ポートワインと言えばポルトガル!おいしさの秘訣はブランデー?

ブランデー

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日本史を勉強すれば必ず目にする「ポルトガル」。

西洋の文化を日本にもたらしてくれた重要な国ですね。

ポートワインは、そのポルトガルで造られた酒精強化ワインです。

ワインと言っても、製造過程にはブランデーが使用されているので、厳密にはワインではないのんですが。

この酒精強化ワインは、フランスではヴァン・ド・リクールと呼ばれています。

特に有名なのがコニャックを用いたピノー・デ・シャラントですね。

ポートワインはこれのポルトガル版です。

ポートワインのあれこれと、おすすめをご紹介します。



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日本にもそんな名前のアルコールがあったような…

「赤玉ポートワイン」ってご存知ですか?

1907年(明治40年)に寿屋洋酒店(現・サントリーワインインターナショナル)によって発売された、甘口の果実酒です。

サントリー創業者、鳥居信二郎がポートワインの美味しさにはまり、同じような甘口のワインを世に出そうと製造されました。

米1升が10銭だった時代に一瓶40銭もしたそうですから、なかなかの高級品といえますね。

赤くまろやかな飲み口は、女性にも好まれました。

総合酒メーカーサントリーの土台を築いたともいえる素晴らしい商品なのですが、こちらはポートワインとは全く関係ありません。

そもそも製法が違います。

「赤玉ポートワイン」は甘さを出すために、人工的に糖分を添加していましたが、ポルトガルではブドウの糖分とブランデーを添加するタイミングのみで甘さを調整します。

当時の日本人は、ワインといえば赤くて甘いもの、という認識を持っていたそうです。

これは赤玉ポートワインが大流行して、そのイメージを植え付けたからと言われます。

それほどの人気を誇った赤玉ポートワインですが、残念ながら本来の意味でのポートワインではないのですね。

事実、しばらくしてポルトガル政府からクレームが来てしまいました。

このため、この製品は1973年より「赤玉スイートワイン」と名を改めます。

ただ「ポートワイン」という言葉の方が、インパクトがあって、親しまれたようです。

日本でポートワイン、というとサントリーが昔作ってなかった?

と頭を悩ます方が多いのはこのためです。



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ポートワインと名乗っていいのは…

製法が同じならすべてが「ポートワイン」になるのかというと、そうではないのです。

これを聞いておや、と思った方も多いのではないでしょうか。

コニャックやアルマニャックなどと同じですね。

重要なのは、どこで造られたか、なのです。

フランス政府が厳しい原産地呼称法(AOC)によって規制をかけたように、ポルトガル政府もポートワインという呼称が使える地域を厳しく限定しました。

その地域以外ではポルトガル国内といえどもポートワインとは言えないのですから、国外などもっての他です。

EU諸国ではこの呼称は厳格に守られているようですね。

しかしちょっと離れたアメリカやオーストラリアでは怪しいようで、サントリーと同様に「ポートワイン」と名付けた商品が散見されます。

これは厳密にはポートワインではないので、ご注意を。

大航海時代を支えたポートワイン?

かつて、ポルトガルはヨーロッパの中でも抜きんでた力を持っていました。

大航海時代に最も活躍した国の一つは、間違いなくポルトガルですよね。

1488年にはバーソロミュー・ディアスがアフリカ最南端のアグラス岬に到達しました。

1498年にインドを発見したのはヴァスコ・ダ・ガマです。

この発見によってポルトガルはインド航路を独占し、アジアとの交易によって莫大な富を得ることができました。

もちろん航海はたやすいものではなかったでしょう。

しかし、この厳しい航海をささえたものの一つが、ワインだったのです。

世界中を船で旅するわけですから、準備は万端でなければなりません。

特に飲み水の確保は重要課題。

熱帯地方だと、水は1か月で腐ってしまったそうです。

そのため、アルコール飲料も水の代わりとして大量に持ち込まれました。

まず水を消費し、それがなくなったらビール、ビールが無くなればワイン…。

アルコール度数の低い順番に消費していったというわけですね。

しかし、そこまでやっても、せいぜい3か月しか持ちません。

ワインのアルコール度数ではそれが限度だったのです。

そんな時に重宝されたのがブランデーです。

ブランデーはアルコール度数も高く、腐ったりしません。

いつでも飲めます!

