トレッキングシューズにはどんなメーカー、どんな製品があるのかを知りたい!
トレッキングシューズを含めて、登山靴はメーカーで選ぶものではありません。
ファッション性やデザインよりも、自分が目指す登山の目的と、自分の足、そして登山技量に合ったシューズ選びが大切です。
しかし、トレッキングシューズを実際に買う場合、市販されているものの中から買うわけですから、どのようなメーカーがどのようなシューズを市場に出しているのか、知っておくことは役に立つ筈です。
そこで、よく名前を聞くメーカー7社を選んで、その製品を、ごく一部ですが取り上げて見ることにします。
目次
北イタリアのドロミテで1928年創業の、スポルティバ
スポルティバは、1928年にイタリア北東部の山岳地帯、ドロミテで創業のメーカーです。
元々、農林業者向けにブーツや木靴を製造していました。
第二次世界大戦中、兵士用に登山靴を提供するようになります。
1950年代になり、スキー靴の製造も開始し、ラ・スポルティバというブランド名を採用するようになりました。
現在、シューズ製品はマウンテン、クライミング、トレイル・ランニングという三つのカテゴリーに分かれています。
更に、マウンテンのカテゴリーの中も、マウンテン、トレッキング、ULハイキング、アプローチの四つのサブカテゴリーに分かれています。
トランゴTRK GORE-TEX®
サブカテゴリーとしてはトレッキングですが、スポルティバの表現によれば、ハイキングやバックパッキングに最適な超軽量マウンテンブーツとなっています。
アッパーは、高強度ファブリックにサーモテックアプリケーションという新テクノロジーを応用したことにより、薄くて軽量にも拘わらず防水性、保護性に優れたものとなっています。
ライニングは、通気性、防水性共に優れたゴアテックスを内蔵しています。
つま先と踵を覆うラバーは、耐摩耗性、防御力共に優れたものを使用しています。
3Dフレックスシステムを採用しているので、足首は可動性を確保したまま十分に保護されています。
サイズはEU表記の37~48、つまり23.7cm~30.3cmから選べます。
ウーマンバージョンもあり、サイズはEU表記の36~43、つまり23.1cm~27.3cmから選べるようになっています。
重量は、1/2ペアが男性用は約580g、ウーマンバージョンは約500gです。
トランゴ トレック マイクロ エボ GORE-TEX®
トレッキングブーツの基本形という位置付けで、トランゴシリーズの基本機能である優れたフィット性、3Dフレックスシステムをしっかり継承しています。
足を包み込む素材がしなやかなので、履き心地はローカットシューズを思わせる程、足の自由な動きを可能にしています。
ビブラムのソールを採用しているので衝撃をよく吸収し、グリップ性も優れています。
長距離の歩行でも疲れを最小限に抑えてくれます。
アッパー素材は2mm厚のスエードレザーとなっています。
ライニングはゴアテックス・パフォーマンスコンフォートです。
サイズはEU表記の36~48、つまり23.1cm~30.3cmから選べます。
ウーマンバージョンもあり、サイズはEU表記の36~43、つまり23.1cm~27.3cmから選べるようになっています。
重量は、1/2ペアが男性用は約650g、ウーマンバージョンは約575gです。
大阪発、機能美を追究するモンベル
辰野勇代表が1975年に大阪市に創業した、登山用品メーカーです。
辰野は大阪府堺市に生まれ、自身も1969年にアイガー北壁日本人第二登を果たし、日本のトップクライマーとなりました。
1970年には、日本初となるクライミングスクールも開校しています。
辰野は登山以外にもカヌーやカヤックでも選手として活躍したり、競技大会を企画するなどして、株式会社モンベルもアウトドアを広く扱う会社となっています。
大きく分けて、クロージングとギアとを取り扱い、ギアの中のフットウェアにおいて、登山靴としてアルパイン用、トレッキング用、ハイキング用の製品を取り揃えています。
ツオロミーブーツ
ハイカットの全天候型のブーツで、夏場の長期縦走にもおすすめのシューズです。
横ぶれはしっかり防ぎながら、前方向への屈曲運動は妨げないパターンなので、安定感と運動性が両立しています。
アッパーは、ポリエステルニットにより透湿性に優れています。
部分的には、剛性の高い2.2mm厚のヌバックレザーと合成皮革による補強があります。
樹脂製のシャンクプレートが挿入されているので、その剛性により、ねじれを防いでくれます。
アウトソールにはトレールグリッパー®が採用されており、濡れた岩肌や木道でもグリップ力抜群です。
靴紐を引くだけで下部から上部まで均等に締まるイージーフィットシステムを採用しているので、僅かな力でも良好なホールド感が得られます。
