椅子の坐位姿勢から腰痛とその予防対策を場面ごとに考える
私は病院に勤務する理学療法士です。
近年会社でパソコンを使用してのデスクワークが増加するにつれ、坐位姿勢を長時間とることで腰痛が生じて病院に訪れる患者様を見るケースが多くなっています。
そこで今回、椅子坐位姿勢に関して腰痛となる要因や、腰痛を予防する手段としての運動やアドバイスを簡単にお伝えしたいと思います。
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目次
坐位姿勢の腰部への負担を考える
一般的には、人間の姿勢の中で、腰部への負担を考える時に、直立姿勢での負担を100%とした場合、椅子坐位の姿勢は直立姿勢の1.5倍の負荷が腰部にかかると言われています。
仰向けで寝ている時や、自然に立っている時よりも椅子に座っている姿勢が日常生活上最も腰に負担のかかる姿勢であるということを覚えてください。
また、腰痛になりやすい注意しなければならない動作として長時間にわたって坐位姿勢をとることも良くありません。
背もたれやひじかけがなく、自分の身長にあっていない固定式の椅子を使用することも良いとは言えません。
坐位で良い姿勢を意識することは、慣れればそれほど難しいことではないので習慣化できることを心がけていきたいものです。
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正しい坐位姿勢と不良姿勢
まず何よりも正しい姿勢で座ると、骨と関節のアライメントが整えられて脊椎への負担が軽減されます。
特に長時間座る場合には自分の姿勢を定期的に意識するように心がけたいところです。
椅子に座る時の正しい姿勢のポイントとして、私達は一日の中で座って過ごすことが多いため、腰痛を発症しないためにも普段から正しく座る癖をつけることが大切です。
座ったときは特に猫背になりやすくなります。
猫背姿勢は不良姿勢とも呼ばれ、背部や肩、頚部の筋は疲労しやすくなります。
腰部に負担がかかるだけでなく頚部の負担も増大し緊張型頭痛を引き起こす要因にもなり、前屈した上半身では胸郭や横隔膜などの動きを制限してしまうことで呼吸機能にも悪影響を及ぼしかねません。
鏡での修正や窓越しに自分の姿勢を確認したり、定期的に意識して姿勢を正すようにすると良いと思います。
正しい坐位姿勢の一般的なポイント
正しい姿勢のポイントとしては可能であれば地面に対し垂直な背もたれのある椅子を使用することです。
そして背もたれに背中をしっかりフィットさせることが大切です。
背もたれを基準にし、上から頭部は水平に保つこと、顎も水平に保つことが大切です。
更には肩の力を抜いて、上半身をまっすぐにすること、同時に背部をまっすぐに伸ばして、脊椎の生理的なS字状のカーブを保つように座ることが重要です。
それから下半身はしっかり両足の足底が全て地面につけられる高さで椅子の高さを調整することも大切です。
自宅で椅子に座って過ごすポイント
自宅でリラックスして椅子で過ごす場合には座り心地が良く、姿勢を微調整できるゆとりのある椅子を選ぶことが良いと思います。
腰部や頚部・肩などの筋肉を必要に使わず、緊張させないようにしながら本を読んだり、テレビを鑑賞しながらでも動くことができるような椅子を選べれば良いと思います。
腰部の後ろにクッションを入れることで脊椎の負担をサポートしてくれる方法もあります。
ディスクワークで椅子に座って過ごすポイント
仕事で長時間ディスクワークを行う人やパソコンを操作する業務に従事している人には、腰痛には十分注意し、腰部をサポートしケアしていかなければなりません。
仕事環境を整えて、腰痛予防のための様々な機能を備えた椅子を使用することが望ましいとされます。
高機能なオフィス用の椅子を使用することも重要です。
エルゴノミクスチェアとも呼ばれる高機能オフィス用の椅子では、正しい椅子に座る姿勢をベースに足底全体が地面につけられるように調整でき、かつ前傾姿勢をとった時はバックレストが下方へ傾き、また後方へもたれた時はバックレストが後方に傾き、体全体をリラックスできるよう調整が効くような構造になっています。
