腰痛の痛みを数値化する
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目次
腰痛の痛みを自分以外の人に伝える必要性
腰痛がひどくて何をしても苦痛に感じるような時でも、周りの人は自分の苦しさを理解していないことありませんか?この痛みがどれほどつらいのか相手に伝えたいときもあると思います。ただ、「痛い痛い」と口で言ってもなかなかその度合いは正確に伝わらないことの方が多いのではないでしょうか。
整形外科にかかれば、痛みの強さや内容を医師に正確に伝えなければ、正しい治療が行われなくなります。逆に医師にとって、患者が常に適切な言葉で痛みについて説明できるとは限らないため、正確に痛みを把握できる方法が必要になります。
そこで、痛みの度合いを数値化する方法がたくさん試みられています。この中でより多くの場面で使われている代表的な数値化の手法を上げると以下のようなものがあります。
- SF-36
- JOA Score
- ODI
- VAS
以下それぞれについて説明します。
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SF-36
世界的に普及している評価方法です。腰痛に特化したものではなく、体全体の調子を数値かするもので、包括的評価法などと呼ばれます。患者が自身の痛みや生活のしやすさなどについて回答します。質問は8項目で1問ごとに0点から100点の間で点数を付けます。点数が大きいほど良好な状態を表します。
項目は以下の8つです。
- 身体機能
- 日常役割機能(身体)
- 体の痛み
- 全体的健康感
- 活力
- 社会生活機能
- 日常役割機能(精神)
- 心の健康
自己評価のため、単純な個人間の比較は難しいですが、本人がどう感じているかはとらえられます。また、評価値の継続的な推移をみることで、症状の改善具合を見ることができます。手術前後で比較をすることにより、手術による改善効果を数値化することができます。
JOA Score
日本整形外科学会が作成したもので、腰痛の度合いを評価する方法として広く使われています。14の質問に患者が答え、回答内容から、患者が感じる腰痛の度合いを29点満点で数値化します。数値が大きいほど良好です。
項目は大きく以下4つに分類されます。
- 自覚症状
- 他覚所見
- 日常生活動作
- 膀胱機能
1問の選択肢は3か4で、動作のしやすさなどを度合いに応じて選択します。
ODI
正確には、日本語版 Oswestry Disability Index(ODI) 2.0 となります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yotsu/15/1/15_1_11/_article/-char/ja/
腰痛が日常生活に与える影響度合いについて10の質問に回答します。回答は度合いに応じて0点から5点までの6段階から回答し、10問の回答を合算します。数値が小さいほど良好です。単純に合算するだけでよいので自分での算出が容易にできます。
ODIは、1980年にバージョン1.0が発表され、改良がくわえられ2000年にバージョン2.0となっています。2003年に日本語翻訳されています。
質問は以下の10個です。
- 痛みの強さ
- 身の回りのこと(洗顔や着替えなど)
- 物を持ち上げること
- 歩くこと
- 座ること
- 立っていること
- 睡眠
- 性生活(関係あれば)
- 社会生活(仕事以外での付き合い)
- 乗り物での移動
VAS
正確には、Visual Analog Scaleとなります。
10cmの横線を書き、左端を「痛みなし」、右端を「耐えられない痛み」として、痛みの度合いをプロットします。質問や回答がたくさんあるものではないため、とても簡単に実施できるのが特徴です。ただし、回答の仕方が抽象的で回答者の解釈によりばらつきが出る可能性が高いため、個人の回答を比較することはできません。あくまで、個人の時系列的推移に使うものになります。1948年に開発されたもので、腰痛以外の分野を含め、世界的に広く使われています。
JOA Score(腰痛)の実際の質問
Ⅰ:自覚症状(9点)
A,腰痛に関して
まったく腰痛はない
時に軽い腰痛がある
常に腰痛があるか、あるいは時にかなりの腰痛がある
常に激しい腰痛がある
B,下肢痛に関して
まったく下肢痛、シビレがない
時に軽い下肢痛、シビレがある
常に下肢痛、シビレがあるかあるいは時にかなりの下肢痛、シビレがある
常に激しいい下肢痛、シビレがある
C,歩行能力に関して
まったく正常に歩行が可能
500メートル以上歩行が可能であるが、疼痛、シビレ、脱力を生じる
500メートル以下の歩行で、疼痛、シビレ、脱力を生じて歩けない
100メートル以下の歩行で疼痛、シビレ、脱力を生じ、歩けない
Ⅱ:他覚所見(6点)
A,SLR(hamstring tightnessを含む)
正常
30°~70°
30°未満
B,知覚
正常
軽度の知覚障害を有する
明白な知覚障害を認める
注1)軽度の知覚障害とは患者自身が認識しない程度のもの
注2) 明白な知覚障害とは知覚のいずれかの完全脱出、あるいはコレに近いもので患者自身も明らかに認識しているものをいう
C,筋力
正常
軽度の筋力低下
明らかな筋力低下
注1) 被検筋を問わない
注2) 軽度の筋力低下とは筋力4程度を指す
注3) 明らかな筋力低下とは筋力3以下を指す
注4) 他覚所見が両側に認められる時にはより障害度の強い側で判定する
Ⅲ:日常生活動作
a,寝返り動作
容易 やや困難 非常に困難
b,立ち上がり動作
容易 やや困難 非常に困難
c,洗顔動作
容易 やや困難 非常に困難
d,中腰姿勢または立位の持続
容易 やや困難 非常に困難
e,長時間坐位(Ⅰ時間位)
容易 やや困難 非常に困難
f,重量物の挙上または保持
容易 やや困難 非常に困難
g,歩行
容易 やや困難 非常に困難
Ⅳ:膀胱機能
正常
軽度の排尿困難(頻尿、排尿遅延、残尿感)
高度の排尿困難(失禁、尿閉)
日本語版 Oswestry Disability Index(ODI) 2.0 の実際の質問
以下のアンケートに答えてください.これらは,腰の痛み(あるいは足の痛み)が,あなたの日常生活にどの
ように影響しているかを知るためのものです.すべてのアンケートに答えてください.それぞれの項目の中で,
もっともあなたの状態に近いもを選んで,番号を○でかこんでください.
