireとハイエンド帯のグラボ1枚で迷っているのであれば、基本的にはハイエンド帯のグラボを1枚だけで運用するのがおすすめです。

理由としては、先にも書いた通り対応しているアプリケーションが非常に少ない事がある他、グラボが複数ある事で不具合が増える可能性(片方だけグラボが壊れる等)があるなど不安定になる要因が多い点があります。

また、グラボを複数同時に使用する場合、グラボ同士の隙間が少なく熱が籠りやすくなるため、空冷では温度が下がりにくくなるなどのネックもあります。

そのため、SLIやCrossFireにするのは「すでに手元にあるグラボと同じものがもう1つ偶然安く手に入った」といった場合に少し試す程度にしてみるのがおすすめです。

まとめ

正直な意見としては、以前と比べるとグラボそのものの性能がかなり上がっているためか、マルチGPUの技術の優位性はなくなりつつあるかなと思います。

ですが、SLIやCrossFireを用いたPCを組みあげた時は「やってやったぞ!」という満足感や達成感があるため、更に上を求めてみたいという場合には一度挑戦してみるのもおすすめです。