産後の骨盤ケアを行いましょう~産後に使う骨盤ベルトの正しい巻き方~
妊娠中から産後にかけて起こりやすいのが腰痛です。
妊娠中の腰痛はマイナートラブル(不快症状)の一つでもありますし、産後の腰痛は出産時に赤ちゃんが産道を通る影響で起こります。
また、恥骨に痛みを感じる方もいらっしゃいます。
特に産後に腰痛があると、赤ちゃんのお世話やお母さんの身の回りのことをするのにも支障をきたします。
そこで、腰痛対策をしたい人におすすめの骨盤ベルト。
骨盤ベルトはお店やネットで簡単に手に入りますが、正しく巻かないと効果を得ることができません。
骨盤ベルトの正しい巻き方をマスターして、快適な産後の生活を送りましょう。
女性の骨盤のつくり
骨盤ベルトを正しく巻くための要素の一つに、骨盤ベルトを巻く位置があります。
正しい位置を確認するためには骨盤のつくりを知っておく必要があります。
ここでは、女性の骨盤がどのように構成されているのかを説明します。
骨盤は腸骨、恥骨、坐骨、仙骨、尾骨から成り立っており、それぞれ関節や結合で結び付いています。
特に腸骨、恥骨、坐骨を寛骨といいます。
寛骨は、腸骨、恥骨、坐骨の組み合わせでできているので、全身の中で最も大きい骨です。
寛骨の外側には、寛骨臼という丸いソケットのような部分があり、そこに大腿骨の上端にある大腿骨頭がはまっている状態です。
また、恥骨は恥骨結合によって結び付いています。
このように、骨盤は様々な骨の組み合わせによってつくられているのです。
骨盤は立体的なパズルのようなイメージです。
そのどこかで歪みやずれが生じると痛みとして感じます。
さて、産後に骨盤ベルトを巻くために骨盤のどの部分がポイントになるのか?
それは、腸骨のお腹側に突き出た部分である、「上前腸骨棘」、「恥骨」、太ももの骨で突き出た部分である「大転子」の3つです。
これらの見つけ方は後ほどお伝えします。
妊娠中や産後に腰痛が出現する原因
では、なぜ妊娠中や産後に腰痛が起こるのでしょうか。
その原因は大きくわけて2つあります。
妊娠中に起こる身体の変化
妊娠すると、女性の身体は大きな変化をとげます。
赤ちゃんを育てる子宮は、非妊時にはニワトリの卵くらいの大きさだったものが、出産が近い時期になるとその大きさは10~20倍になります。
この子宮をいくつかの靭帯で支えているのですが、子宮が大きくなるとそれを支える靭帯の負担が大きくなります。
子宮を支える靭帯は骨盤と結び付いているため、腰痛の原因になります。
また、見た目の変化だけではなく、ホルモンの変化も生じています。
妊娠すると、エストロゲン、プロゲステロン、リラキシンというホルモンが増加します。
エストロゲンは卵巣から、プロゲステロンは卵巣あるいは胎盤(胎盤が完成すると胎盤からの分泌に移行します)から、リラキシンは黄体や胎盤から分泌されます。
エストロゲンやプロゲステロンは妊娠を維持するために不可欠なホルモンですが、筋肉や靭帯、結合組織を弛緩させる作用があります。
リラキシンは関節や靭帯を緩める作用があります。
これらの作用により、骨盤の結合組織が弛緩するため、関節が動きやすくなるのです。
これは出産する時に、骨盤の中を通る赤ちゃんにとってはとても好都合なのですが、お母さんにとってはこの変化が痛みとして感じることになります。
また、妊娠週数が進むにつれて子宮が増大します。
大きくなった子宮を支えて身体のバランスを保つために、身体の重心が前方に移動します。
そうすると、骨盤がそった姿勢になり、骨盤底筋群への負担が増えます。
これも腰痛の原因です。
出産時に赤ちゃんが産道を通る影響
先ほど、出産時に骨盤の関節が動きやすくなることが赤ちゃんにとって好都合だとお伝えしました。
出産時、赤ちゃんは骨盤の形に合わせてまわりながら生まれてきます。
これを回旋といいます。
お母さんの骨盤のサイズに合った赤ちゃんの大きさであれば、回旋は特に問題ないのですが、お母さんの骨盤のサイズに赤ちゃんの大きさが合わない場合は回旋が上手いこといきません。
