ワシントン州から新時代のアメリカン・ウイスキー。ウッディンビル蒸留所のクラフトバーボン

バーボン

バーボンの故郷と言えば、まず浮かぶのはケンタッキーではないでしょうか。

事実、有名どころのバーボンはほとんどこの地域で造られていますし、最も古い蒸留所もケンタッキーにあります。

しかし、ケンタッキー以外で造られているバーボンも多数あります。

特に近年はバーボンの人気が高まり、アメリカ各地で小さな蒸留所が操業を開始しています。

そんな中特に評価の高い蒸留所の一つがウッディンビルにあります。

どんな蒸留所なのでしょうか。



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ケンタッキー以外のバーボンはまがい物?

ケンタッキー州知事や、バーボントレイルの拠点の街・ルイビルの市長は「バーボンの95%はケンタッキー産で、残りはまがいもの」という話を公然と行っています。

ケンタッキーやそこに暮らす人々にとってバーボンは「ケンタッキーが造り上げたアメリカの伝統」であって、由緒正しいアメリカン・ウイスキーなのです。

ですからケンタッキーにはケンタッキー産以外のバーボンを認めないという人がたくさんいます。

バーボン=ケンタッキー産という考えがあるのですね。

しかし実際のところ、バーボンには厳密な原産地呼称統制法のようなものはありません。

ブランデーの「コニャック」や「アルマニャック」は厳密な規則があり、規定された産地以外で造られたものは「コニャック」とも「アルマニャック」とも名乗ることは許されませんが、(アルメニアンコニャックは除く)バーボンは「アメリカ国内」で製造されており、バーボン製造の基準を満たしていればそれは立派な「バーボン・ウイスキー」なのです。

アメリカ合衆国の法律による「バーボン」とは

日本国内にはバーボンに関する定義はなく、バーボンはウイスキーの中の種類として認められています。

しかし、アメリカ合衆国内にはバーボンに関する規定があり、この規定の要件を満たしていないものはバーボンと分類することはできません。

  1. アメリカ合衆国内で製造されていること
  2. 原材料となるトウモロコシは51%以上含まれていること
  3. 樽には新品の炭化被膜処理加工を施されたものを使用すること
  4. 蒸留は80%以下で行われること
  5. 熟成樽に入れられる前の原酒はアルコール度数62.5%以下であること
  6. 製品としてボトリングされる際のアルコール度数は40%以上であること

さらに、2年以上熟成されたものは「ストレートバーボン」と呼ばれます。

樽同志のブレンドを行わず少量でボトリングしたものは「シングルバレルバーボン」。

さらに5~10種類の樽をブレンドしたものは「スモールバッチバーボン」と呼ばれ、区別されています。

また、ケンタッキーで造られたバーボンは「ケンタッキー・ストレート・ウイスキー」と呼ばれ、バーボンの中でも特別であるとする人もいます。



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クラフトバーボンファンの注目の的!ワシントン州

バーボンの本場はケンタッキーですが、アメリカのウイスキーファンの目はワシントン州に向いています。

この地域には小さな蒸留所がどんどん造られ、質の高いクラフトバーボンが味わえると評判なのです。

増え続けるクラフト蒸留所はその数すでに100を超えているとか。

大都市シアトル近郊でコンパクトに蒸留所ツアーが楽しめるとあって、観光客にも大人気です。

2008年がワシントンにおける蒸留所ブームの始まり!

2008年にワシントンでは州法が改正されました。

これをきっかけにワシントンでは多くの小さな蒸留所が作られるようになりました。

ワシントンでウイスキーの蒸留所が稼働するようになったのは禁酒法以降初めてといいますから、かなりブランクがあったことになります。

さらに、この法律で事業を認められるようになったのは年間生産量15万ガロン以下のクラフトディスティラリーのみ。

1日に1人に販売できる量は2リットルまでと決められています。

テイスティングルームでの試飲に至っては1人2オンス(約60CC)までとか。

規模をかなり限定されたウイスキー製造ですが、見方を変えればそれだけ丁寧にハンドメイドされているということ。

オリジナリティとこだわりを持ち、ウイスキーを造る人が増えている証なのです。

そして、そうした蒸留所それぞれの個性に魅せられてファンになる人も急増中なのです。

ワシントン州ウッディンビル(Woodinville)

