意外と奥が深い? ローエンドのグラフィックボードとは
グラフィックボードの中には、性能を抑えた「ローエンドモデル」と呼ばれる製品があります。
一見すると初心者向けにも見えるローエンドモデルですが、こうした製品は性能こそ抑えられているものの個性的な特徴を持ったものもあり、痒い所に手が届くような製品が揃っているため、実はローエンドモデルユーザーというのは少なくありません。
今回はそうした、性能以外の点にメリットがあるローエンドモデルについてまとめました。
目次
ローエンドモデルとは?
ローエンドモデルというのはグラフィックボードに限らず、同世代などの中で性能が低いものを指します。
これらの製品は性能が低く機能も絞られている事が多いですが、その分価格も抑えられているのが特徴の1つと言えます。
グラフィックボードの場合、ローエンドモデルとされる製品は処理能力が低く出力端子の本数や種類が少ない代わりに、占有スロットが少ない、基板サイズがコンパクト、消費電力が非常に少ないなどの利点があります。
そのため、あくまでも画面を描写することだけを重視したい場合などに重宝されます。
また、CPUに内蔵されたグラフィックを使用してメモリを圧迫したくない場合などにも、ローエンドモデルのグラフィックボードは有用です。
ローエンドモデルの特徴は「選択肢の多さ」にある?
ローエンドモデルの面白い点として「選択肢が非常に多い」という点があります。
ローエンドモデルはロープロファイルや1スロット占有の薄型、ファンレスなどハイエンドモデルと比べて特徴的な仕様を持った製品が多いため、自分の用途に合わせた製品を選べるようになっています。
ローエンドモデルは処理能力が低い分、発熱量が少ないため、ミドルエンド以上のグラフィックボードと比べてファンレスや薄型の製品が発売されやすい特徴があります。
そのため、ITXサイズのケースなどを使用した小型PCや静穏性を最重視したPCを組みたい場合などにもある程度選択肢を確保し易いというメリットがあります。
これらの点は、性能を最優先でそこからGPUクーラーやボードサイズを選んでいくことが多いハイエンドモデルにはない特徴と言えます。
必ずしも初心者・ライトユーザー向けという事ではない
一見すると、性能が低く価格が抑えられているためPCを組むのに慣れていない自作初心者やライトユーザー向けに見られることが多いローエンドモデルですが、必ずしもそういった側面ばかりではありません。
前述した通り、ローエンドモデルは機能や特徴によって選択肢が多岐にわたります。
そのため、自分のPCをどのようなものにしたいかによっては、性能の低さに関係なく候補に挙がりやすいと言えます。
他にもマルチモニターのPCを組みたい場合などに、メインモニターはある程度のスペックを持ったグラフィックボードを使用し、サブ以降の処理能力がそれほど必要とされないモニタにはローエンドモデルを使用するように組むなど、ヘビーなPCユーザーの中にもローエンドモデルを使用している人は少なくありません。
また、平時は使わないで保管しておき、PCにトラブルが起きた時に問題の切り分け(GPUを変更して動作が改善されれば問題はGPUにある、などの原因の判別方法)をするために同メーカーのGPUを使ったローエンドモデルを用意しておく人も居ます。
ローエンドモデルを使ったゲームプレイについて
ローエンドモデルでゲームをプレイする事は不可能ではありませんが、描画や解像度の設定が必要になることが多いです。
例えば、現在の最新世代のローエンドモデル(GT 1030やRX550など)は、性能的には2~3世代前のミドルクラスに相当する性能を持っているため、その世代のグラフィックボードが主流だった時期に発表されたゲームタイトルであれば比較的安定して動作させることが出来ます。
それ以降のタイトルになると、要求スペックを下回ってしまう可能性があるため、安定して動作する可能性は低くなります。
また、ファンレスやロープロファイルなど排熱面で強くない製品も多いため、長時間のプレイには向いていません。
