マイニングによる高騰がリリース時期を遅らせている?GTX1180を巡る状況
グラフィックボードの主な用途はゲームの画像処理を高速化するというものです。
ただ他にもCADや写真編集といった用途にも使われてきましたし、精度の高い計算を要するスーパーコンピューターのパーツとしても採用されています。
そんな状況の中にまた1つ新しい用途として「マイニング」が生まれました。
そしてこのマイニングのためにGTX1180のリリース時期が明確にならないという噂も流れています。
今回はGTX1180とマイニングの関係や性能についてみていきましょう。
巨大な取引台帳の世界
マイニングとは仮想通貨の界隈で使われている用語で、その意味は掘削となります。
何を掘削するのかというと仮想通貨なのですが、それは字義の通りではありません。
まずは仮想通貨がどういった仕組みで運用されているのかを解き明かす必要があります。
仮想通貨を代表するビットコインを例として考えていきましょう。
ビットコインは通貨のように使えるデータなのですが、実は正確には個人が所有するデータではありません。
ビットコインの正体は巨大な取引台帳なのです。
例えばAさんがBさんに1ビットコインを送金するとします。
このとき、その送金情報は世界中に存在する「マイナー」と呼ばれる人々が共有する巨大な取引台帳に記録されることになるのです。
すると「AさんがBさんに1ビットコインが送金された」という情報が多くのマイナーの間で共有されることになり、結果的にBさんが1ビットコインを所有しているようにみえるという形になります。
Bさんは1ビットコインを送金されたわけですから、そのビットコインをCさんに送金することができます。
そしてCさんもビットコインを送金されたため、Dさんに送金することができるというわけです。
このように、取引の記録がビットコインの世界を形成しています。
そして取引台帳は無数のマイナーによって共有されているため、不正な取引をしたとしても多数のマイナーからその記録は否定されます。
そのため自然と整合性は担保され、全体としては堅牢なシステムといえるでしょう。
ではなぜマイナーは取引台帳の作成に参加しているのか、というとそれは「マイニング」によって報酬をもらえるからです。
大量の計算を必要とするマイニング
マイナーはその名の通り「マイニングをする人」という意味をもちます。
ではマイニングとは何かというと、決して仮想通貨を直接掘削するという意味ではありません。
これを解き明かすには取引台帳の作り方を見ればわかります。
ビットコインの取引記録は1方向へとチェーン上に連なったブロックのような形をしています。
ブロックには送金額や送金元などの情報が積もっており、次のブロックへまた繋がっていく形です。
そして各々のブロックには「ハッシュ値」と呼ばれる一意の文字列が設定されています。
そしてこのハッシュ値を見つけるには「ナンス」というランダムな数値をハッシュ関数にかけることになるのです。
最も速くブロックに適合するハッシュ値を見つけることができたマイナーにはネットワークから報酬が与えられるという形になります。
というわけで、ナンスを見つけるためには途轍もない計算をしなければいけません。
ランダムな数字を難解なハッシュ関数に代入し計算結果が合っているかを確認し、またナンスをハッシュ関数に代入していくのです。
またビットコインの発行量が少なくなればなるほどハッシュ関数の難易度は上昇していくのでより計算力は重要になっていくでしょう。
グラフィックボードが支えるマイニングの世界
マイニングが活発になるなかで注目を集めたのがグラフィックボードです。
グラフィックボードは同時に計算する能力が高く、またメモリも高速なので単純な計算を素早く行うことができます。
そのためマイニングに最適なパーツとしてマイナーの耳目を集めるようになりました。
仮想通貨が盛り上がりをみせればみせるほど当然の事ながらマイナーになる人々も殺到するようになります。
電気代の安い国に大量のグラフィックボードを備えた施設を運用したり、多数の人々が組織を組み協力してマイニングをしたりするようになりました。
そして段々とグラフィックボードへの需要が高まるようにったのです。