サイズは、Men’sの場合は24.0から0.5刻みで30.0まで、Women’sの場合は22.0から0.5刻みで26.0まであります。
重量は、Men’sの場合は25.5cmの場合が片足で720g、Women’sの場合は23.5cmの場合が片足で650gです。
ラップランドブーツ
日帰りハイキングから富士登山まで履ける全天候型ブーツです。
軽量で、柔らかい履き心地ですが、フィット感も優れています。
踵と土踏まずのホールド性に優れたラストを採用しています。
アッパーには、防水透湿性が抜群のゴアテックス®ファブリクスを採用しています。
ガレ場や砂地にも対応できるよう、サイドにスエードレザーでの補強があるので、耐久性も十分です。
剛性のある樹脂製シャンクプレートが挿入されているので、ねじれを防いでくれます。
アウトソールにはトレールグリッパー®が採用されており、濡れた岩肌や木道でもグリップ力抜群です。
サイズは、Men’sの場合は24.0から0.5刻みで29.0まで、Women’sの場合は22.0から0.5刻みで26.0まであります。
重量は、Men’sの場合は25.5cmの場合が片足で424g、Women’sの場合は23.5cmの場合が片足で375gです。
1929年創業の、登山靴専門のイタリアブランド、ザンバラン
イタリア北東部の山岳地帯、ドロミテでジュゼッペ・ザンバランが1929年に創業したメーカーです。
元々、自分自身や登山仲間の履く靴をもっと良い物にしたい、というのが動機でした。
それまでのソールは、革靴に鉄の鋲を打ったもので、ジュゼッペたちはそのパフォーマンスに不満を感じていたのでした。
ソールをゴム製にすればよいのでは、というアイデアの実現に向けて、ヴィターレ・ブラマーニ(Vitale Bramani)と共同で靴作りに取り掛かりました。
このブラマーニこそは、Vibram®(ビブラム)の創始者となる人でした。
シューズのカテゴリーとしては、最もハイエンドのハイ・アルティテュード&アイスクライミングからハイキング&アプローチまで、幅広く取り揃えています。
シェルパ・プロGT
ザンバランには、つりこみ工程という独特の工程があり、それによりソールから側面にかけてトスカーナ産の堅牢なレザーを作りこんでいます。
これが卓越したフィット感を生むのです。
アッパーは、2.0mm~1.8mmのスプリットレザーです。
これは、イタリア・南チロル産のペルワンガー・スエードレザーで、しなやかで、加工のし易いレザーです。
キズが目立ちにくいというメリットがあります。
踵の内部のパットは厚めになっていて、高いホールド感を実現しています。
ソールは、ビブラムStar Liteです。
サイズは、メンズがEU表記で40~46(約25~28cm) 、ウィメンズがEU表記で36~41(約23~25.5cm)です。
重量は、メンズがEU42片足で690g、ウィメンズがEU38片足で590gです。
日本山岳会のマナスル初登頂に原点がある、キャラバンのシューズ
1956年5月9日は、日本山岳会隊がヒマラヤの巨峰・マナスル(8163m)に初登頂した、輝かしい日です。
その時にベースキャンプまでのアプローチ用に使われた登山靴が、キャラバンのシューズの原点となっているのです。
それ以来、軽さ、履きやすさ、歩きやすさを追究し、進化を続けているのです。
富士山や低い山への登山、屋久島トレッキングなどで要求される機能を備えると共に、登山初心者にも優しい履き心地を追究しているメーカーです。
アウトドア用品、スキー用品全般も取り扱っていますが、シューズ類だけでもトレッキングシューズをはじめ、スノーシューズやクライミングシューズ、沢登りシューズを取り扱っています。
C1_02S
登山入門者が履きやすいように設計された、キャラバンシューズの代表的モデルが、C1_02Sです。
履き口まわりに柔らかい生地とクッション材を使用しているので、足首を優しくホールドしてくれます。
指先まわりはゆとりを持たせてありますが、つま先部分にはTPU樹脂カップを採用し、指先を保護してくれます。
ソールは、悪路でもグリップ力抜群のキャラバントレックソールです。
EVAインソールによるクッションシステムが、着地の時の衝撃を吸収してくれるので、歩き疲れを緩和し、富士登山、尾瀬や屋久島のトレッキングといった用途におすすめのシューズとなっています。
サイズは、カラーにもよりますが、大体22.5~30.0cmとなっています。
重量は、26.0cm片足で約590gです。
19世紀にロープのメーカーとしてスイスで創業、マムート
国土のほとんどが山岳地帯とも言えるスイス発のメーカー、マムートですが、1862年にハンドメイドのロープを製造するメーカーとしてスタートしました。
現在、品揃えとしてはジャケット、シャツ、下着といったアパレル、グローブやヘッドギアといったアクセサリー、そして本業のロープやバックパック、ヘッドランプといったエクイップメントと並び、フットウェアを取り扱っています。
