GTX1080を使う際に水冷化してまで温度を下げる必要はある?
GTX1080などのハイエンドクラスのグラボの大半は、高いスペックを発揮するためにミドルエンド以下のグラボと比べて発熱具合が強い傾向があるため、水冷化を検討するか迷っているという人も多いのではないでしょうか。
今回は、GTX1080を使用する際に水冷化は必要になるのか、また水冷化することによって生まれるメリットやデメリット、おすすめの水冷化キットなどについてまとめました。
必須か否かで言えば、否
最初に断言できるのが、GTX1080の水冷化が必須か否かで言えば、これは否です。
というのも、通常は設計段階である程度耐えられる温度などを考慮して設計されているため、少なくと「常識的な範囲の使い方」では水冷化による効率的な冷却が必要になるほどの発熱をするという事は、ほぼありえないからです。
ここで言う常識的な範囲の使い方というのは、各モデルの初期設定での動作(箱だし状態)や、リファレンスと同様の設定での動作といった、各社が販売しているグラボに元から用意されている動作クロックでの動作を指します。
当然、常識的な使い方から外れた使い方をする場合、例えばユーザーレベルでの高オーバークロック等を行う場合には、安定した動作が出来るように補助する意味でも水冷化の必要性が増します。
そもそも水冷化するメリットとは?
水冷化する事の是非はさておき、実際にグラボの水冷化を行う事でどのようなメリットがあるかと言うと、次のような物が考えられます。
- 高負荷になっても温度が上がりづらい
- 音が空冷と比べて幾分か静か
などがあります。
水冷化の注意点として、温度が劇的に下がるのではなく「上がりにくくなる」という方が近い点があります(ピーク時の温度が80℃から60℃になる事はあっても、アイドル時の温度が30度から10度になる事はありません)。
そのため、ユーザーレベルでの高度なOCをする事で2GHzを超えるような高クロックを出すことを目指すなどといった、ピーク時の温度が高くなる場合などでは効果的ですが、リファレンスやメーカーレベルでのOCなどのピーク時の温度が上がりにくい環境の場合には、水冷化のメリットが薄れてしまう事があります。
水冷化による冷却性能以外のメリット
上での少し触れていますが、水冷化する事によって得られるメリットとして、空冷式のGPUクーラーよりも幾分か音が静かである点が挙げられます。
水冷式の場合にも、最終的にはラジエーターに搭載されたファンによって冷却されるため、根本的な熱の移動方法については、実のところ空冷式と変わりありません。
しかし、水は空気と比べてはるかに高い効率で熱を吸収・放出できるため、結果としてより小さな力で大きな熱を逃がすことが出来るようになります。
実際にグラボを冷却する際にもこの点は大きな利点になり、大口径のファンをゆっくり回す事で十分な冷却効果を得ることが出来るため、結果として稼働中の音を大幅に抑える事が出来ます。
そのため、ワンルームなどで夜中一晩中動き続けるPCと同じ部屋で寝る場合などにPCの稼働音が気になる、と言う場合にはある程度の効果が見込めます。
ユーザーレベルでの高度なOCを行わないGTX1080の水冷化という意味では、こちらの方が大きなメリットになると言えます。
逆に水冷化するデメリットとは?
ピーク時の温度減少や稼働音削減といったメリットがある一方で、水冷化することによって生まれるデメリットもあります。
代表的なデメリットは次のような物が考えられます。
●冷媒や水冷ヘッド、チューブの管理が面倒くさい・導入コストが高い・漏水によるトラブルがPCへの致命傷になり得るなど、水冷化することによって得られるメリットよりもデメリットの方が多い傾向があります。
導入時には相応の金額の投資が必要になり、万全を期す場合には事前に動作テストを行って水漏れが無いかチェックする必要があるなど、高い冷却性能と静穏性を兼ね備えている分だけ様々な部分で手間がかかるのも事実です。
ですが、一度正常に稼働することが確認できてさえしまえば、あとは冷媒が蒸発して減ってくる時期(2~5年後が多い)までは、ラジエーターの掃除が必要になるくらいでほぼメンテフリーで使えると言える部分もあるため、人によっては通常の空冷式クーラーよりも手入れが楽という意見もあります。
そのため、冷却面では興味が無くても、グラボのクーラーを掃除するのが面倒という人は、簡易水冷キットを試してみるのもおすすめです。
温度と言う意味ではGTX1080での水冷化はあまり意味が無い?