結果的にグラフィックボードは品薄となり、価格は高騰したままの状況が続くようになりました。
本来はゲーム用途向けの製品であるGeForceシリーズは高価で買いにくいパーツとなってしまったのです。
ちなみにGTX1180もGeForceシリーズに含まれるとみられています。
グラフィックボードを増産しない理由
品薄になるならグラフィックボードを増産すれば企業の利益になりそうなものですが、依然として品薄は続いています。
なぜGeForceを手がけるNVIDIAや対を成すRadeonを手がけるAMDがグラフィックボードを増産しないのかというと、それはリスクが高いからかもしれません。
いつ仮想通貨ブームが終わるのか誰にも分からないため、安易に増産できないのではないか、という噂が流れているほどです。
仮想通貨は始まったばかりの界隈であり、通過の変動も非常に不安定です。
ビットコインでいえば2017年1月には10万円ほどでしたが2017年12月には200万円以上の値をつけ、同年7月には70万円にまで低下しています。
いつこの界隈が衰退するのかそれともまた過熱するのか分からない状況なのでグラフィックボードの増産をすることは危険な試みといえるでしょう。
GTX1180はマイニング用かもしれない
GeForceシリーズはこれまでゲーム用のグラフィックボードを展開してきましたが、GTX1180はもしかしたらマイニング用のグラフィックボードになるかもしれません。
先述した理由からメーカーはグラフィックボードを増産しにくい状況となっているため、マイニング用の製品をリリースするという戦略を取る可能性があります。
もしマイナーがGTX1180に集中すれば他のグラフィックボードを安定して市場に供給できるようになりますし、マイナー対策としてはGTX1180の生産数のみ考えればそれで済むようになるはずです。
もちろんこれは噂の域を超えるものではありませんし、GeForceと名のつく製品なのでゲーム用にも使えるでしょう。
ただマイナーの需要の動向が判然としないためリリースが遅れているのではないか、という話もあります。
高騰が続くグラフィックボード業界にとって仮想通貨の動きは無視できないものなので、そういった噂が真実である可能性もあるでしょう。
GDDR6を備えた製品
GTX1180にはGDDR6という最新のメモリが搭載される予定です。
そしてメモリの性能はゲームの処理はもちろん、マイニングにとっても重要な要素となっています。
より高速でより大量に計算ができればできるほど利益を上げられるのがマイニングなので、マイナーの注目を集めるのは自然なことなのかもしれません。
コードネームは「Turing」
気になる情報としてはGTX1180のコードネームが「Turing」と呼ばれている点です。
恐らく名前の由来はアラン・チューリングという科学者で、彼は戦時中にドイツ海軍で使われていた暗号エニグマを解読したことで知られています。
そして仮想通貨の別名は暗号通貨、やはりマイニング用途を意識させるような要素です。
いずれにしても高性能
マイニングに使われるとしてもその性能が高いことには代わりありません。
むしろマイニングに転用できるほど性能の高いパーツといえるでしょう。
仮想通貨の勢いが販売価格にどう影響を与えるのかは未知数なので、買うタイミングはよく考えておくと良いかもしれません。
もし仮想通貨が低迷を続けるのであればGTX1180への需要は少なく価格が下がっていく可能性もあります。
ただ仮想通貨が勢いを取り戻せばGTX1180への需要は急速に高まり急激な高騰を招くことになるでしょう。
購入予定の方はリリース情報のほかに仮想通貨界隈の盛り上がりについてもチェックしておくことをおすすめします。
まとめ
GTX1180とマイニングの関係などについてみてきました。
仮想通貨とグラフィックボードの関係は深く、搭載予定のメモリやコードネームからGTX1180はマイニングに関連した製品となる可能性も指摘されています。
一体どのような製品になるのか確定的な予測をすることはできませんが、性能が高いことは間違いありません。
これからどういった流れになるのか注目しておきたい製品です。