グルメの街としても名高いシアトルの東にウッディンビルという街があります。

この地域はワイン産業がさかんで、全米のみならず世界中から注目を集めるワインの名産地として知られています。

ワインと言えばカリフォルニアというイメージですが、このウッディンビル地域では日ごとにあらたなワイン醸造所が設立され、現在はカリフォルニアに次ぐ全米第二位のワインの生産地。

大小750以上ものワイナリーがひしめきあっています。

その最大の理由はワイン造りに適した土地と気候のおかげです。

「ウッディンビル」と言えばワインの名産地、と言われる中、ウイスキーの蒸留所やビールの醸造所も創業を始めました。

ワシントンでもこの地域はドリンカーたちの憧れの場所となっているのです。

ウッディンビル蒸留所(Woodinville Whiskey Company)

ワインの名産地としての伝統を持つこの地域に2010年、クラフトウイスキーの蒸留所がオープンしました。

アメリカン・ウイスキーの本場ケンタッキーにも負けないピュアな原材料と綺麗な水、ここにしかないエイジング条件がそろっていたからです。

ウイスキー造りを始めたのは大学農学部で同期だったオーリン・ソレンソン氏とブレット・カーライリー氏。

ウイスキー造りを始めるにあたり、メンターとして依頼したのは「メーカーズ・マーク」のマスターディスティラー、デビッド・ピッケレル氏でした。

彼の指導のもと、ウッディンビル蒸留所はクラフトウイスキーの生産を始めたのです。

ウッディンビル蒸留所のこだわり

ウッディンビルでは大西洋北西部で栽培された原材料とワシントン山脈の純粋な水のみを使用しています。

エイジングに使用される樽は北部森林の木を使ったアメリカンオーク樽。

ワシントンの最適なエイジング環境が最高のクラフトウイスキーを作り上げます。

さらに、使用している蒸留器は洋ナシ型のKothe Distilling社のものでドイツ製です。

伝統が現在の革新的技術と混じりあい、予想外のバーボンやアメリカン・ウイスキー生み出してくれるのです。

Woodinville Straight Bourbon Whiskey, 45%

ウッディンビル蒸留所でつくられたスモールバッチバーボンです。

小学校の体育館程度の大きさの蒸留所で丁寧に造られました。

使用されている穀物は全てワシントン州クインシーの「オムリン・ファミリー・ファーム」で独占的に栽培されています。

その後ウッディンビル蒸留所で原材料を粉砕し蒸留したあと、カスケード山脈を越えて樽舎に運ばれます。

風雪の吹きすさぶ季節も屋外に18か月さらされたオークの木を使用して作られた樽は豊かな風味のために焼かれ、焦がされています。

伝統的なプロセスを経て丁寧に作られたバーボンはまさにクラフトマンシップの真髄ともいえるもの。

2016年には全米クラフト・スピリッツ協会のコンペティションで「クラフトウイスキー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。

バーボンらしいバーボンをお好みの方におすすめです。

  1. カラー:濃い琥珀
  2. 香り:クレームブリュレとスパイスキャビネットの香り
  3. 味わい:まろやかな口当り、キャラメルとバニラ

まとめ

ケンタッキーほどの歴史はないけれど、伝統的な製法でバーボン通を唸らせる「ウッディンビル蒸留所」のバーボン。

現在全米で最も注目を集める新興蒸留所らしい、しっかりとした味わいです。

アメリカで蒸留所ツアーと言えばケンタッキーを思い浮かべる方が多いと思いますが、現在おすすめなのはワシントン州シアトル付近。

大きな蒸留所はありませんが、個性的な小さな蒸留所が品質の高いクラフトバーボンを作っています。

蒸留所見学のあとは西海岸北部の名物料理を提供している居酒屋的なレストランもあり、グルメツアーにはもってこい。

バーボンブームの続くアメリカで、一味ちがったバーボンを味わいたくなったら、ワシントン州を訪れてみて下さいね。

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