海外渡航・長期滞在予定がある人へ…辞書文化の違い・電子辞書の扱い方について

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海外旅行シーズンになると、電子辞書の売れ行きが非常に良くなる…との情報があります。

お仕事や学問の都合で渡航する人にとっても、関心の高い機器でしょう。

しかし、現地文化への理解が足りないと、持ち込んでもほとんど役に立たない・かえって嫌な思いをしてしまうことになります。

ここでは、英語圏・アジア各地方について、言語文化・辞書の活用法についての解説を中心にお話しをしていきます。

海外の電子辞書事情

海外旅行・赴任・留学の際の持ち物として、日本では電子辞書が好まれます。

外国人からみた「電子辞書」というツールは、一体どういうものなのでしょうか。

英語圏の事情を見ていきます。

辞書は「学者の持ち物」?

欧州・米国では、辞書は「研究生と学者の持ち物」という印象が強いようです。

一般の家庭に置かれていることは非常に珍しく、インテリジェンスの象徴的存在とみなされています。

その理由を述べていきましょう。

言語学者によると、英語圏で日常会話をするために必要な語彙は、400〜500単語程度と言われています。

それにひきかえ、日本語の場合は「1000語でもやっと小学生レベル」とのこと。

丁寧語・謙譲語・尊敬語などの社会人に必要な語彙を含めれば、5000語以上の単語力が必要である…との報告があります。

わが国だと1000年以上前には「辞書」が出現していましたが、欧州・米国ではつい200年ほど前まで、絵本ですら富裕層の持ち物でした。

こういった背景もあり、英語圏で庶民が辞書を持ち歩く…という文化は、まだまだ浸透していません。

実際に渡航した人のブログ・SNSなどでも、「会話の際に電子辞書を取り出すと、奇異の目で見られた」「電子辞書の意味を説明すると、学者と間違えられた」「日本マニアの外国人に電子辞書をせがまれた」という体験は非常に多く見られます。

渡航経験の多い人のなかには、「研究職でもない限り、海外に辞書を持ち出す必要はまったくない・むしろ無用の長物である」とまで断言する人も。

電子辞書は役に立たないのか

それでは、本当に「電子辞書は役に立たない」と言い切っていいのでしょうか。

近年の電子辞書の機能を鑑みつつ、検証してみましょう。

10年ほど前の電子辞書は、文法・語法などの収録が甘く、語学を勉強する人にとっては不満足な出来だったのですが…近年になってようやく、実践的な英会話・英英語と米英語の違い・ベストセラー文法書なども収録するようになり、英語の勉強は電子辞書一台で完結できるようになりました。

加えて、日本の英文法教育は非常に高レベルだと言われており、海外でも高く評価されています。

ここでは、英語圏の文化にも着目すべきでしょう。

識字率の低い時代を長く経験している英語圏では、正しい文法・口語と文語の区別へのこだわりが非常に強くみられます。

特に話中の言い回しは重要視され、ただ語彙力があるだけの人物か/文化レベルの高い人物かというのは、厳しく峻別されています。

英語圏できちんとした「お付き合い」をするなら、単に会話だけで語彙力を増やすのは悪手だといえます。

大量の和英・英和・英英の文法書を持ちこんで、人知れず学習するのが王道ではありますが…渡航の際の手荷物を考慮すると、やはりコンパクトに収まる「最新モデルの電子辞書」がおすすめできます。

中国語・韓国語を学ぶなら

中国・韓国では、語学力に対する認識が少し異なります。

人種は同じでも基本的には多民族国家であるため、地方によって使う言語が大きく異なります。

日本から電子辞書が持ち込まれてから、現地メーカーも自国の事情を顧みて、辞書作りに積極的に動いているようです。

韓国語・韓国朝鮮語

表題にもある通り、朝鮮半島のなかにも「韓国語」「朝鮮語」と大分類で2種類の言葉があります。

韓流ブームが一時到来したことにより、日本の国内メーカーでは「韓国語・中国語モデル」なる機種も出しています。

いずれのものも、地方ごとに使われる言語を詳細に収録しており、大変おすすめできます。

現地のコミュニケーション事情もみてみましょう。

韓国・朝鮮語は日本語と文法上似たところがあるので、初学者でも辞書さえあれば苦労しないのがメリット。

これらの国では「とにかく話せること」が重視されており、正しい文法は重視されていません。

儒教思想が強く・上下関係に厳しいとの印象がありますが、意外にも「口語的にくだけて話せるならオーケー」というアバウトな感覚があります。

そのため、まったく現地語に理解のない日本人でも、ちょっと電子辞書を開いて必要な単語を抜きだせれば、あとは勢い次第で会話をこなせます。

ここからは余談になりますが…精密電子機器に高い関心を持つ韓国では、日本製の電子辞書は歓待されるようです。

親しくなった人へのプレゼントとして電子辞書を用意するのも、大変おすすめできます。

北京語

中国で公用語に指定されていますが、渡航したての日本人に対しては、英語を好んで使う人が多くいます。

インターネットとともに普及しつつある北京語ですが、現実の会話ではごく親しい身内・取引相手の間でしか使わないのが実情。

しかし一旦北京語を習得してしまうと、非常に親しみやすいキャラクターになってくれるのが、中国人の魅力です。

現地の電子辞書への関心も高く、富裕層の間では日本製・中国語モデル辞書が流行っているとのこと。

流行語となっている「爆買い」でも、電子辞書の売り上げは高いそうです。

国内では北京語に関する良書が少ないため、現地の人と親しくなるなら、電子辞書を持ち込むのが1番手っ取り早いでしょう。

盗難には注意が必要ですが、電子辞書を持っているだけでも親しく接してくれる現地人は、非常に多いと考えられます。

外国で暮らすための電子辞書

英語圏から始まり、各地の言語のとらえかた・辞書の必要性などを語ってきましたが…。

海外ではあまり「辞書に特化した機械」を持つ考え方がみられません。

ウェブ辞書・アプリ開発が熱心に行われているのが実情です。

こと、研究職やビジネス文書で使う複雑な語彙については、現地語のウェブツールのほうが電子辞書よりも一段優れていることがほとんど。

電子辞書を持ち込んでも、語学の習熟度があがれば、必ず不要になる日がきます。

研究職・ビジネスマン向けモデルの高価な電子辞書を持ち込むのもおすすめできますが、万が一故障した場合のことを考えてみましょう。

大変な費用と手間がかかるのは、すぐに想定できるかと思われます。

渡航慣れしている人によると、比較的新しいモデルの電子辞書を中古で2台購入するのがおすすめだそうです。

是非ご参考までに。

旅行・留学のときの心構え

これまで説明してきた通り、電子辞書は日本固有の文化的な存在と言えます。

金銭的価値があるとみなされて、盗難被害に遭う人も多いのだとか。

もう一つ気を付けたいのが、企業留学の際の持ち込みです。

他言語圏の人にわからないように機密情報を持っている会社も存在する…ということを考えてみましょう。

電子辞書を携えていると「企業秘密を持ち出すつもりではないか」と勘ぐりされることもあるとのこと。

どこでもすぐに電子辞書を取り出そうとせず、常に注意を払って扱う必要があります。

まとめ

電子辞書というツールがこれほど高度に発達しているのは、日本特有の現象と言えます。

会話の間に合わせで使うのではなく、言語圏に合わせて辞書の真髄を引き出すのが、海外渡航におけるポイントと言えます。

真剣に語学を学びたくて渡航するかた・現地の人との交流を重視しているかたは、是非「辞書機能をその国の文化でどう使うか」を一考してみてください。