「骨盤のゆがみ=腰痛の原因」 の真実とウソ
「骨盤のゆがみが原因ですね」「骨盤がゆがんで、左脚が2㎝長くなってますよ」整体院やカイロプラクティック院で治療を受けると、ほぼ同じような説明をうける事があります。
適切な検査と正確な診断に基づく場合が多いのでしょうが、一部未熟な施術者の不確かな診断による常套句になっているケースも見られます。
患者さんの不安を煽り治療に導く手段は、あってはならない事ですね。
正しい知識を理解して納得の上、安心して施術を受ける事が、患者さんの利益に繋がります。
骨盤のゆがみと腰痛の関係について、解りやすくご説明しますので、ぜひ参考にして下さい。
ゆがみの原因は、仙腸関節のズレ
骨盤を構成する仙骨と腸骨が接する関節が仙腸関節で、腰とお尻の間ぐらいにあります。
動く範囲は、2度・2ミリメートルと小さいのですが、中年以降徐々に動きが悪くなってきます。
重い上体を支えながら、中腰作業・繰り返しの動作や不意の動き等で、関節の周りの筋肉・靭帯のバランスがくずれると、僅かにズレが生じます。
この状態を骨盤のゆがみと呼んできました。
しかし、骨盤が歪むと必ず痛みが発生するとは限りません。
実際かなり骨盤が歪んでいても、腰などに痛みの無い方を多く見てきました。
なぜ痛みが出るのでしよう
仙腸関節の動きが悪くなったり少しズレると、どうして痛みが発生するのでしょう。
関節本来のスムーズな動きが障害されると、「関節反射」という特殊な反射が起き、周囲の筋肉・靭帯を異常に緊張させて痛みを生じさせると言われています。
また、仙腸関節と離れた部位に起こる痛みを「関連痛」と言います。
やはり関節包の中の動きが滑らかでなくなったり、炎症が起きた時に発生します。
仙腸関節が原因の痛みの特徴は
痛む箇所をピンポイントで指差せる事が、他の腰痛との違いの一つです。
腰とお尻の間にある骨の出っ張りに痛みがあり、その周囲を押せば強い痛みを感じます。
また骨盤の前にある骨の出っ張り、やや内側に圧痛がある事も特徴です。
動作では、椅子から立ち上がる時、前に屈む時、股関節を動かした時に痛みやすく、片側にでるケースが多いです。
治療法はありますか?
仙腸関節の機能障害を治療する手技は、医師・理学療法士による「AKA-博田法」です。
日本関節運動学的アプローチ医学会のホームページに、治療が受けられる全国の施設が掲載されていますので参考にして下さいね。
また仙台社会保険病院で施されている、局所麻酔剤による仙腸関節後方へのブロック注射も有効のようです。
麻酔科やペインクリニックで相談してみて下さい。
他の治療や予防法は?
仙腸関節に骨盤ゴムベルトを巻き、フラフープの要領で左右にそれぞれ30~50回ずつ、ゆっくり円を描くように回します。
足は肩幅位に開いて立ち、膝を曲げないようにするのがコツです。
治療兼予防に役立ちますので、おすすめですよ。
また、真向法の体操も有効だと言われていますので、ぜひ痛くない範囲でお試し下さい。
まず、床にすわり脚を開いて膝を曲げ、足の裏を合わせます。
背中を伸ばしたままゆっくりと上体を前に倒します。
息を吐きながら、股関節から曲げるのがコツです。
痛くなければ、10回くらい繰り返しましょう。
次に両脚を前に伸ばして床に座り、足首を反らせます。
背中を曲げずに、息を吐きながら、ゆっくりと上体を倒しましょう。
同じく10回行って下さい。
最後に脚を左右に出来る範囲で開いて座ります。
骨盤を立てて、足首を反らせて下さい。
同様に上体を前に10回倒します。
後ろに倒す体操もありますが、腰に負担が掛かりますので、腰痛の方は避けた方が良いかも知れません。
骨盤のゆがみチェック法
以下の項目が思い当たるようでしたら、骨盤が歪んでいたり、仙腸関節由来の腰痛の可能性があります。
特に3.4.9.10.11.は、良くない動作・姿勢ですのでご注意下さい。
1.靴の減り方が左右で違う
2.歩いていてよくつまずく
3.イスに座るといつも脚を組む
4.肘掛にもたれて座る
5.仰向けに寝るのが辛い
6.中腰の保持ができず、すぐ痛くなる
7.立ち上がる時に腰が重い
8.長時間同じ姿勢が辛い
9.常に片方の肩にバッグをかける
10.片足に重心をかけて立つ
11.長時間マウスを使ってパソコン作業
12.正面から見ると両肩の高さが違う
13.首がどちらかに傾いている
14.おしりの下線の高さが左右で違う
まとめ
従来は、仙腸関節のズレによる骨盤のゆがみが腰椎のズレを起こし、周囲の神経を圧迫して腰痛になると言われてきました。
構造的にはとても解りやすい理屈ですね。
現在多くの医師・理学療法士が「関節運動学」により、研究・治療を行なっています。
今回は、「AKA-博田法」の博田節夫医師、望クリニックの住田憲是医師、日本腰痛会の村上栄一医師(仙台社会保険病院)等の先生方が提唱される理論・臨床例に基づき、ご説明しました。
辛い症状があるのに「検査では、異常が見られませんね」との診断で、苦しんでいる方の一助になれば幸いです。
一日も早く症状が軽減すると良いですね。