ゲーム以外にも使える!?グラボの新たな使い道とは?
グラボの使い道と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、グラフィックの名の通り「ゲームや動画の映像をモニターに出力する」ということです。
しかし、近年それとは異なる分野でのグラフィクボードが使用される場面が増えてきています。
それは「人工知能」と「仮想通貨」です。
一見グラフィックとは関係がない分野と思われるかもしれませんが、この2つの分野の発展にはグラフィックボードが大きな役割を果たしているのです。
目次
そもそも人工知能とはなんなのか?
最近、テレビのニュースや様々な場面で「人工知能」や「AI」という言葉を耳にすることが増えてきています。
よく耳にするようになった人工知能ですが、実際に「人工知能がどんなものなのか」や「どういう仕組みなのか」、「どんなことに役立つのか」といったことがあまり理解できていない方も多くいらっしゃると思います。
そこで人工知能分野でのグラフィックボードの活用をお話する前に簡単に人工知能についてお話しておきたいと思います。
人型ロボット=人工知能研究ではない
人工知能と聞くとSF映画などに出てくる「人間のように振る舞うロボット」をイメージする方も多くいらっしゃると思いますが、実は人工知能の研究といっても,人間のような機械を作っているわけではありません。
人工知能研究には大きく2つに別けることができます。
1つは「人間の知能そのものをもつ機械を作る研究」、もう一つが「人間が知能を使ってすることを機械にさせようとする研究」です。
実際には、現在は後者の研究が主に行われています。
人にとって簡単なことほど人工知能には難しい
テレビなどでAIが紹介されるときには「人工知能は人間をはるかに超えた知能を持っている」と言われます。
確かにチェスや囲碁、将棋などでAIが勝利したりすることが増えているのでそう感じるかもしれませんが、現在の人工知能にはできないことが山ほどあります。
人工知能研究では「人間には難しいことほど人工知能にとっては簡単」で「人間にとって簡単なことほど人工知能にとっては難しい」と言われています。
チェスや囲碁、将棋で必要なのは、何百、何千とある手の中から最適な1手を見つけ出すことです。
それは人間にとってはとても難しいことですが、膨大なデータを一瞬で処理することができる人工知能にとっては比較的簡単なことなのです。
逆に「写真中に写っている動物を答える」といった子どもでもできることほど人工知能にとっては難しいのです。
人間の脳はコンピューターで再現できる
人工知能研究の最大の目的は、「コンピューターで人間の脳を再現する」ということです。
人間の脳は実は電気回路を同じような仕組みでできていると言われています。
千数百億個という膨大な数のニューロンという神経細胞間が電気信号を発することで情報のやりとりをしています。
「電気回路ならばコンピューターで再現できる」というのが人工知能研究の始まりです。
電気信号は数式に置き換えることができ、数式はコンピューターのプログラムで再現することができます。
つまり、「人間の脳はプログラムで再現できる」というのが人工知能研究者の考えなのです。
ただし、脳には「意識」や「感情」など現代医学を持ってしても解明されていないことが多くあります。
人工知能には超強力なコンピューターパワーが必要
人工知能は近年突然出てきた技術ではありません。
人工知能研究が始まったのは今から60年近くも前の1950年代です。
実は現在の人工知能で使われている色々な技術はその頃に開発されたものが多く使われています。
「ではなぜ60年も経ってやっと研究が進んできたのか?」という疑問をお持ちの方もいると思いますが、その一番理由はコンピューターの進化にあります。
先ほどお話したように人工知能は、「人間脳で起きていることを数式に置き換えてそれを計算する」ことが必要です。
その計算には強力なリソースをもったコンピューターが必要になります。
もちろん60年前にそんなものはありません。
コンピューターの技術が発展しより安価に使えるようになったことで人工知能が一気に発展したのです。
人工知能研究に大きな発展をもたらせたグラフィックボード
さて前置きが長くなってしまいましたが、本題の人工知能とグラボの関係についてお話したいと思います。
人工知能には膨大な量の計算が必要でそのためには強力なコンピューターリソースが必要とお話しました。
そのコンピューターリソースとしてもっとも適しているのが「グラフィックボードのGPU」なのです。
GPUとは「Graphics Processing Unit」の略で本来は「コンピューターが画面に表示する映像を描画するための処理を行う」ためのリソースです。
それがなぜ人工知能に向いているかというと、「GPUは大量の計算を並列に行うことが得意」だからです。
少し難しい話になってしまいますが、例えば3Dゲームの画面を映像として描画するためには、モニターのどの画素をどれくらい光らせればいいかということを計算しなければいけません。
さらにその計算を並列に大量に行う必要がありGPUにはそのための技術が詰め込まれているのです。
そのGPUを人工知能の計算処理に用いることで高速に処理ができるようになり人工知能が飛躍的に発展しました。
一番はじめに用いられたGPUは「GTX580」というコンシューマー向けのゲーム用グラフィックボードでした。
これを用いたことで処理時間をそれまでとは大幅に短縮することができるようになりました。
現在では人工知能にグラフィックボードの計算能力を生かすことはほぼ当たり前のこととして行われています。
ついにNVIDIAも本腰を入れだした
グラフィックボードは現在「NVIDIA」と「AMD」2社独占となっています。
その中でもNVIDIAは近年人工知能分野に力を入れています。
これまでNVIDIAというと「ゲーム用グラボの会社」というイメージだった方もいると思いますが、人工知能開発に特化したGPUの開発や、自動運転車の研究加速に向けた提携などを行なっており、NVIDIA自身も「NVIDIAはAI コンピューティング カンパニーになる」としています。
人工知能は個人でも作れる
テレビなどで紹介される人工知能は、大きな企業や大学の研究室が作ったものが大半のためとても難しい技術だと思われるかもしれません。
確かに、人工知能を作るには数学的な知識やコンピュータープログラミングの知識など幅広いものが必要です。
しかし、実際に人工知能を作る際にはTensorflowやChainerと言った「フレームワーク」というものが用いられています。
これらは一般にも公開されていますのでそれを使って人工知能を個人で作ることももちろん可能です。
そのためには、ある程度スペックの高いPCやミドルエンド以上のグラフィックボードなどが必要となってきます。
もちろんグラボのスペックは高ければ高いほどいいですが、おすすめとしてはGTX1060やGTX1080などです。
AMD社のグラフィックボードは現時点では人工知能開発には使うことができませんのでご注意ください「人工知能を作ってみる」ということ自体はそれほど難しいことではありません。
一度チャレンジしてみると色々な発見があって面白いと思います。
まとめ
これまでのグラボの使い道はゲームなどが主でした。
ただグラボには大量の計算を高速にこなすための技術がたくさん使われています。
この技術はこれから様々な分野に使われるようになっていくはずです。
「グラフィックボードを買ってはみたけどゲーム以外に使い道がない..,」と思っている方もいらっしゃると思います。
今回ご紹介した人工知能の分野はこれから必ず社会の色々なところで使われるようになり、おそらく数年後、数十年後にはなくてはならないものになっています。
ぜひ一度人工知能開発に触れてみてください。