座面角度も股関節の高さが膝関節よりもわずかに高い位置にくるようにも調整が行える機能があります。
ランバーサポートやネックサポートがあり、自分にあった位置で調節できる機能も備わっていたり、座面下にガス圧による昇降機能が備わっていれば、椅子に着座する際や立ち上がる際に腰への圧力を軽減できることも魅力です。
キャスターがついていれば様々な方向に簡単に椅子を動かすことができ移動にも楽です。
坐位姿勢以外のディスクワークでの環境調整ポイント
坐位姿勢での作業においては色々な環境調整が有効になるケースもあります。
パソコンを使用する際には、モニターとキーボードが体の正面にくるように配置することも大切です。
また、モニターを目線に合わせ、モニターからは前腕の長さ分の距離をとるなどの調整も重要です。
書類スタンドを使い、目線を落とすことなく作業が行えるようにしたり、ブラインドタッチを心がけたり、マウスを自由に動かせるようにゆとりあるスペースを確保するなど、ちょっとしたことでも長時間の坐位姿勢負担を軽減する事につながります。
オペレーターのような仕事では、パソコン操作をしながら電話対応するケースもあると思います。
この際は受話器を肩と耳に挟み込むような姿勢は肩や頚部だけでなく、腰に捻りが加わる姿勢にもなりかねず避けたい不良姿勢になります。
このようなケースでは電話機でなく、ヘッドセットを使用することで良姿勢を保ちたいところです。
ディスクワークでエルゴノミクスチェアを使用していても、長時間に渡って同じ姿勢をとることはなるべく避けたいところです。
最低でも一時間に一度は休憩がてらに席を外し、リラックスしたり、腰部のストレッチや軽いウォーキングを勧めます。
適度なウォーキングは腰部周囲の筋肉にとっても穏やかな運動となり腰痛予防の運動としても有効です。
最近ではオフィスに休憩中にヨガやピラティスを導入している会社も聞かれますが、適度な日常の定期的な運動は関節や筋肉にとって良い状態を保つ刺激となり、腰背部痛の予防や軽減に効果的でもあると思います。
椅子坐位で行なえる腰痛予防の運動
椅子坐位のまま、脊椎や腰部に刺激を入れることで腰痛予防を行うおすすめの運動も一つ紹介します。
プレスアップという運動がありますが、背筋を伸ばし、まっすぐ前を見た姿勢から、足底をつけて膝を90度曲げるようにしっかり椅子に座り両手で椅子の外側の端をつかみます。
この際に肩と手が一直線上になるようにします。
次に背部の力を抜いてコアマッスルを意識します。
その状態から両手で椅子を下に押します。
ゆっくり深い呼吸を行うことで骨盤が下に下がり背部が伸びていることを感じます。
その状態を数秒間キープしてから体を下ろし、開始位置に戻ります。
この運動をゆっくりと何度か繰り返すことで上背部と腰を自己牽引することによって脊椎を伸ばす簡単なエクササイズが可能で、デスクワークが多い人向けのストレッチ運動にもなります。
坐位姿勢以外で行なえる腰痛予防の運動
仕事場の休憩時に横になれるベッドやスペースがあれば、より腰痛予防に効果的な運動が色々行なえます。
上向きで横になり、丸くなって両手で両膝を抱える運動や、うつ伏せになり、両手のひらを地面につけリラックスしたまま両腕を支えにして腰には力を入れないままゆっくりと体幹を起こしていく運動などは腰周囲筋のストレッチとなります。
更に四つ這い姿勢から背部を丸めて腹部をへこませたり、逆に頭をあげながら背部を反るようにゆっくりと交互に動かすことで、脊椎の動きをスムーズにし、腰背部の筋肉をほぐすための有効なエクササイズにもなります。
これらの運動は腰痛の出現しない範囲で行うことが望まれます。
まとめ
椅子坐位姿勢について、床に横になった状態や立っている姿勢よりも坐位はずっと腰には負担がかかることを念頭に入れてほしいです。
そして、腰痛予防対策として正しい椅子の座り方のポイントや、特にディスクワークでの長時間坐位で過ごされる方向けに腰痛予防となる運動や、効果的なアドバイスについて簡単に記述させていただきました。