大切な足を守ってくれるトレッキングシューズ、履き方にもこだわりを!
トレッキングシューズは、製品選びにも気を遣いたいですが、履き方にも同じくらい気を遣いたいものです。
履き方次第で、折角トップクォリティーのブランド製品でも履き心地に違和感を覚えることになってしまうのです。
足を守ってくれる筈のトレッキングシューズも、履き方が正しくないと、例えばつま先を痛めてしまうようなことにもなりかねないのです。
では、履き方ではどんな点に具体的に注意すればよいのか、これから見ていくことにしましょう。
目次
まずは靴下
登山靴を履く場合は、まず登山用の靴下を履いて、その上に登山靴を履くものです。
トレッキングシューズの場合も同じです。
まずはソックスを履き、その足でシューズを履くことになります。
トレッキングシューズは、日常用の靴よりもサイズが0.5~1cm大きいものを選ぶのが普通です。
トレッキング用のソックスも、厚手のものとなります。
トレッキングに一度出てしまうと、例えば往復で10時間以上歩くこともあります。
出発の時にはシューズと足とがぴったり合っていても、行程の途中でシューズと足との間に隙間ができていくことがよくあります。
そんな時、厚手のソックスが隙間を埋めるバッファの役を果たしてくれるのです。
ソックスがそのような緩衝材として正しく機能する為にも、まずはソックスもシューズの時と同じくらい気を遣って選びたいものです。
クッション性の優れたソックスがおすすめです。
隙間を埋める機能を果たすことが期待されるソックスは、厚さが1mm違うだけで、シューズの履き心地に大きく影響します。
つまり、足のフィット感はシューズだけでは決まらず、ソックス次第と言ってもいい程なのです。
登山靴の専門店では、トレッキングシューズ用のソックスも置いているので、おすすめのソックスを紹介してもらうと良いでしょう。
ソックスにも勿論サイズがありますし、厚さの違い、そして長さの違いもあります。
特にシューズがハイカットの場合、シューズの履き口の高さの足の部分がしっかりソックスで包まれているように、長めのソックスを選ぶのがおすすめです。
そうすることで、シューズの履き口で足がこすれるのを防ぐことができます。
ソックスに左右があるのであれば、それをちゃんと守って履くようにします。
勿論、ソックスの踵やつま先の位置がズレないように履き、シワがよらないように履きます。
これで、いよいよトレッキングシューズに入れる足の準備ができたことになるのです。
足を入れて、踵側に隙間ができないように目一杯寄せる
厚手の靴下を正しく履いた足を、トレッキングシューズに入れます。
シューズの紐は、足が入り易いように、緩めておきます。
足がシューズに入ったら、お決まりの「踵をトントン」を行います。
つまり、シューズを履いた足の踵の部分を床面または地面にトントンと数回打ち付けるようにするのです。
その目的は、踵の部分で足とシューズとの間がぴったりくっつくようにすることです。
踵部分で、足とシューズとの間に隙間が残らないようにするのです。
踵と反対側のつま先は、指5本とも自由に動かせるだけのスペースが残っていることが大切です。
そのことを確認する為に、逆に「つま先側をトントン」する方法もあります。
つまり、紐が緩んだ状態のシューズに足を入れたところで、まずつま先側で足とシューズとがぴったりくっつくようにします。
その時、逆に踵側は隙間ができている筈で、手の中指1本が入るくらい、1程の隙間があれば、大丈夫です。
つま先側の隙間は目で見て寸法確認する方法がありませんが、一度足をつま先側に寄せて、踵側に隙間を作ることで、隙間の寸法を目や指で確認できるわけです。
この時、踵側に隙間ができないようであれば、そのシューズは寸法が小さ過ぎることになります。
踵側は足とシューズとの間に隙間がないことが望ましいのですが、つま先側は足指が動く隙間が必要なのです。
足のつま先をシューズのつま先側に目一杯寄せた時、踵側に隙間ができないのであれば、踵側だけではなくつま先側にも隙間がないことになります。
下山の時、つま先の爪が靴の中で当たり、黒くなってしまう結果となるのです。
それを防ぐ為に、つま先の隙間は絶対必要というわけです。
「つま先側のトントン」で踵側に隙間が出来ることを確認できたら、ここで「踵をトントン」して、踵側の足とシューズとの間の隙間を完全になくすようにします。
靴紐を締める
足をシューズに入れて踵の部分で足とシューズとをぴったり合わせたら、緩めたままだった紐をいよいよ締めていきます。
一番下から締めていきますが、最初はしっかりきつく締めるようにします。
一番下ということは、つま先に近い部分です。
そこで紐の締め方が十分にきつくないと、折角踵に寄せていた足が自由につま先に移動してしまい、つま先の隙間を埋めてしまう恐れがあるのです。