しかし、ここにも問題が。

アルコール度数が高すぎて、水代わりには飲めないのです。

そこで、ワインにブランデーを入れた酒精強化ワインが持ち込まれるようになりました。

ポートワインはポルトガルの大航海時代の活躍には欠かせないものの一つだったというわけですね。

ポートワインは国外でも大人気に!

ポルトガルではフェニキア人によって、紀元前5世紀にはブドウ畑でブドウ栽培が行われていたといいます。

ワインの歴史はかなり古いですね。

途中イスラム国家の支配により生産は停滞しますが、キリスト教徒による国土奪回以降はずっとワイン生産が続けられてきました。

14世紀にはブランデーを使ったポートワインが造られていたのですが、世界に広まっていったのは18世紀になってからです。

英仏戦争の頃です。

イギリスがポートワインを大量に輸入し始めました。

フランスと喧嘩していては、ワインも買えませんからね。

1727年にはイギリスのワイン商がポルトに協会を置くなど、その人気は大変なものだったようです。

ちなみに、ポルトガルの「ポルト(porto)」は港、という意味です。

英語の「ポート(port)」と同義であるため、イギリスではポートワインという名が有名になりました。

ポートワインの定義とは!

ポートワインの商標が認められているのは、ポルトガル北部を流れるドウロ川上流の、アルト・ドウロ地区で生産されたもののみです。

ここがポートワインの法定地区と定められ、原材料となるブドウもこの地域のものでなければなりません。

ポルトガル政府が管理を厳しくしたのは、偽物やまがいものが横行してしまったから。

大航海時代に誕生したポートワインは大人気を博し、その名を語った不良品がたくさん出回ってしまいました。

悪品にその名を貶められてはかないませんよね。

18世紀には法律が整備され、現地呼称管理制度が出来、以下の条件を満たしたもののみがポートワインと名乗れるようになりました。

・原材料となるブドウはアルト・ドウロ産に限る
・加工・熟成・生産は、アルト・ドウロと対岸のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアにて行われたものに限る

それぞれの場所についても、ちょっと記しておきたいと思います。

アルト・ドウロ

アルト・ドウロはワイン生産地域として、世界遺産に指定されています。

始まりは紀元前に進んだ文明を持ち、ヨーロッパに多大な影響を与えたフェニキア人から。

彼らは地中海に多くの植民地を形成しました。

ポルトもそんな場所の一つで、ワイン造りもフェニキア人から伝わったものです。

このアウト・ドウロ地区は標高1000メートルの渓谷です。

土地は痩せて急峻。

一見ブドウ栽培には厳しそうな土地ですが、実はそうではないのです。

日照量が多く、寒暖の差が激しい。

これはブドウ造りには必要なものです。

そのため、ローマ時代からこの地はワインの生産地として栄えました。

アルト・ドウロで造られたワインは、そのままポルトの港から出荷されます。

ポートワインの歴史を語る上で最も重要な場所と言えますね。

ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア

こちらもポートワインを語る上で外せない都市です。

ポルト市とはドウロ川を挟んで対岸に位置しています。

アルト・ドウロで造られたワインはこのヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアに運ばれます。

ドウロ川河岸から中腹にかけては、多くのシッパーが立ち並んでいます。

このシッパーたちの倉庫で熟成が行われ、港から出荷されるのです。

シッパーとはなに?

と思った方、いますよね。

シッパーとは蒸留所のようなものです。

アウト・ドウロからの原酒をブレンドしたり熟成させたりします。

ポートワインの管理を行って出荷まで行うわけですから、味を決めるのはシッパーだと言えますね。

この地区にはシッパーが多く集まり、見学も可能です。

ポートワインに興味を持ち、その生産過程が見たいと思ったら、この地区のシッパーを訪ねるといいですよ。

製造過程の見学が可能です。

観光客も多く、ツアーもあります。

テイスティングもできますから、飲み比べて楽しむ、なんてことも楽しそうですね。

ポートワインの種類って?

