Computexでも発表されなかったGTX1180の登場は当分先の模様
発表が噂される最新GPUのGTX1180ですがまだヴェールに包まれています。
NVIDIAの次世代グラフィックカードファミリは、7月中にGeForce 11シリーズとしてデビューすると言われています。
仮想通貨マイニング需要により空前のGPUブームとなっている現在ですが、NVIDIAの次世代GPUであるに迫ります。
最新GeForce GeForce 11シリーズ
GTX1180の性能
気になるGTX1180の性能ですが、リークされた情報ですと、GTX1080Tiの1.2倍ほどの性能が得られるのでは?
と期待されています。
高まるARやVRには高性能なGPUがおすすめなのですが、いろいろな事情も重なって発表が遅れているようです。
価格は$699が予想されており、日本では通常割高になりますので、9万円以上の価格になると考えられます。
それだけで十分PC1台分の価格ですね。
GTX1180は「Turing」というアーキテクチャで製造されると言われています。
予想されている性能ですが、以下のようになります。
- TSMCの12nm FinFETプロセスで製造
- コア数:28 SM
- CUDAコア:3584
- ROP:64
- TMU:224
- メモリ:GDDR6、16GB相当
- コアクロック:1405MHz
- ブーストクロック:1582MHz
- ピクセルレート:101.2Gpixel / s
- テクスチャレート:354.4GTexel / s
- ピーク浮動小数点性能:約13テラフロップス
- TDP:200 W
- 電源:1×6ピン+1×8ピン
ブーストクロックは最低保証レートのようで、実際のクロックレートは1800MHzに近くなりそうです。
「Turing」は本質的にプロセスの縮小と「Volta」アーキテクチャの最適化であり、次世代のグラフィックスカードに大幅な性能アップと高電力効率をもたらすと言われます。
まさにモンスター級のGPUなのです。
Computex2018で発表されるのではないかと言われていた
当初、GTX1100シリーズは6月のComputex2018で発表されるのではないかと予想されていましたが、残念ながらこれはなさそうです。
NVIDIAのCEOはプレスカンファレンスで「いつ次のGeForceは市場に出るのですか?
」という質問に対して「ずっと先です」と回答しました。
これは開発進捗の問題なのか、それとも市場の需要がまだ見合っていないという判断なのでしょうか。
SK Hynixが6月下旬からGDDR6の量産に入る
一方で、メモリ製造メーカーのSK Hynixが6月下旬からGDDR6の量産に入るとの情報があります。
量産に入るということは、「GDDR6」は最新のグラフィックメモリを使うものであり、最新の「Geforce」か最新の「RADEON」しかありえず、故に新しい「Geforce」は7月ごろに出るだろう、というわけだったのです。
しかし、今回のNVIDIAのコメントにより、新しいGeForceはもう少し先になることになりそうです。
仮想通貨のマイニングに使われるGPU
仮想通貨バブルでGPU特需が起こった
2017年は1年間を通じて仮想通貨の相場が大幅に上昇を続け「仮想通貨バブル」ともいわれる状況となりました。
この状況で起こったのがGPU特需です。
仮想通貨には「ブロックチェーン」という技術が使われており、これは全ての取引台帳データを公開し、取引データが正しいのかなどを証明していくものです。
そのためには膨大な計算能力が必要であり、これをインターネット経由で手伝うことを「マイニング」といいます。
マイニングを最初に正しく行うことで、マイナー(採掘者)には、報酬として仮想通貨が支払われるのです。
そして、これに使われるのがGPUなのです。
仮想通貨バブルはGPU市場に空前の特需をもたらし、本来のゲーム用途ではない利用方法に使われるようになりました。
その結果一般ゲーマーが「グラフィックボードを買いたくても買えない」状況にまでなったのです。
研究開発に影響がでる有様
仮想通貨バブルがもたらしたGPU特需は、研究開発分野にも影響をもたらしました。
高度なコンピュータハードウェアを必要とする科学研究プロジェクトにコンピューターリソースを供給できない状況になったのです。
銀河系を観測する電波天文学などの研究者たちは、この主要部品が品薄になっていることで、研究の拡大に苦労しているという報道がなされました。
たとえば、カリフォルニア大学バークレー校の地球外知的生命体探査研究センターは、2つの観測所で研究を拡大したいと考えていましが、データを処理するための最新のGPUを入手できていない事態となったのです。
このような研究には、大量に計算処理をするために高度なGPUを必要とします。
一部の望遠鏡では受信アレイのデータ分析におよそ100個のGPUが使われているのです。
このように、さまざまな研究開発分野においてGPUの品不足と価格高騰により大きな影響を受けたのです。
凄まじい電気代
マイニングにより仮想通貨を得ることができるため、マイナーたちはGPUを買い漁り、結果GPUの価格は高騰しました。
処理速度が速ければ速いほど有利なため、当然ながらGPUメーカーの開発も、従来のグラフィック処理性能向上とは違う方向性が発生しました。
演算装置はもともと消費電力と冷却機構のバランスを取りながら発展してきました。
例えばCPUは液体窒素などで冷却すればいくらでも高速化することができます。
処理速度を上げるということは、より速いクロックでCPUを動作させる事となり、当然排熱は比例して増えます。
あまりに大きな排熱を起こすと家庭用では使えないために、CPUメーカーは回路そのものを小型化することで発生する熱自体を抑える方向で開発をします。
GPUも基本的には同じであり、より速く描画するために処理性能を上げ続けて行くわけですが、仮想通貨バブルにより消費電力や排熱のバランスを崩してでもより速いGPUを求めるようになりました。
この結果、報酬として仮想通貨が得られるマイニングには驚くほどの電気代がかかる事態となりました。
ある大学生が自宅のPCでマイニングを行ったところ、普段の電気代は5000円位であったのが、エアコンは24時間付けっ放し、マシン台数の増加で12万円を超える事態になったそうです。
それでも仮想通貨の相場が上がり続けている状況では何とか収支が取れていました。
しかし、仮想通貨相場が暴落している現在では、全く収支が合わなくなってしまったのです。
仮想通貨バブルが弾けた結果発表が遅れているのか
仮想通貨バブルの終焉でGPUメーカーの戦略転換が迫られる状況
推測でしかありませんが、仮想通貨相場が崩れている現在、早急に新世代GPUを発表する必要がなくなった可能性があります。
実際、仮想通貨バブルによりGPUメーカーは空前の好業績を叩き出しました。
NVIDIAはうまく仮想通貨特需を取り込んだおかげでグラフィックボード部門の利益の3分の1がマイニング需要であったと言われています。
しかし、仮想通貨相場の暴騰により、本来の顧客であった一般ゲーマーにGPUが行き渡らない事態となりました。
確実にわかっていることは、仮想通貨相場が急落すれば仮想通貨マイニング需要も急落するということです。
そのため、いつ来るのか定かではないマイニング需要の引き潮を警戒して、メーカーはグラフィックボードの増産には慎重にならざるを得ません。
さらには、本来の一般ゲーマー向けの需要に製品開発の方向性を戻すことにより、製品デザインの方向性を修正している可能性もあるのです。
まとめ
発表が遅れているGTX1180ですが、市場に登場するのはもう少し先のこととなりそうです。
今、12nmの製品をリリースするということは、2019年に実現すると言われている7nmでの競争のタイミングにも影響するため、各社が新製品のリリースに慎重になっていると思われます。
ひょっとすると今年は新製品を発表せずに、来年7nmのGPUで勝負するという選択肢もあるのかも知れません。