靴紐を締める作業中は、常に踵で足とシューズとがぴったりくっついた状態を保っていることを確認しながら、進めていきます。
靴紐を締める間、つま先は床面につけず、踵部分だけを床面に付けて作業すれば、踵の位置はズレなくて済みます。
きつめに締めますが、痛みを感じない程度の締め方とします。
血流を妨げる程のきつい締め方は、絶対おすすめできません。
踵の部分の足とシューズとがぴったり合っていることの大切さと共に、足の甲の部分も自由に動かないように、しっかりホールドされるようにすることが大切です。
なので、足の甲もしっかり固定されるように、甲のところまでは紐はきつめに締めていきます。
甲と足首の曲がる当たりのところまでしっかりホールドできたという感触が得られたら、それ以降のところは、紐は緩めでも構いません。
足をしっかり固定するということがとても大切なので、紐の締め方も足のホールドを確保できるように行う必要があるのです。
紐を締めている途中で、まだ緩いと感じた時は、今締めている箇所で紐の先端を引っ張ってきつくするのではなく、シューズの一番下から紐を一箇所ずつ丁寧にタイトにしていくことをおすすめします。
このようにして紐を締めていきますが、トレッキングが登りから始まるのであれば、紐はシューズの一番上まで締める必要はありません。
靴紐の締め方は、トレッキング途中で変えなければならないことも
トレッキング用のソックスを正しく履き、足をシューズに入れて踵をぴったり寄せ、しっかり紐を締めて固定できれば、いよいよトレッキングに安心して出発できます。
しかし、場合によっては往復10時間以上歩く中で、特に登山初心者の場合、途中で段々履き心地が悪く感じられてくることがあります。
足が痛くなり、最悪の場合自力で歩くことが困難になることさえあります。
また、登山経験者であれば常識なのですが、靴紐の締め方も、登りと下りとでは違う締め方をします。
つまり、出発の時の理想型が登って下って帰ってくるまでずっと同じというわけではなく、必要に応じて変えることが、むしろおすすめなのです。
その、靴紐の締め方ですが、下りの時は、シューズの上の方までしっかり締めるようにします。
下り坂の道では、つま先がシューズの中で当たり易くなります。
足の指の爪が真っ黒になってしまうこともあります。
シューズの中で足がつま先側にズレないことを一番念頭に置いて、紐をしっかり締めることが必要です。
足の甲や足首の箇所までは勿論のこと、更にそれより上のところまで、しっかりきつく締めるようにします。
一方、登りの時は、足の甲までしっかりホールドできればよく、足首は自由度を保つ為に余裕を残した方がベターです。
なので、靴紐を一番上までしっかり締める必要はなく、足首のところで締めるのをやめて、余った紐は足首のところで二重巻きに結ぶなどして、足首が前に出る登り歩行がし易いようにしておくことがおすすめです。
ただ、同じ登りでも悪路、不安定な地形の場合は、足首もしっかり固定した方が安心です。
その場合は、シューズの上の方まで紐をしっかり締めるようにします。
シューズをお店で選ぶ時の試し履きの方法
ところで、これまで紹介してきた履き方の注意は、実はトレッキングシューズを購入する為に専門店を訪れて試し履きをする時にも、そのままおすすめなのです。
例えば、トレッキングシューズの下に履くソックスです。
実際、専門店にトレッキングシューズを買いに行く時、マイソックスを持参して、シューズを試し履きする登山愛好家も少なくありません。
また、初心者の方でまだトレッキング用のソックスを持っていない場合でも、トレッキングシューズの専門店では試し履き用のソックスを用意しているところが多いので、必ずそのようなソックスを履いた上で試し履きするようにします。
シューズの紐を緩めた状態で足を入れて、「踵をトントン」して足とシューズをぴったり寄せて、その時につま先に隙間が確保されているかどうか確認するのも、試し履きの時の重要なポイントとなります。
初心者の場合、シューズに足を入れる時に踵がシューズの中でつい気付かずに動いてしまうことがあるのを専門店のスタッフであれば知っている筈なので、そのあたりを気を付けて見てくれている筈です。
足がシューズに入り、踵部分で足とシューズとがぴったりくっつき、つま先には隙間が確保できていることが確認できれば、そのサイズのシューズで良いことになります。
次に、靴紐を締めていくわけですが、初心者であれば、専門店のスタッフが手伝ってくれます。
この時も、シューズの中で踵部分の足とシューズとの間に隙間ができないように、しっかり注意します。
足がシューズ内でつま先側に動いてしまわないよう、注意しながら紐を締めていきます。
足の甲がしっかりホールドされるように紐を締め、違和感がないかどうかしっかり確認します。