ポートワインは、発酵途中、糖分がまだ残っている状態でブランデーを加えて造ります。

アルコール度数は77度。

前述のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアにて、最低でも3年間樽熟成させたもののみがポートワインと呼ばれます。

その中でも、種類は大きく分けて3つ。

これに該当しないものもスペシャルに作っているようですが、とりあえずはこの3種類を押さえておけば間違いありません。

ルビーポート

その名のとおり、鮮やかなルビー色が特徴です。

「ポルトガルの宝石」とも呼ばれます。

赤ワイン系で、フルーティで、力強い味わいが特徴とされます。

熟成にはバルセロイという大樽や、ステンレス製のものを使用。

極力酸素と接触しないよう気を付けて製造されているのです。

おかげで、パワフルな飲み口と甘さ複雑に合わさった、奥深い味わいが楽しめます。

ただ、注意点がひとつ。

一般に、ポートワインは酸化に強いと思われがちですが、このルビーポートは例外です。

栓を抜いた後、10日程度で劣化が始まります。

頂く際は是非ご注意くださいね。

トウニーポート

トウニー(褐色)カラーが美しいポートワインです。

こちらもルビーポートと同じく赤ワイン系。

小型の樽を使用して、酸化熟成を行います。

ルビーポートとは違い、酸素との接触面積を大きくしているのですね。

ルビーポートより柔らかい味わいです。

栓を抜いたあとも1か月くらいは大丈夫です。

ホワイトポート

こちらはゴールドカラーが美しい白ワイン系です。

ルビーポートと同様、酸化を極力避けて製造されています。

特徴は程よい酸味。

食前酒におすすめですが、こちらも栓を抜いた後10日前後で酸化が始まります。

ご注意を。

ポルトワインのおすすめは…

ここまでざっとポルトワインのあれこれを記してきましたが、おすすめをご紹介したいと思います。

はまる人はとことんはまるというポルトワイン。

どんなメーカーがあるのでしょうか。

サンデマン

おそらく日本で一番有名なポートワインメーカーではないでしょうか。

トレードマークは黒いシルエットの「ドン」。

彼はポルトガルの学生マントを羽織り、スペインの幅広ハットをかぶっています。

手に持つグラスにはルビーポートが。

なかなかインパクトのあるキャラクターです。

そんなキャラクターで有名なサンデマンは1790年設立の老舗メーカーです。

スコットランド人、ジョージ・サンデマンにより、ロンドンで起業されました。

現在のポルトに拠点を移したのは1810年。

以降、卓越したマーケティング戦略と情熱で、サンデマンを一流企業に押し上げました。

レストランなどでもよく見かけます。

サンデマンルビーポート

サンデマン社創立から、現在まで変わらない伝統的な製法で造られています。

サンデマン社のフラッグシップと言えますね。

カラーは輝きのあるルビー・レッド。

ストロベリーやプラムなどの澄んだ香りを感じます。

風味豊かでバランスもよく、クセのない甘さです。

少し冷やして飲むのがおすすめですが、炭酸水で割って頂いてもおいしいです。

サンデマン トウニー ポート

小樽にて平均して3年熟成されたものです。

カラーは透明感ある琥珀色。

バニラ・ドライフーツの香を感じます。

口に含むとベリー系果実のさわやかな甘さ。

複雑でフレッシュな味わいで、余韻が長く続きます。

ブルーチーズや、まったりしたデザートと好相性です。

フォアグラなども合いますね。

フェレイラ

ポルトガル最大手のシッパーです。

1751年創業。

自家栽培と醸造を行う、初めてのポルトガルポートワイン会社でした。

2012年にはアメリカのワイン&スピリッツマガジンにおいて、「プロデューサー・オブ・ザ・イヤー」を獲得しました。

この地区で最も偉大なワイナリーと称えられています。

実は意外と外国人経営が多いポートワイン会社。

そんな中、このフェレイラは生粋のポルトガル人のシッパーです。

フェレイラ・ルビー・ポート

手摘みされたブドウを皮ごと発酵。

濃厚な飲み口のポートワインです。

品種にはトゥリガ・フランカ、トゥリガ・ナショナル、ティンタ・バロカを使用しています。

ワイン感が強く、フルーティな飲み口です。

フェレイラ・ホワイト・ポート

平均熟成期間は3年のポートワインです。

使用品種はマルヴァジア、ヴィオジーニョ、ゴウヴェイオ。

すっきりした甘口で、食前酒としておすすめです。

冷たく冷やしていただくと、さらにのど越しが良くなって、おいしいですよ。

まとめ

日本ではあまり聞きなれないポートワインですが、飲みやすくて女性にもおすすめできますね。

糖の甘みではなく、ブランデーから引き出す甘みなので、ブランデーファンの方も美味しく気軽に頂けるのではないでしょうか。

ポートワインの長所はとにかく、その気軽さです。

ブランデーほどのアルコール度数はないので、食前食後に楽もう!

なんて気軽に誘えちゃいます。

お友達や仲間と集まる時には、是非このポートワインがおすすめですよ。

ブランデー