焼酎を熟成させるとどうなる?新酒でも、熟成させてもおいしい焼酎の奥深さ
お酒における熟成とは、時間をかけて寝かせることをいいます。
醸造酒も熟成させますが、特に蒸留酒については、製造の過程において熟成が欠かせないものとなっています。
しかしながら、焼酎については蒸留酒なのに関わらず、熟成という過程はそれほど話題になりません。
焼酎と熟成との関係について、深く見ていきましょう。
焼酎と熟成
蒸留酒の仲間としての焼酎と、熟成との関係を見てみます。
蒸留酒と熟成
焼酎はウイスキーやブランデーと同じ蒸留酒(スピリッツ)の仲間です。
他にウォッカやジン、テキーラ、アクアビットなど世界中に蒸留酒が存在します。
蒸留酒が熟成によっておいしくなることはよく知られているでしょう。
スコッチウイスキーなど、12年以上熟成させたものに価値が生まれます。
蒸留酒のアルコールは刺激が強いものですが、熟成によりこれがマイルドになり、旨みが生まれます。
焼酎を熟成させると
ウイスキーと比べますと、焼酎については、熟成のイメージが強くないかもしれません。
とはいえ、長期熟成を銘打った焼酎は無数にあります。
沖縄の泡盛を長期熟成させた古酒もよく知られています。
もちろん蒸留酒ですので、焼酎と熟成とは、切っても切り離せない関係にあるのです。
焼酎は熟成させなくてもいい?
蒸留酒の新酒は世界中どこでも、ピリピリとした刺激があって好まれません。
熟成を踏まえ、この刺激を和らげてから出荷する必要があるのです。
焼酎は新酒でもおいしい
世界中に存在する蒸留酒の中でも、新酒で飲めるという点が日本の焼酎の特徴です。
蒸留酒の世界からすると、珍しいことなのです。
蒸留酒は一般的にハードリカーであり、食中酒として楽しまれることは少ないものです。
この点、割って日本酒と同程度のアルコール度数で楽しむ焼酎は、スタイル的にも特異です。
新酒をありがたがるのが日本酒の世界ですが、季節のお酒であるいも焼酎などにもこうした傾向があります。
いも焼酎は、原材料の出荷時期に基づく、仕込み時期に限りのあるお酒で、9月から12月に集中して作られます。
とはいえ焼酎にも、一定の熟成期間があります。
蒸留後、加水をされた焼酎は、最低でもタンクで1か月は熟成されてから出荷されます。
いも焼酎であっても、そのまま出荷はしていません。
前年製造の焼酎とブレンドして出荷されます。
これにより、新酒の旨みと、やや古いお酒のマイルドさが両方味わえるわけです。
新たに作ったいも焼酎が熟成で旨味を増してきますと、ブレンドせずそのまま出荷されるようになります。
焼酎を長期熟成させる
長期間の熟成をさせなくてもおいしい焼酎ですが、長期の熟成に耐えられないわけではありません。
近頃では熟成古酒も人気を集めています。
熟成焼酎いろいろ
熟成焼酎は種類を問いません。
麦焼酎、そば焼酎、米焼酎なども熟成して出荷される銘柄が多数あります。
そして、新酒が好まれるいも焼酎も、熟成焼酎があります。
プレミアム焼酎として人気の「佐藤 黒」もそうです。
焼酎は長い時間熟成しなくても飲める蒸留酒ですが、熟成すればそれ相応の価値が生まれるものだということがよくわかります。
ウイスキーは樽で熟成させる
さて、蒸留酒の熟成といえば、代表例はウイスキーでしょう。
ウイスキーには、琥珀の色が付いています。
この色は、すべて樽で熟成されている間に生まれるものです。
蒸留したてのウイスキーは無色透明です。
ウイスキーの色は、すべて木の樽由来なのです。
詳しいメカニズムは完全にわかっているわけではありませんが、樽で熟成させることにより、ウイスキーに神秘的な色が付くわけです。
焼酎の樽熟成
さて焼酎の中にも、樽で熟成させるものがあります。
樽に詰めて熟成させることで独自の風味が生まれる点は、同じ蒸留酒のウイスキーとよく似ています。
樽熟成の結果、焼酎にもウイスキーに似た色が付きます。