自分で試すのであれ、専門店スタッフの手を借りながら試し履きするのであれ、少しでも違和感があったら、すぐに申し出て、別のシューズを試すことをおすすめします。
トレッキングの本番前にしておきたいこと
登山経験者でもそうですが、トレッキングシューズを購入して新品状態でいきなり本番に履くのはリスキーです。
登山初心者であれば、なおさらです。
本番前に、試し歩きをしておくことをおすすめします。
町歩きでもいいですし、仮に山登りで試すとしても、行程は出来るだけ短めが安全です。
それでも色々なコンディションを経験できるように、階段の上り下りや、坂道もコースに取り入れるとベターです。
実は、靴紐の締め方は、どれくらいのきつさなら良いのか、最初は判断が難しいのです。
試し歩きをする中で、どういう場合に履き心地に違和感を感じるか、自分で感触を得ることが大事です。
その都度、紐を締め直してみて、どうすれば履き心地が良い具合に戻るか、自分で確かめることが必要なのです。
そうするうちに、シューズの紐の締め直し方も、最初は手間取ったものが、次第に短時間に出来るように上達します。
トレッキングの本番で、特に集団行動する際も、シューズの紐の締め直しで一人時間を取ってしまうようなことを、防げるようになります。
違和感を覚えるかどうかは、その日の体調にもよって変わることがあるので、何日もかけて試し歩きをすることをおすすめします。
特に、本番のトレッキングで高山を目指す場合、或いは長時間のトレッキングを予定している場合、試し歩きも負担の軽いところから次第に負荷を大きくして試し歩きしておくと、安心して本番を迎えられます。
歩いては紐を締め直し、締め直してはまた歩く、ということを繰り返すうちに、シューズも馴染んできますし、足のホールド感を最適にする紐の締め方も、身についてくるのです。
トレッキングから帰ってきたらやってほしいこと
トレッキングから帰ってきたら、トレッキングシューズの手入れもお忘れなく。
ちゃんとメンテナンスすることで、次のトレッキングでもしっかり足を守ってくれます。
まずはシューズの汚れを落とします。
紐とインソールは、シューズから抜きます。
紐は、中性洗剤で洗います。
インソールは、日陰の風通しの良いところで干します。
乾燥したところで、汚れを払い落とします。
払い落とす程度では落ちきらない汚れは、水洗いして落とします。
シューズ本体ですが、アウトソール、つまり靴底部分は、まず水洗いします。
突起と突起の間に土や泥が残る場合は、割り箸、歯ブラシなどを使い、取り除くようにします。
シューズのアッパーの部分は、シューズ専用のブラシで汚れを落とすようにします。
ヌバックレザーの材質の場合は、それ専用のブラシを使用します。
それでも落ちない泥汚れは、固めに絞ったおしぼり布で拭き落とします。
それでもまだ落ちない頑固な汚れの場合は、市販の専用洗剤を使うことになります。
レザー製のアッパーは、ワックスを落とす為に、2、3回使用するごとに1回洗うようにします。
毎回洗う必要はありません。
洗い終わったら、直射日光は避けて風通しの良い場所で乾燥させます。
直射日光やヒーターは、レザーのひび割れを起こすことがあるので、避ける必要があるのです。
シューズ内に水が残っている場合は、乾燥剤を入れて対応します。
レザーの場合は、専用の保護剤を塗った後、撥水スプレーを掛けて、自然乾燥させます。
ファブリック素材の場合は、汚れを落とした後に乾燥させ、撥水スプレーを掛けます。
保管は、靴紐を軽く締めた状態にして、湿気対策として新聞紙を詰めておくようにします。
トレッキングシューズは、つき合って仲良くなるもの
トレッキングシューズを購入する時の選び方も大切ですが、その時に正しいシューズを購入できたと思っても、実際にはトレッキング途中で履き心地は変わってくることがあります。
トレッキングの最初から最後までずっと同じ履き心地を保証するトレッキングシューズは、あり得ません。
トレッキングシューズの履き方次第で、履き心地は良い方にも悪い方にも変わるのです。
できれば、トレッキング本番の前に新品シューズを履いて試し歩きし、シューズとの付き合いを深めて、どうすれば良い履き心地を長く保てるか、自分で探ってみることをおすすめします。
トレッキングシューズと仲良くすれば、快適なトレッキングができるのです。
まとめ
トレッキングシューズは、一流メーカーのトップ製品を買えばそれで最高の履き心地が得られる、というものではありません。
トレッキングシューズの履き方も、大切なのです。
正しい履き方をすることで、トレッキングの様々なシチュエーションで常に最適な履き心地を得ることができます。
ソックスのこと、足の入れ方、紐の締め方、手入れの仕方など、注意点を守れば、快適なトレッキングを楽しめるようになります。