電子辞書と紙辞書、優劣が無くて何が悪い?

screenshot_3

如何なる学習においても、辞書や事典の類を用いるということは学習の基礎において極めて重要なことです。

しかしながら、実際の辞書、事典の運用に際して、電子辞書を用いるべきか、紙辞書を用いるべきかで、対立があります。

本記事では、電子辞書と紙辞書が性質的に異なることから、優劣という判断そのものが不要であることに加え、その性質的相違から運用方法についても考えていきます。

電子辞書、紙辞書戦争の内実

電子辞書、紙辞書戦争は、単に辞書あるいは書物に対する価値基準を統一したり、書物そのものの効用を比較したりするということに留まらず、人類の文明・文化的発展を評価する一考察として、現在も考えられていることです。

どういうことかと言えば、紙という物質的な媒体に対する依存から、電子という非物質的な媒体に対する依存への移行に関する比較だということです。

もっと言えば、私たちの生活基盤である物質そのものの一部分が電子という非物質に取って代わっていくという、生活基盤の質的な変化に関係する重要な考察とも言えるわけです。

非物質化することに何があるのか

生活基盤が非物質化するということは、情報技術の最低基準を満たさない者は、生きていけなくなるということを示しています。

すなわち、電子辞書に限らず、パソコンやスマートフォンといった電子機器という物は、その電子的な仕組みをある程度は理解していたり、その使い方という物にどのような方法があって、どういったことにまで利用できるのかということを理解していたりする必要があるのです。

だから、電子機器に弱い人というのは、電子機器が使えないことによって、情報的な次元から差別を受けることになるわけです。

そして、その差別ということの最前線にこそ、電子辞書と紙辞書との対立があるわけです。

それは教育をはじめとする、知識の継承と伝達という人類が決して手放すことのできない使命、あるいは人類がこれまで発展でき、これからも発展していくために必要不可欠な情報という物の差別が発生しそうになっているという現状を示しているのです。

そのように考えると、電子辞書、紙辞書戦争の内実というものは、単なる知識の検索や利便性という次元を離れ、今後の人類が発展していくうえで差別に対してどのように対応していくのかという実践が見えてくることになります。

紙辞書の性質

紙辞書が人類の情報伝達に関する媒体として、ながらく利用されてきたことは言うまでもありません。

言語や現象、教育や哲学、植物や医学、歴史や気象などと、人類が記録してきたことで現代まで伝わっていることの大半は、紙辞書によって存在しているのだと言っても過言ではない程に、紙辞書は古くから存在し、私たちの情報を継承してきました。

その性質とは、まさしく先述の通り、物質的媒体に依存した情報を有している、ということです。

紙辞書は原材料である紙自体やインクそのものが実物として存在しているため、物質的な影響、最終的には微生物による分解という過程に居るまでの間、この世界に存在し、情報を提示し続けます。

そして、物として存在しているおかげで、物に働きかける力さえあれば、誰でも簡単に、そして十分に利用することができます。

電子辞書の性質

電子辞書は近年から現代において、圧倒的な利便性を持った媒体として台頭してきたことは間違いありません。

なんと言っても、コンパクトな見た目に対して、圧倒的な情報量と検索力を有しているのですから、その利便性は語るまでもないでしょう。

その性質とは、非物質的媒体に依存した情報を有しているということです。

本体は物質的ですが、情報そのものはデータのみ、すなわち非物質的な媒体に依存していますから、本体の耐久性のみならず、電力という燃料が必須となります。

また、一度でもデータが破損した場合、物としては残らないため修復や再利用が難しいということもあります。

そして、電子機器でありますから、使いこなすには相応の知識が必要になってきます。

どうして紙辞書は電子辞書に勝らないのか

紙辞書は誰でも使えて扱い方も簡単です。

紙をめくっていくという直感的で単純な動作のみを要求しますし、アルファベット順や50音順などの順序が事前に明らかなので習熟も容易だと言えます。

しかしながら、辞書は情報に見合うだけの物量を要求します。

言葉の辞書、中でも漢字辞書と国語辞書だけでも書棚の一列は埋まってしまうだろう程に空間を必要とします。

さらに、すでに物質として形を持っているため加工ができません。

自分の使いやすいように辞書をカスタマイズすることができないのです。

どうして電子辞書は紙辞書に勝らないのか

電子辞書は使いこなせば最高の利便性を持っています。

知りたいことを単語さえ記入するだけで、膨大なデータベースから該当する情報だけを抜き取って来てくれるからです。

しかしながら、辞書は使用のための知識技能を要求します。

検索機能という物は、検索したいものの事前情報がなければ検索できません。

さらに、辞書自体の一覧性がないため、知りたいことは教えてくれますが、知りたいこと以外は何も教えてくれません。

電子辞書と紙辞書の優劣がない理由

以上のように、電子辞書にも紙辞書にも良いところと悪いところがあるということは、ずっと以前から明らかであって、その原因がただ性質的な違いによってのみ引き起こされているということを私たちは分かっているはずなのです。

もっとはっきり言えば、どちらともを利用することが最高効率の検索力を有しているということは分かっているはずなのです。

おすすめの辞書の利用は、間違いなく双方を利用することなのです。

紙辞書は明らかに事前情報を必要とせず、開くだけで情報を提示してくれますし、電子辞書は明らかに該当する関連事項を収集し、細やかな情報提示をしてくれます。

紙辞書を活かす方法

以上のことから、紙辞書を活かす方法は、知識の出発点に利用するということが挙げられます。

紙辞書は開くだけで情報を提示する、情報開示性が著しく優れているものです。

ただ辞書の紙をめくっているだけで、見たことも聞いたこともない情報を私たちに感じさせてくれます。

そして、紙ですから大体の目測を立てたりする感覚的な操作、付箋などでカスタマイズしていく物質的な付与が簡単にできます。

電子辞書を活かす方法

他方、電子辞書を活かす方法は、細部の検索に利用するということが挙げられます。

検索するだけで記入された事柄とそれに関連する事項を一度にまとめて開示してくれる情報密度に優れたものです。

検索できるだけのことを知ってさえいれば、その知識を迅速かつ簡便に補ってくれます。

そして、電子ですから情報そのものの圧縮・加工・改変が可能で、電子情報としての記録を残しておくことも可能なのです。

もっと言えば、電子機器であるためパソコンを中心として、動画や写真といった電子的情報を電子辞書の中に挿入することができ、電子辞書が情報量という側面で、パソコンなどに取って代わることさえ可能だと考えられるわけです。

まとめ

結局のところ、紙辞書と電子辞書の選択には、利便性という判断基準はふさわしくなく、必要性や利用の用途という側面から選択することが最も大切であるということなのです。

どちらの辞書も、情報の集積した媒体であることに変わりはなく、その利便性はそれぞれに特化した部分があるのです。

であるならば、あくまで利用する人間が、事前知識ありきなのかどうかということや、どのような用い方をするのかということが重要になってくることは自明の理だと言えます。

今後の傾向からすれば、電子化は避けられませんが、紙の持つ情報開示性を電子辞書がどこまで再現できるのか、今後の電子辞書選びの際には紙辞書の性質を覚えておく方が生産的だと言えます。