ゲームはしない、もしくは遊ぶのは古めのタイトルのみという場合にはローエンドモデル、最新タイトルに手を出す可能性がある場合にはミドルレンジ以上のグラフィックボードから予算に合ったものを選ぶのがおすすめです。
期待の最新ローエンドモデル「GeForce GT 1030」
ローエンドモデルとして今後に期待が持てるのがグラフィックボードの1つがGeForceの最新ローエンドモデル「GT 1030」です。
同じPascal世代で発表されたグラフィックボードは軒並み「GTX10xx」という名称でしたが、1030はローエンド向けなため、GeForceの命名規則に則ってXが外された「GT」扱いになっています。
性能は、同じnVidiaが過去に発売したGTX 750に相当する性能を持っていながら消費電力はわずか30Wまで抑えられています。
ゲーム用としては、ローエンドモデルの例にもれずライトゲーマー向けになっていますが、オンライン・オフライン問わず設定次第で対応出来るタイトルが多いのが特徴です。
発売されたのが最近という事も有ってか現時点ではご祝儀価格になっているため、若干割高感が否めませんが、今後価格が落ち着いてくれば非ゲーマー層やライトゲーマー層、旧世代のローエンドモデルからの乗せ換え、増設用などの有力な選択肢として挙げやすくなるかと思います。
GT 1030の利点は?
GT 1030の利点として、ロープロファイルやファンレス、薄型1スロットなどの特徴的なグラフィックボードが多い点があります。
また、それらの特徴のどれか1つだけではなく「ロープロファイルのファンレス」や「ロープロファイルの薄型1スロット」など複合的な特徴を持つグラフィックボードが多いため、用途によって色々選ぶことが出来ます。
特に薄型1スロットはブラケットの占有数だけでなく、クーラー部分自体の高さが抑えられてボード全体が薄くなっており、スペースの狭いケースでも使える事ができるので「コンパクトかつ描画もしっかり行いたい」という人にもおすすめです。
また、HDMIやDisplayPortなど最新の出力形式に対応したものや、逆にハイエンド以降では減りつつあるDVI-Dに対応した製品などもあるため、グラフィックボードを交換したいけどDVI-Dのモニターをそのまま使いたい、という人でも安心して使う事が出来ます。
今後おすすめのローエンドになりそう?「AMD Radeon RX550」
AMDのRadeonブランドの最新ローエンドモデルの「Radeon RX550」も、GT 1030と並んで今後に期待出来るローエンドのグラフィックボードです。
性能に関しては先述したGT 1030と同じ程度ですが、消費電力は若干多く50Wになっています。
ライトゲーマー向けとして見た場合には性能自体はGT 1030と近いため条件次第で動作するタイトルも少なくありませんが、Radeon自体がゲームには最適化されていないことが多いため、GeForceのローエンドモデル以上に割り切る必要があります。
こちらも発表から日が経っていないためまだまだご祝儀価格で割高な感じが強く、実際におすすめできる価格帯になるのはもう少し時間がかかりそうです。
RX 550の利点は?
RX550の利点は、低価格で発色が良くGeForceよりも動画向けなグラフィックボードを使える点にあると言えます。
そのため、動画視聴などをメインにしていて、ゲームでの使用は前提としていないPCや内蔵グラフィックでは満足できなくなったが、ミドルレンジ以降の製品に手を出すのは予定していない人などにおすすめです。
また、メインPCにRadeonのグラフィックボードを使っている場合には、RX550のほうがドライバを変更せずに動作するためトラブル時の問題の切り分け用などにも便利です。
まとめ
現時点でのおすすめのローエンドモデルはGT 1030が最有力です。
ただし、価格に関してはまだ若干高いため、本格的にローエンドとして普及するのはもう少し時間がかかりそうです。
今すぐに安いグラフィックボードが欲しいのならローエンドに拘らずに、敢えてGTX 1050の中から値下がりしているものを選んで買うのも価格は殆ど差が無く、性能は2倍近くになるためおすすめです。