グラボの簡易水冷化キットを使う時に気を付けておきたい事とは?
グラボのクーラーが壊れたから、グラボのファンがうるさいなど様々な理由でグラボを簡易水冷化したい、と考えたことがある人も居るのではないでしょうか。
最近は水冷化用のキットなどもかなり充実しているため、比較的簡単に出来るようになりました。
実際には簡易水冷化することでどういった点が変化するのか、取り付け時に用意しておいた方が良いものなどについてまとめました。
目次
簡易水冷化すれば冷える訳ではない
水冷化する時に多いのが「ものすごい冷えるのでは?」という良く解らない期待をしてしまう事です。
水冷式の特徴として「温度が上がりにくくなる」という特徴があるため、最大負荷時に80度を超えるような環境の場合には水冷化する事で大きな効果が実感できますが、最大で50~60度程度までしか上がらない環境の場合には大きな変化を実感できる事はありません。
そのため、一概に「ものすごく冷える!」という期待をしていると肩透かしを食らう可能性があります。
ですが、水冷そのものは空冷と比べて熱交換の効率がものすごく良いため、空冷よりも室温に影響されにくいという特徴があります。
そのため、24時間常に稼働しているPCを使う場合、特に夏場に動作させる上では比較的安全に使う事が出来る(仮にエアコン等が停止・故障しても動作し続けられる可能性が高い)というメリットがあります。
稼働時間が長く途中でPCを確認することが場合には、仮に温度が高くならない環境であっても安全策として導入してみるのもおすすめです。
グラボの簡易水冷化は結構コストが嵩む?
グラボの簡易水冷化は、CPUを簡易水冷にするよりもコストがかかると思った方が良いです。
大きな理由として、グラボを簡易水冷化する場合はCPU用の簡易水冷クーラーをアダプターを使って取り付ける事が一般的になっているため、どうしてもクーラー以外の部分でコストがかかってしまうためです。
また、クーラー自体も安い物は5,000円程度からありますが、グラボにも使えるようなものは安い物でも8,000円くらいからになるため、単純にCPUに取り付けるよりもコストがかかります。
と言っても、しっかりと自分で長さを測ってチューブを切り、実際に流すためにテストが必要となる本格水冷と比べるとはるかに安く、確実に水冷化出来るのも事実です。
簡易水冷の耐久年数はどのくらい?
簡易水冷を導入する上で面倒なポイントとして「寿命が解りづらい」というポイントがあります。
特に分かりづらいのはクーラントと呼ばれる冷媒の残量が解りづらい点です。
本格水冷の場合にはクーラントを入れるリザーバーや各デバイスを繋ぐパイプを透明なものにする事で流入状態や残量を一目で把握できるようにすることが出来ますが、簡易水冷用のクーラーの場合、多くは真っ黒なチューブを使用しているため、外見からでは残量などが分からなくなっています。
そのため、常にとまではいかなくて各動作時にどれくらいの温度になるのかについて把握しておき、その値から極端に離れた時は新しいものに交換するかクーラーをバラして冷媒を補充・交換する、という作業が必要になります。
ちなみに、簡易水冷用のクーラーの寿命としては、PCの実稼働時間にもよるものの短いものでは2年、長いものでは5年程度使えるのが一般的です。
水冷化時の注意点
実際に水冷化する時の注意点として、挙げられるのは次のようなものがあります。
- 購入前に予め対応モデルなどについて把握しておく
- 分解時に基盤を傷付けないようにする
- サーマルグリスをふき取って塗り直す準備をしておく
- 元から付いている空冷式クーラーを捨てない事
等があります。
特に、購入前に水冷クーラーやアダプターが自分のグラボに対応したモデルかどうかよく確認するようにしましょう。
アダプターはグラボに対応しているけど、クーラーとアダプターの互換性が無い、なんてことも考えられるので事前の確認は必須です。
また、オリジナルモデルの中には基盤の形状が異なるものがあるため、そういったモノの場合にはそもそも取り付けられない可能性があります。
水冷化時に事前に準備しておいた方が良いものは「プラスのドライバー」「グリス」「無水エタノール(もしくはエレクトリニッククリーナーなど)」「ティッシュ(キムワイプでも可)」などを用意しておくとスムーズに作業を進められるためおすすめです。
ドライバーを使う時は要注意?