水冷化の必要性が薄い理由の1つとして、GTX1080の場合は実用レベルの動作環境では水冷化が必要になるレベルまで温度が上がる事が少ない点が挙げられます。
GTX1080の場合には、GPUの最高温度が94℃(この温度に到達すると保護機能によって強制的にクロックなどが落とされる目安)となっていますが、実際にはGTX1080のスペックにかなりの余裕がある事もあり、その温度まで上がるような事そのものが稀というのが実情です。
また、GTX1080に代表されるような最近のハイエンドクラスのグラボの多くは各社が独自に設計した高い冷却効果を持つ空冷式のクーラーを搭載しているため、空冷式でも温度が上がり辛くなっている事も要因の1つです。
実用面で考えても、ゲームなどである程度の負荷をかけた場合もこの点は変わりなく、多くの場面で40~60℃程度、一部の高負荷なタイトルのピーク時で80~85℃程度になる程度なため、やはり標準的な動作をさせる分には冷却性能目的で水冷化するメリットは薄いと言える状態です。
冷却目的以外で水冷化した方がいい場合も?
では、標準的な動作の範囲でGTX1080を使う際には水冷化する必要が全く存在しないのか?
と言うとそういう訳ではありません。
例えば、オリジナルモデルに標準で搭載されているGPUクーラーが壊れてしまった場合など、GPUを安定して冷やすことが出来なくなってしまった際には後から取り付ける事が出来る簡易水冷キットを使用することで再びスペック通りの性能を発揮できるようになる可能性があります。
GTX1080のようなハイエンドモデルのグラボはファンを回さずにヒートシンクのみで冷却する事が難しいため、クーラー側の故障が確定したのであれば、無理に動かして基盤側まで壊してしまうよりも、簡易水冷キットに換装して今まで通り使うのがおすすめです。
新品じゃないグラボを使い続けるために簡易水冷キットを買うのはもったいない、と感じるかもしれませんが、ハイエンドクラスのグラボ本体よりはるかに安く、グラボ本体側が壊れた時には水冷キット部分だけを新しいグラボに乗せ換えて使い続ける事も可能なため、交換用のクーラーとして購入したからと言って、決して無駄になる事はありません。
おすすめの水冷キット「NZXT Kraken G12」
メリット・デメリットを承知の上でGTX1080の水冷化を試してみたい、と言う人におすすめの簡易水冷化キットがNZXTから発売されている「Kraken G12」です。
これは、これ自体が水冷機能を搭載しているのではなく、CPU用の簡易水冷クーラーのヘッド部分をGPUに固定できるようにするためのパーツです。
対応している水冷ヘッドは同社製のものだけでなく、CorsairやAntecといった有名メーカーの物が対応しているため、既に水冷ヘッドを持っていて、それを使っていないという人にもおすすめのパーツです。
なお、GTX1080に対応しているのはG12です。
Kraken Gシリーズは他にもG10などがありますが、そちらはGTX1080には対応していないため購入時には型番に注意が必要です。
最初から水冷ヘッド搭載の「GIGABYTE GV-N1080XTREME W-8GD」
水冷化を試したいけど、自分でグラボのクーラーを外すのは怖いという人におすすめしたいのが、GTX1080を搭載し簡易水冷クーラーを標準装備したGIGABYTEのグラボ「GV-N1080XTREME W-8GD」です。
このGTX1080は最初から簡易水冷化されているため、簡易水冷化する際にネックとなる、分解によるメーカー保証の消失を心配することなく、水冷のメリットを受けることが可能な点が大きなメリットです。
また、簡易水冷化する事によって温度が上がりにくくなっている分、箱出し状態でのクロックも高めに設定されているため、GTX1080の性能を更に引き上げて使いたい人にもおすすめのグラボです。
まとめ
GTX1080に限らず、極一般的な使い方の範疇で水冷化する事のメリットは薄いかな?
正直な感想ですが、それを踏まえても「高スペックPCのロマン」という魅力があるのもまた事実です。
また、温度が上がりにくくなる分だけ壊れにくくなる事や、動作音も小さくなるといった利点もあるため、多少お金が沢山かかってしまっても長く、静かに、安定して使いたいと言う人はOC等に興味が無い場合でも水冷化を検討してみるのもおすすめです。