そのフットウェアの中で更に、マウンテニアリングシューズ、ハイキングシューズ、アプローチシューズを取り扱っています。
T AENERGY GTX®
マムートで定評のあるTeton GTX®モデルを更に進化させたモデルです。
ハイテク素材を駆使することで、軽量化をはかりながら耐久性を向上させることに成功しています。
定評のあるフィット感も健在です。
マムート独自のソールコンセプトが足を最適にサポートしてくれるので、足が疲れてもつれてしまうリスクを大いに緩和します。
クッション性にも優れたソールです。
パットにより、踵や甲周りなどのフィットを最適化しています。
トウキャップはラバー製となっています。
ビブラムのスケールソールの鱗状の突起は、どんな地形でも最適なグリップ力を発揮できるように配置されています。
インナーは柔軟素材、アウターはタフな素材を組み合わせることにより、履き心地を最適にしています。
軽量EVA素材を採用し、放湿性に優れています。
サイズは、MENがEU39 1/3~49 1/3まで、つまり24.5~32.0cm 、WOMENがEU36~43 1/3まで、つまり22.0~27.5cmとなっています。
重量は、MENが27.0cm片足で608g 、WOMENが24.0cm片足で517gです。
日本人の足に合うシューズにこだわるシリオ
日本人の足型がシリオの原点、と言い切っているだけあり、日本人の登山者のことを徹底的に考え抜いた製品づくりをしているメーカーです。
欧米人とは異なる履物文化が伝統的に続いてきた日本では、足型も扁平足が多く、甲高段広が多くなっていることに着目しています。
足の長さと幅の比率も、欧米人では10対3が主流なのに対し、日本人の過半数が10対4だとのことです。
その為、シリオではこの10:4の足型を基準にしてラインナップを構成しているのです。
シューズのカテゴリーとしては、ウォーキングシューズ、ライトトレッキングシューズ、トレッキングシューズ、マウンテニアリングシューズを取り扱っています。
6SERIES – 611-GTX
6SERIESは、シリオ製品の中でもフラッグシップモデル的存在です。
不整地や登山道のトレッキングにおすすめのシューズです。
足首のホールド感が自然で、長距離の歩行でも足に負担が掛からないシューズです。
地面もしっかりグリップしてくれます。
2.5mm厚のヌバックレザーを採用しているので、耐久性も優れています。
ソールはシリオ・ビブラム®で、ソールスタンスは5cmです。
プラスティックハードのシャンクが挿入されています。
重量は、26.0cm片足で約880gです。
登山家の評価が高い職人技のイタリアメーカー、スカルパ
イタリア語で「靴」の意味のスカルパを称するメーカーです。
北イタリアのアゾロ村で創業、登山家向けだけではなく、林業従事者や、山岳歩兵向けの靴を手掛けていました。
徹底した職人気質で、例えばレザーの元となる動物の産地や飼育過程も品質管理まで行っている程です。
冬山用からアプローチシューズまで、いずれも堅牢さに定評があります。
カテゴリーは、マウンテン、トレッキング、ライトトレックに分かれています。
キネシスMF
軽快でフレキシブルな歩行性能を備えたシューズです。
工夫されたラストによりフィット感に優れ、最適な履き心地を提供してくれます。
アッパー素材は、しなやかな人工皮革マイクロファイバーです。
レースフックは金属製で、調整し易くなっています。
EVAクッションにより、軽快な歩行を実現しています。
ソールは、ビブラム・ピューマです。
ライニングには、ゴアテックス®を採用しています。
サイズは24.9cm~30.3cmまでとなっています。
重量は、26.7cm片足で670gとなっています。
まだまだ広がるトレッキングシューズの選択肢
ここまで7社のメーカーを紹介してきました。
いずれも、ここに紹介した製品以外にも、他にいくつものトレッキングシューズを品揃えの中に持っています。
また、ここに紹介した7社以外にも、例えばサロモン、コロンビア、キーン、ノースフェイス、メレルといった、数々のトレッキングシューズ・メーカーがあります。
選ぶ際には、最初から決め込むのではなく、多彩な可能性の中から自分の目指す登山に一番フィットするトレッキングシューズをじっくり選びたいものです。
まとめ
トレッキングシューズは、様々なメーカーが、それぞれいくつもの製品をラインナップに持っています。
山岳地帯で登山靴作りの職人技が培われてきた伝統のあるイタリアのメーカー数社をはじめ、日本でも名クライマーが創業したメーカーもあります。
ここに紹介できたのは、そのほんのごく一部に過ぎませんが、トレッキングシューズのバラエティーの多彩さを知る助けとして役立てば幸いです。