大麦から作った麦焼酎であれば、ウイスキーと原料がほぼ同一なので、当然のことながら色だけでなく、味もよく似てきます。
ですが、熟成させ過ぎてウイスキーと同じ色になってしまうと、混乱を招くためでしょう、酒税法上焼酎として認められなくなってしまいます。
また、「発芽させた穀類を使う」というウイスキーの定義にも該当しません。
焼酎は麹を使って糖化をさせるため、麦焼酎であっても発芽大麦は使っていないからです。
ですから、ウイスキーのように長い期間樽熟成をさせますと、お酒としての質はともかく、焼酎としての商品価値がなくなってしまいます。
そのためウイスキーほど長い期間樽で熟成はさせません。
それでも、色が付き過ぎないよう工夫をした樽熟成焼酎は人気を集めています。
焼酎の場合は、3年程度の樽熟成でもおいしくなります。
焼酎の甕熟成
それから、甕熟成も人気です。
樽と違って色は付きませんが、焼酎は色を付けなくても熟成するとおいしくなります。
樽よりも焼酎本来の味わいが強く出るのが甕熟成です。
甕は、細かい孔が無数に開いていて、詰めた焼酎が呼吸をします。
この、呼吸というのが樽と同様非常に重要なのです。
家庭でも甕熟成
ご家庭で、甕を使って焼酎の熟成をおこなう人もいます。
この場合、複数の甕を用意しておきます。
古い焼酎の甕から飲んでいき、量が減ると、次に古い甕から移していきます。
これは沖縄で泡盛を熟成させる際に使われる「仕次ぎ」という方法です。
こうすることで、熟成により失われてしまう香りも維持できて、おいしいお酒が飲み続けられるわけです。
泡盛と焼酎とでは、甕で熟成させるお酒のアルコール度数に違いがあります。
泡盛は30度以上のものが多く、泡盛以外の焼酎は25度が多くなっています。
ですが、やや度数の低い焼酎でも同じことは可能ですので、おすすめの熟成方法です。
瓶詰めされた焼酎は熟成する?
泡盛の場合、瓶詰後にさらに熟成することが知られています。
泡盛もまた本格焼酎の仲間ですので、泡盛で瓶熟成が進むのなら、麦焼酎やいも焼酎などの本格焼酎も瓶詰後おいしくなるのでしょうか。
もしそうなら、焼酎を買いだめしておけば、どんどんおいしくなるわけです。
ちなみにウイスキーの場合には、樽から離れた瓶詰後は、熟成が完全に止まることが知られています。
そうしますと、同じ蒸留酒である本格焼酎について熟成が進むことは考えにくい気がします。
実際、樽の中とは環境がまったく異なり、瓶に詰められた環境では酸素もありません。
熟成には酸素が必要です。
瓶での熟成については、科学的に確固たる証拠はありません。
泡盛も含めてですが、必ずおいしくなるはずとはいえないのです。
ただし、劣化することはほとんどありません。
ただし、本格焼酎のほうがウイスキーより、瓶の中での熟成において有利な点があります。
それは、製造時における蒸留の回数です。
本格焼酎もモルトウイスキーも、単式蒸留器で蒸留します。
単式蒸留器での蒸留では、不純物が多く残ります。
モルトウイスキーの場合、一般的に2~3回の蒸留をおこないます。
単式蒸留であっても、それだけアルコールの純度が増しています。
いっぽう、本格焼酎は基本的に1回しか蒸留しません。
このため不純物が多く残留しており、この不純物が独特の風味に貢献しているのです。
このため焼酎のほうが、瓶の中において、ウイスキーよりも変化が進む可能性が高いといえます。
間違いなくいえることは、時間の経過とともにお酒の角が丸くなることです。
これは熟成とはイコールではないかも知れませんが、お酒の質がよくはなるわけです。
まとめ
焼酎が新酒でもおいしいという特徴を持っていることと、それにも関わらず熟成させることで質がよくなることについて見てきました。
熟成のあらゆる段階でおいしく飲めるのが焼酎の特性です。
熟成は神秘的なものです。
原酒が呼吸をすることで、どんどん風味が増していくのです。
ウイスキー好きの方も、樽熟成の焼酎を味わい、比較してみると面白いでしょう。