Vega時代到来。君はHBMの未来に夢を見る。Vega世代グラボ徹底分析。
2017年8月、ついにAMDの新GPU「Radeon RX Vega64/56」が発売されました。
「Vega」(ヴェガ)は、こと座α星を指します。
日本では、七夕のおりひめ星として知られていますよね。
現時点においては、需要に供給が追いついておらず、品薄状態が続いています。
自作ユーザーにとっては、買いたくても買えない、じれったい状態ですが、発売されたばかりなので、今の状況は想定内といえば想定内です。
しかし、いずれは各ベンダーから続々とVegaグラボが発売され価格もこなれて来るでしょう。
その時のために、この記事を読んで予備知識を備えておけば、必ず役に立つはずです。
では、早速AMDの新GPUである「Vega」を紹介していきましょう。
現在のグラボの状況
現在、扱うデータ量の増大にグラフィックスメモリが追い付いていない状況です。
今後VR(virtual reality)が主流になれば、さらに大容量のメモリが必要となるでしょう。
とはいえ、PCケース内部の容量もあるので際限なくメモリを増やして、グラボを巨大化させるわけにもいきません。
そのような問題を解決するため開発されたのが、HBM2メモリです。
現在、グラフィックスメモリには、HBMの他にもGDDR5やGDDR5Xの規格があります。
しかし、GDDR5やGDDR5Xの規格は、いずれHBMメモリに置き換えられていく予定です。
Vega世代グラボの特徴とは?
Vega世代グラボの特徴は、2点あります。
それは、HBM2メモリの採用とHBCCの実装です。
第一の特徴は、16GBもしくは8GBのHBM2メモリを搭載している点です。
HBM1は転送レートが1Gbpsでした。
しかし、HBM2では転送レートが2Gbpsに上がっています。
また、HBM2ならGDDR5と比較して、50%以下の面積で同じメモリ容量を実現できます。
さらに、HBM1と比較して1スタックあたり8倍の容量を実現しています。
もう一つの大きな特徴は、HBCC(High-Bandwidth Cache Controller)キャッシュ管理システムです。
高速性が必要なデータは、HBM2に割り当て、それ以外のデータはHBM2以外に振り分けるというシステムです。
つまり、SSDやHDDのストレージ、CPU側のメインメモリ、あるいはグラボ上に別途搭載するDDRメモリに、高速性が必要とされないデータを割り当てます。
正直、そんな事ができるのか?
と思った方もいらっしゃると思います。
しかし、AMDは、この複雑なキャッシュマネジメントシステムの実装に成功しました。
むしろ、HBM2メモリ搭載よりも革新的なシステムと言っていいでしょう。
Vega世代グラボの種類と価格
現在流通しているVega世代グラボには、RX Vega64とRX Vega56の2種類があります。
どちらも、重量級のゲームはもちろん、最新のVRタイトルまでスムーズに楽しむ事ができます。
では、Vega64とVega56について説明しておきましょう。
Radeon RX Vega56
Vega56の演算ユニットは、56基です。
モデルナンバーの56は、この演算ユニット数に由来するものと考えていいでしょう。
コア周波数は、ベースクロックが1156MHz、ブーストクロックが1471MHzとなっています。
HBM2メモリを8GB搭載しています。
メモリ周波数は1.60Gbps、メモリインターフェースは、2048-bitです。
演算性能は、10.5TFLOPSに達します。
消費電力は210Wで、北米での価格は$399です。
この価格は日本円に直すと、48、000円前後になります。
しかし実際は、この価格よりも1万円程度、高い値段で販売されています。
Radeon RX Vega64
Vega64の演算ユニットは、64基です。
モデルナンバーの64は、この演算ユニット数と一致します。
コア周波数は、ベースクロックが1247MHz、ブーストクロックが1546MHzとなっています。
HBM2メモリを8GB搭載しています。
メモリ周波数は1.89Gbps、メモリインターフェースは、2048-bitです。
演算性能は、12.7TFLOPSを実現しています。
消費電力は295Wで、北米での価格は$499です。
この価格は日本円に直すと、55、000円前後になります。
