単語が覚えるには復習が重要!記憶の仕組みから英語学習の方法を探ろう!
英語学習をするというのは言い換えれば英語を記憶するということでもあります。
どのような勉強においても記憶がその根底にあり、記憶したことを活用することで「使える」ようになるわけです。
また数学などの「使う」要素が強い分野とは異なり、英語学習の場合は記憶することが何より重要といえるでしょう。
今回はそんな記憶の仕組みという観点から英語の学習についてみていきましょう。
3つの記憶の方法
私達が物事を記憶するとき、単に記憶という1つの働きが働いているように思われるかもしれませんが、その実態は異なります。
記憶は大まかに以下の3つに分けることができるのです。
- 感覚記憶
- 短期記憶
- 長期記憶
感覚記憶というのはほとんど瞬間的な記憶で、数秒しか保つことができません。
いわゆる散歩中に目にする風景のようなもので、明瞭に思い出せないもののある程度ぼんやりと把握できるような記憶です。
言語化されることもなく、注意を向けない限り脳も処理をせずそのまま記憶からこぼれ落ちていきます。
むしろ通常使われる記憶という概念からはかけ離れた機能といえるでしょう。
短期記憶は感覚記憶に注意を向けることで成立する記憶で、数十秒から数ヶ月程度保持される記憶です。
一説には一度に7プラスマイナス2(5から9)個の事柄しか覚えることができないといわれています。
そのため常に更新され続け、要らない記憶は捨てられてしまう形です。
長期記憶は短期記憶を繰り返し思い出すことで脳に定着する記憶です。
期間はものによっては一生で、ここにいかに英語の単語を入れ込めるかが英語学習の鍵といえるでしょう。
私達の脳にはこのような記憶の区分が存在し、それぞれ上で述べたように機能しています。
そのためこの機能に沿って英語学習を進めていけば英語を操ることができるはずです。
記憶が定着する流れ
記憶が脳に刻まれるには次の3つの段階を踏むことになります。
- 記銘
- 保持
- 想起
記銘とは記憶したものに意味を付与する過程です。
私達が目にするものは単なる光による映像でしかありませんが、これに意味づけをすることで記憶にすることができます。
例えば赤くて丸いみずみずしいものの映像を「リンゴ」という名前、概念によって意味づけるわけです。
このあたりは言語化以前の領域となるためやや言葉にすることは難しいのですが、目の前の光景を言葉によって表現できるようにする課程と考えておけば良いでしょう。
保持とは記銘した記憶を保存しておく働きです。
一旦記銘したものは自動的に保持されるため、記銘と保持は切り離せない関係にあります。
想起とは保持した記憶を思い出す行為です。
この想起を繰り返せばやがて長期記憶へと定着することになるでしょう。
なお想起にも以下の3つの種類があります。
- 再生
- 再認
- 再構成
再生とは記憶したものを記憶したとおりに思い出すことです。
再認はもっと客観的に、記憶したものを経験したことがあると意識することを指します。
そして再構成は別々の記憶を合成してしまう働きで、全く経験したことがないことを記憶しているといった不可解な現象を引き起こす原因です。
ともかく私達にはこのような記憶のメカニズムが存在しています。
ではこのメカニズムをどう生かせばよいのかというと、覚えたいことは積極的に記銘して想起すれば良いのです。
忘却のメカニズム
記憶を定着させる仕組みは分かりましたが、それと同じくチェックしておきたいのが忘却のメカニズムです。
なぜ記憶したことを忘れてしまうのかも確認しておけば、より忘れ難い英語学習ができるようになるでしょう。
忘却をする原因は実は解明されてはいませんが、一般的な説としては以下の3つが提唱されている形です。
- 減衰説
- 干渉説
- 検索失敗説
減衰説というのは記憶を覚えた時点からなだらかに忘却をしていくという説になります。
この説を唱える心理学者は、物語を被験者に記憶させてから一定間隔で物語を述べてもらうという実験を行い、時間経過によって再生の正確さが損なわれていくということを認めました。
また、この際、物語の細部が省略されたり合理化されたりするといった現象も起こったとのこと。
干渉説というのは常に上書きを繰り返す新しい記憶によって忘却が引き起こされているのではないか、という説です。