グラボを簡易水冷化する際に避けられないのが、グラボのクーラーを外す工程です。
この工程を行った時点で分解したのと同じ扱いになるため、メーカーサポートを受けることが出来なくなるため注意が必要です。
この際、サイズの合ったプラスのドライバーを使い、基盤を思い切り突いたりしないようにしましょう。
最悪そのグラボが使えなくなることもあるため注意しましょう。
仮にネジが硬かったとしても電動式のドライバーやインパクトドライバのようなものは高確率でグラボそのものが破損するため、絶対に使わないようにしましょう。
ドライバーの取り扱いミスによるトラブルは、特にヒートシンクの取り外し~水冷用のアダプターを取り付ける工程では頻繁に基板上でドライバーを回す必要があるため慎重に作業を進めましょう。
ネジを絞めるときは力を入れ過ぎないように
水冷用のアダプターをグラボに固定する時などにもネジを締める固定しますが、締めすぎには注意が必要です。
ネジを締めすぎると余計な力が加わるためグラボが歪み、故障や動作不良の原因になります。
ネジを締めていると、途中で手ごたえが変わる所があるため、そこまで来たらそれ以上ネジを締めるのをやめましょう。
また、ネジを締めても部品がガタつく、やけに浮いている、という場合にはネジではなく部品の取り付け方自体を間違えている可能性が高いです。
取り付け方をよく見ておかしな点が無いかチェックしてみましょう。
グラボの簡易水冷化におすすめ「NZXT Kraken G12」
グラボの簡易水冷化をする場合におすすめなのが、NZXTから出ている「Kraken G12」です。
この製品は「CPU用のクーラーをグラボに取り付けるためのアダプター」のようなものです。
かなり簡単に取り付ける事が出来るため、簡易水冷化するのであれば対応するクーラーと一緒に購入するのがおすすめです。
対応しているグラボの種類が非常に多く、これ1つでGeForceのGTX1080~1060からRadeonのRX480や470をはじめとして、かなりの種類のグラボに取り付けることが出来ます。
この手の製品はリファレンスモデルのみ対応している事が多いですが、本製品では一部のオリジナルモデルにも対応しているのも特徴です。
搭載可能な水冷クーラーは同NZXT製のクーラー以外にも、Corsair、Thermaltake、Antec、Zalmanなどの簡易水冷クーラーも一部が使用可能です。
この製品に限らず、簡易水冷クーラーを販売しているメーカーはGPUに取り付けるための製品を作っているところが多いため確認してみるのがおすすめです。
グラボの簡易水冷化におすすめ「NZXT Kraken X31」
グラボを簡易水冷化するのに必須なのが、冷媒を冷やすラジエーターやポンプなどをまとめたクーラー部分です。
本製品は、上記の「Kraken G12」に対応した水冷用クーラーの1つで120mmのラジエーターを使用したモデルです。
ラジエーターのサイズが他の製品よりも小さいため冷え方は若干劣りますが、その分120mmということでケースファンと同サイズになっています。
ケース内を圧迫し辛く冷却性能はそれなりなため、冷却性能重視というよりは交換用や本来のGPUクーラーのファンよりも低速で回せる環境にして音を小さくする目的などに向いています。
冷却性能重視の場合には、140mmや280mmといったラジエーターを使用したモデルがあるため、そちらを検討してみるのもおすすめです(もちろん上記アダプターにも対応しているモデルがあります)。
まとめ
正直な所、最近のグラボは簡易水冷にする必要がないものが大半です。
4K画質でゲームをするとか、VRコンテンツを最高の環境で楽しみたいという場合を除けば無用の長物になる可能性のほうが高いです。
コストや取り付けの手間、クーラントの漏出などのトラブルも多いため、一概に「おすすめ!」とは言えないのが現状です。
ですが、高負荷時の冷え方は段違いに良いので、グラボの熱に困っているという人や、これからの時期に長い時間PCを稼働させたいという人は一度検討してみるのもおすすめです。