骨盤のサイズに対し、赤ちゃんが大きかった場合です。
このような場合、産道を赤ちゃんが通過すると恥骨結合が離れてしまうことがあります。
これを恥骨結合離開といいます。
この状態になると非常に強い痛みが伴い、歩くことが難しいこともあります。
これも産後の骨盤に起こる一つのトラブルです。
骨盤ベルトの正しい巻き方
それでは、骨盤ベルトをどのように巻くと骨盤を支えることができるのかをお伝えします。
骨盤ベルトの正しい巻き方には、「上前腸骨棘」、「恥骨」、「大転子」の3つがポイントになるとお話ししました。
これら3つの部位の見つけ方ですが、まずは「上前腸骨棘」です。
立ったままでおへそに手をあててみましょう。
そこから骨盤に向かって少し下方向に手を進めていくと、突き出た部分があります。
そこが「上前腸骨棘」です。
続いて「恥骨」ですが、おへそからまっすぐ下方向に手を進めていくと、硬い部分を触れることができます。
そこが「恥骨」です。
最後に「大転子」です。
立った状態で手を腰にあててください。
そこから下方向に手を進め、足踏みをしてください。
突き出た部分が動くのがわかると思います。
そこが「大転子」です。
骨盤ベルト巻く位置
骨盤ベルトを巻く時は、「上前腸骨棘」より下で、「恥骨」と「大転子」を覆うようにします。
「上前腸骨棘」はベルトで覆わないでくださいね。
「恥骨」と「大転子」を覆うため、巻いた時には、「こんなに下に巻くのか」と思う方が多いと思いますが、それが骨盤ベルトの正しい位置になります。
骨盤ベルトを巻く時の姿勢
骨盤ベルトを巻く時は、立った状態よりも寝て巻いた方が良いです。
骨盤高位という姿勢をとって巻いてみましょう。
骨盤ベルトもあらかじめ足から通しておきましょう。
まず、仰臥位になります。
そのまま膝を立てて、腰とおしりを持ち上げて下さい。
その状態で、「上前腸骨棘」より下で、「恥骨」と「大転子」を覆うようにして巻きます。
自力で腰とおしりを持ち上げるのが難しい方は、枕やクッションを腰とおしりの下に入れるとスムーズにできます。
骨盤ベルトを巻く時のきつさ
骨盤ベルトはきつく締めれば良いというものではありません。
一般的には巻いた時に心地良いと感じる程度のきつさと言われていますが、個人によっても感じ方が異なりますし、よくわからないという方が多いと思います。
骨盤ベルトを巻く時のきつさの目安は、ベルトを巻いた時に、手が通るくらいです。
手が通らない場合は少々きつく巻いている可能性があります。
逆に手だけではなく手首まで通るという場合は、ゆるく巻いている可能性がありますので、もう少し締めてみましょう。
また、正座した時に苦しいと感じる場合もきつく巻いている可能性があります。
その時はもう一度巻き直してみてください。
産後いつから骨盤ベルトを使えるのか
産後の骨盤ベルト使用時期ですが、ベルトの種類によって使用可能時期が異なります。
中には、出産直後から使える骨盤ベルトもあり、出産が終了すると同時に骨盤ベルトを巻く出産施設もあります。
骨盤ベルトを購入する時には、いつから使用可能なのかを確認することも大切です。
ちなみに、骨盤ベルトで非常に有名なのが「トコちゃんベルト」です。
種類によりますが、出産直後から使用可能なものもありますので、参考にしてください。
また、帝王切開で出産した方は出産後すぐに骨盤ベルトを装着するのは難しいことがあります。
なぜなら、手術による腹部の創部があるからです。
ベルトが創部に触れると痛みが出るので、創部の痛みが落ち着いてから巻くことをおすすめします。
まとめ
今回は、産後の骨盤ベルトの正しい巻き方について、骨盤のつくりや腰痛の原因、骨盤ベルトの巻き方や使用時期についてお伝えしました。
骨盤ベルトは産後のお母さんにとって役立つアイテムですが、その使用方法を誤ると、逆に身体が不調になってしまします。
赤ちゃんと一緒に楽しい育児生活を送るために、骨盤ベルトを正しい方法で装着して骨盤ケアを行いましょう。