ベイトリールのオールドタックル代表格といえばやっぱりダイレクトリール
ベイトリールの中でも20世紀前半頃に使われていたようなオールドタックルのリールを特にダイレクトリールといいます。
性能はもちろん現代の高性能ベイトリールとは比べ物にならないくらい劣るというかシンプルなのですが、今なおそれでもダイレクトリールにこだわる愛用家がたくさんいます。
ここではそんな初期のベイトリールであるダイレクトリールを紹介します。
目次
ダイレクトリールってどんなリール?
リールの種類は大きく分けるとスピニングリールとベイトリール(両軸リール)に分かれますが、ダイレクトリールとはそのベイトリールのうち初期のものを指します。
現代のベイトリールにはご存知の通りどんなに廉価版でも、投げる時にスプールをハンドルから切り離してフリーにするクラッチ、投げている最中にスプールが回転しすぎてバックラッシュするのを防ぐ為の、マグネットや遠心のブレーキシステム、クラッチを繋いで魚をやり取りしている時の大物の魚の引きに合わせて糸を出してラインブレイクを防ぐドラグシステムが備わっています。
これらが付いていないベイトリールがつまりダイレクトリールです。
厳密には、独自のブレーキシステムを備えているものもあったりはするのですが、殆どのこの時期のリールには何も付いていません。
スプールに糸を巻くために糸の通り道が左右に動くレベルワインダーすら付いていない物もあります。
つまり、長い糸をハンドルで巻きつける、ただそれだけの機能を持ったベイトリールです。
ダイレクトリールの構造
現代のベイトリールに備わっている様々なハイテク機能がそもそもその時代に無かったからなのですが、ダイレクトリールはとてもシンプルな構造です。
スプールに巻いてある糸をロッドに通してその先にルアーを結び、投げるとルアーが飛ぶので糸が引っ張られてスプールが回転して飛んでいきます。
着水したらハンドルを巻くと糸が巻き取られてルアーをリトリーブしてアクションさせることが出来ます。
本当にそれだけです。
初心者でもキャストが簡単なスピニングリールがリールの元祖だと思う人も多いかもしれませんが、釣りのリールの歴史の中ではこういったベイトリールのほうが先に開発されたのです。
ダイレクトリールの見分け方
ダイレクトリールはスプールとハンドルが直結していて、クラッチが無いのでキャストするとスプールの回転に合わせてハンドルも一緒にカラカラカラと回ります。
もしかしたらバスフィッシングのトップウォーターの動画などで見たこともあるかもしれませんが、このときのハンドルがクルクルまわるのとその音がダイレクトリールの最大の特徴と言えるでしょう。
もっともそれ以上にこれらのリールそのものが非常に古いので丸型のレトロな外観とチープなハンドルの形をしている類の古めかしいベイトリールはダイレクトリールだと思って間違いありません。
ダイレクトリールの投げ方
まずキャスト方法ですが、現代のベイトリールと同じと言えば同じですが、ブレーキシステムが付いていないのでキャストする側の右手親指での精密なサミングが必須です。
現代の感覚で鋭くキャストして初速を稼いだ場合、着水前の失速に耐えられず盛大にバックラッシュしますので、「シュッ」とロッドを振りぬくのではなくふわっと放り投げるようなキャストを心がけましょう。
イメージとしては野球のピッチャーが投げる速球ではなく、キャッチャーが投げ返すボールです。
ダイレクトリールでのやりとり
次にリトリーブから魚とのやりとりです。
ダイレクトリールは古いのでほとんど右ハンドルしかありませんので右手でキャストしたら左手に持ち替えてパーミングして右手でハンドルを回します。
リトリーブ中は、左手の親指でいつでも即座にスプールを押さえられるような握り方をしてください。
というのは、ダイレクトリールのハンドルはどちらの方向にも常に自由に回転する構造なので、魚がかかった状態でうっかり右手のハンドルを離してしまうと糸の負荷がゼロになって無限に出て行ってしまいます。
なので、アワセる時に糸をロックする、魚の引きに対応する時に指にドラグの役割を与えるために左手親指が超重要になります。
シンプルゆえに、魚を掛けた時の感触がハンドルの巻き抵抗や、スプールを押さえる左手親指の摩擦となって伝わってきます。
それが、愛好者を生む最大の魅力でしょう。
ダイレクトリールのタックル
ダイレクトリールを使うときのタックルはもちろん普段使っているタックルの現代のベイトリールを付け替えるだけでも全く問題ないのですが、趣の面でやっぱりオールドタックルで取り揃えたくなりますし、そのほうが雰囲気に浸れるのでおすすめです。
ダイレクトリールが主流だった時代の20世紀前半のアメリカの釣りを再現しようとなると、自然にバスフィッシングのトップウォーターゲームがマッチします。
古いロッドに別付けのガングリップ、太いPEラインの先にウッドのトップウォータールアーを結んでキャストすれば気分は初期のバスアングラーです。
ダイレクトリールとトップウォーターゲーム
これらのセッティングは趣があるだけではなく理にもかなっています。
ダイレクトリールは丸型なので、現代のロープロファイルのベイトリール対応のティップからグリップエンドまで一直線のロッドに取り付けるとリール部分がどうしても上に飛び出した形になり、重心がぶれてしまうので、グリップ部分にリールを取り付ける凹みがあるガングリップが有利になります。
太いPEラインは大昔の釣り糸に見た目がマッチするというだけでなく、このような繊細なサミングが必要なリールにナイロンやフロロといったコシのあるモノフィラメントのコシがあるラインを巻くとリールからもわっと膨らんでしまってライン噛みが起こったり付き物のバックラッシュをしたときの修復が不可能になってしまうからです。
細いPEも噛んでしまいやすいので結局4~6号といった極太のPEラインを使用するのが無難になります。
そして水に浮いて伸びが無いのでキビキビアクションさせやすいPEラインに相性がいいルアーとなると結局トップウォーターというわけです。
ダイレクトリールのメンテナンス
構造がシンプルなので現代のベイトリールと比べるとメンテナンスが非常に楽です。
磨耗を防ぐ部分にグリス、回転のすべりを良くしたいスプール周りだけオイルという基本を学ぶ上でこんなに便利なリールはありません。
中古で古いものを購入する場合も、とんでもなく古いグリスが固着している可能性がありバラして洗浄することもありますがなにしろ部品数が少ないので比較的楽に手入れができます。
ただ、気をつけなければいけないのは製造中止モデルが殆どなので替えのパーツが手に入らないケースが多いことです。
それ対策として同モデルのジャンクを複数所有する愛好かも多いです。
また、見落としがちですがダイレクトリールにとってハンドルはキャスト性能を左右する重要パーツです。
チープで小さいハンドルばかりが付いているのは、キャスト時にスプールと一緒に回転するため、あまり重くてごついものを付けると飛距離が出ないという理由があります。
ハンドルがチープだからと言って堅牢なものに付け替えた途端全然飛ばなくなる可能性もありますのでハンドル交換の際はダイレクトリール用のものにしましょう。
まとめ
このように、シンプルゆえに扱い方の違いもある変り種のベイトリールがダイレクトリールということになりますが、あえてこの引き算の釣りをすることで普段と同じフィールドで同じサイズの魚を釣っても全然違った楽しみを得ることができます。
そして、現代のハイテク機能を敢えて使わないで釣りをすることでベイトリールの仕組みをより理解したり、サミングや魚とのやり取りをより深く理解したりすることが出来ます。
安いものだと数千円で手に入る見た目もかっこいいオールドタイプのベイトリール、つまりダイレクトリールをあなたも手にしてみてはいかがでしょうか。