この説を推す心理学者は被験者を睡眠をとるグループととらないグループに分け実験を行い、睡眠をとらない方が忘却していることを認めています。
起きている限り新しいことを記憶すると考え、記憶は上書きされるものと主張しているわけです。
検索失敗説というのは忘却の概念を少し別の角度から見直した説です。
忘却というと完全に脳から記憶がなくなった状態をイメージするものですが、この説によると単に思い出せないだけで記憶自体は脳にあるとのこと。
実験では単語を被験者に記憶させ、それを思い出すためのキーフレーズを与えるグループと与えないグループに分けたところ、与えたグループの方が成績が良かったことが認められました。
この説が正しいとすると、私達の記憶はキーさえ渡されれば思いだせるもので、消去されてはいないのかもしれません。
このように、忘却のメカニズムには色々な説が提唱されている状況です。
特に検索失敗説は何かの拍子にふと過去のことを思い出すことを経験している方にとってはしっくりくる説といえるかもしれません。
エビングハウスの忘却曲線
減衰説を具体的に統計的な形で示しているのが「エビングハウスの忘却曲線」です。
これは忘却の度合いを表す曲線状のグラフで、時系列と共に記憶力が減衰していることがわかります。
なおグラフでは「節約率」というやや特殊な概念をパーセンテージで導入していますが、これは記憶しなおすために要した時間をいくら節約できたかを示す数値で、簡単に言うなら再記憶のしやすさの目安といえるでしょう。
具体的には以下のような結果となりました。
- 20分後:58%(節約率)
- 1時間後:44%
- 1日後:34%
- 6日後:25%
- 1ヵ月後:21%
まず20分後の時点で節約率は58%と低めとなっていますが、これは節約率がそういった性質の数値であると考えれば良いでしょう。
節約率は1日後には34%となっていますが、1ヶ月後でも21%とそこまで落ちてはいません。
大きな差が認められるのは20分後から1日後の間といえます。
意外な点としては6日後と1ヵ月後がほとんど同じ節約率になっているところです。
ある程度記憶が減衰するとその後は横ばいになるという結果が得られました。
忘却曲線と記憶の関係
エビングハウスの忘却曲線と記憶の関係を考えるときに注意しておきたいのが「あくまで忘却のためのグラフ」であるという点です。
この忘却曲線は記憶の減衰説を後押しするものであって、記憶の定着にそのまま使えるような曲線ではありません。
そもそもが単純な忘却率ではなく節約率という特殊な概念のグラフなので参考にし辛いという側面もあります。
そのため、エビングハウスの忘却曲線を参考にして復習をすれば英語が簡単に覚えられる、というわけではありません。
この辺り、ややこしいですが整理しておくと良いでしょう。
それでも復習は効果あり
といっても短期記憶を何回も想起していけば自ずと長期記憶へと移行するので、復習は英語学習に効果がある行動です。
仮にエビングハウスの忘却曲線で差の大きな1日後に復習を行っても効果はあるはずです。
ただ単に忘却曲線がそのまま記憶の定着の参考にはならないというだけで、復習自体には効果があります。
意識的に記銘して想起していこう
単語を記憶するということは言い換えれば「単語を長期記憶する」ということに他ありません。
そして長期記憶する方法はただ1つ「想起すること」です。
そのため英語を学習するには単語を想起していれば良いといえるでしょう。
記憶の方法も色々
想起する方法にも様々な方法があります。
単純に単語帳を繰り返し読むのも良いですし、文章を書いてみるのも良いでしょう。
また趣味的なところと結びつけて記憶すればより覚えやすくなるはずです。
ただその根底にあるのはあくまで「想起すること」です。
いずれの方法をとるにしても「想起」ということを意識しておくことをおすすめします。
まとめ
英語学習について記憶の仕組みからみてきました。
記憶には感覚記憶・短期記憶・長期記憶という3つの種類があり、英語を使えるようになるということは長期記憶に英語を覚えることが前提となります。
そして英語を長期記憶に溜めるということは覚えた英語をとにかく想起すれば良いのです。
色々な方法を検討しつつ自分に合った方法で英語をどんどん想起していきましょう。