計算方法:回答の0点から5点を10問分合算する
1:痛みの強さ
0.今のところ,痛みはまったくない.
1.今のところ,痛みはとても軽い.
2.今のところ,中くらいの痛みがある.
3.今のところ,痛みは強い.
4.今のところ,痛みはとても強い.
5.今のところ,想像を絶するほどの痛みがある.
2:身の回りのこと(洗顔や着替えなど)
0.痛みなく,普通に身の回りのことができる.
1.身の回りのことは普通にできるが,痛みがでる.
2.身の回りのことはひとりでできるが,痛いので時間がかかる.
3.少し助けが必要だが,身の回りのほとんどのことは,どうにかひとりでできる.
4.身の回りのほとんどのことを,他のひとに助けてもらっている.
5.着替えも洗顔もできず,寝たきりである.
3:物を持ち上げること
0.痛みなく,重いものを持ち上げることができる.
1.重いものを持ち上げられるが,痛みが出る.
2.床にある重いものは痛くて持ち上げられないが,(テーブルの上などにあり)持ちやすくなっていれば,
重いものでも持ち上げられる.
3.重いものは痛くて持ち上げられないが,(テーブルの上などにあり)持ちやすくなっていれば,それほど
重くないものは持ち上げられる.
4.軽いものしか持ち上げられない.
5.何も持ち上げられないか,持ち運びもできない.
4:歩くこと
0.いくら歩いても痛くない.
1.痛みのため,1Km以上歩けない.
2.痛みのため,500m以上歩けない.
3.痛みのため,100m以上歩けない.
4.つえや松葉づえなしでは歩けない.
5.ほとんどとこの中で過ごし,歩けない.
5:座ること
0.どんないすにでも,好きなだけ座っていられる.
1.座りごこちの良いいすであれば,いつまでも座っていられる.
2.痛みのため,1時間以上は座っていられない.
3.痛みのため,30分以上は座っていられない.
4.痛みのため,10分以上は座っていられない.
5.痛みのため,座ることができない.
6:立っていること
0.痛みなく,好きなだけ立っていられる.
1.痛みはあるが,好きなだけ立っていられる.
2.痛みのため,1時間以上は立っていられない.
3.痛みのため,30分以上は立っていられない.
4.痛みのため,10分以上は立っていられない.
5.痛みのため,立っていられない.
7:睡眠
0.痛くて目をさますことはない.
1.ときどき,痛くて目をさますことがある.
2.痛みのため,6時間以上はねむれない.
3.痛みのため,4時間以上はねむれない.
4.痛みのため,2時間以上はねむれない.
5.痛みのため,ねむることができない.
8:性生活(関係あれば)
0.性生活はいつもどおりで,痛みはない.
1.性生活はいつもどおりだが,痛みがでる.
2.性生活はほぼいつもどおりだが,かなり痛む.
3.性生活は,痛みのためにかなり制限される.
4.性生活は,痛みのためにほとんどない.
5.性生活は,痛みのためにまったくない.
9:社会生活(仕事以外での付き合い)
0.社会生活はふつうで,痛みはない.
1.社会生活はふつうだが,痛みが増す.
2.スポーツなどのように,体を動かすようなものをのぞけば,社会生活に大きな影響はない
3.痛みのため社会生活は制限され,あまり外出しない.
4.痛みのため,社会生活は家の中だけに限られる.
5.痛みのため社会生活はない.
10:乗り物での移動
0.痛みなくどこへでも行ける.
1.どこへでも行けるが,痛みが出る.
2.痛みはあるが,2時間程度なら乗り物に乗っていられる.
3.痛みのため,1時間以上は乗っていられない.
4.痛みのため,30分以上は乗っていられない.
5.痛みのため,病院へ行くとき以外は乗り物には乗らない.
まとめ
以上のように、痛みを評価する方法は複数あり、簡易的なものから複雑なものまでそれぞれ特徴があります。しかし、いずれも痛みを数値で表すことにより、少なくとも、言葉だけで相手に伝えようとするより、客観的な度合いとして伝わりやすくなります。また、評価方法の特徴を踏まえた上で、手術による腰痛改善の効果を数値化したり、他社との比較をしたり、平均値との比較をするといった使い方もできます。自分の腰痛の度合いを冷静に振り返ることにも使えますので、うまく使っていきましょう。