しかし実際は、この価格よりも2万円程度高い値段で販売されています。
NVIDIAGeForceGTX1080との比較
Vega64/56の競合製品となるのは、NVIDIA社の「GeForceGTX1080」でしょう。
各種ベンチマークテストでは、Vega64/56グラボ共にGTX1080と遜色ないスコアを記録しています。
現在、GTX1080の市場価格が、65、000円前後です。
本来、Vega56の価格が48、000円前後、Vega64の価格が55、000円前後なので、コスパ的には、Vegaグラボの方がおすすめのはずです。
しかし、品薄状態であるため現時点では、VegaのほうがGTX1080よりも割高になっています。
もう一つ注意する点は、消費電力です。
GTX1080を基準にすると、50W~100W程度Vegaのほうが電力を多く消費します。
ランニングコストを気にする人は、この点も購入の判断材料にしたほうがいいでしょう。
おすすめVega世代グラボ
生産が需要に追いついておらず、製品によっては異常な高値となっていますが、仕様的には、ほぼ横並びです。
ただし、ここで紹介するグラボの中で、FRONTIER EDITIONのみ、16GBのHBM2メモリを搭載しています。
それ以外のモデルは、8GBのHBM2メモリを搭載しています。
では、早速Vega世代のグラボを紹介していきましょう。
VD6419RVEGAFE-16GH2AIR
Vega FRONTIER EDITION空冷版です。
FRONTIER EDITIONとは、複雑な画像処理や高度な映像処理に特化したモデルです。
そのため、HBM2を16GB搭載しています。
接続インターフェイスは、PCI-Express3.0×16です。
映像出力端子は、DisplayPort1.4×3,HDMIx1を装備しています。
最大消費電力は、300Wで、電源容量は850W以上が推奨です。
8Kディスプレイ3枚への出力をサポートします。
実売価格は、200、000万円前後となっています。
XFX Vega64 RX-VEGMTBFX6
XFX社のVega64グラボです。
XFXは2002年、カルフォルニアで設立されたビデオカードのメーカーです。
近年は、AMDのチップを搭載した製品を積極的に販売しています。
仕様的には、前述したFRONTIER EDITION空冷版と同じです。
実売価格は、136、000万円前後となっています。
MSI Radeon RXVega64 8G
人気のグラボメーカー、MSIのVega64グラボです。
ディスプレイ出力端子には、DisplayPort×3とHDMI×1を搭載し、最大4画面のAMDEyefinityマルチ画面出力に対応します。
グラボの電源部分にはMSIの高性能コンポーネント規格MilitaryClass4に準拠した、寿命約10年の高性能アルミ電解コンデンサを採用し、省電力と高い安定性を実現しています。
また、MSI独自のユーリティティ「Afterburner」によって、オーバークロックをかけることも可能です。
基本スペックは他のVega64グラボと同じですが、MSI独自の仕様はやはり魅力的ですよね。
実売価格は75、000円前後となっています。
GV-RXVEGA56-8GD-B
GIGABYTE社製のVega56グラボです。
基本性能は、前述したvega56のスペックと同じです。
この製品に関しては、特にGIGABYTE社独自の仕様は見られません。
ただし、今後発売されるであろう新しいモデルにおいては、オーバークロック機能のような仕様が追加されるでしょう。
実売価格は60、000円前後となっています。
まとめ
今回紹介したグラボを以下にまとめておきましょう。
- RADEON VEGA VD6419RVEGAFE-16GH2AIR
- XFX Vega64 RX-VEGMTBFX6
- MSI Radeon RXVega64 8G
- GIGABYTE GV-RXVEGA56-8GD-B
同じようなスペックでも、需要と供給のバランスが崩れているため数万円の開きがあります。
また、それなりの価格であっても完売し、在庫のない製品もあります。
まだ、発売されたばかりなので、現時点では様子見というスタンスが賢明でしょう。
しかし、いずれはHBM2を搭載したグラボが主流になることは確実です。
この記事を参考にして購入の際、賢い選択をしてもらえれば幸いです。