世界に知られるジャパニーズ・ウイスキーの特徴と歴史を感じる1本とは?
ジャパニーズ・ウイスキーは、日本で生産されるウイスキー全般を指す言葉です。
かつてジャパニーズ・ウイスキーは、スコットランドなどのウイスキー先進国では、見向きもされない存在で、その品質の低さから「ウイスキーではない」と酷評されてこともありました。
しかし、2000年代以降から徐々にその味が評価されるようになり、世界的な賞を獲得するに至りました。
今では、プレミアがつく銘柄もあり、ウイスキーの一大ブランドとしての地位を確立しています。
この記事では、そんなジャパニーズ・ウイスキーの魅力と王道とされる銘柄について解説してみたいと思います。
ジャパニーズ・ウイスキーの特徴
ジャパニーズ・ウイスキーの多くは、甘みが強いながら後を引かないクリアな後味を実現していることが知られています。
ジャパニーズ・ウイスキーがそのような味わいを実現し、評価を勝ち得ている所以はどのようなところにあるのでしょうか。
主流はブレンデッド・ウイスキー
ジャパニーズ・ウイスキーの多くは、大麦麦芽を主原料とするモルト・ウイスキーと、大麦麦芽に加え、小麦やトウモロコシなどを原材料とするグレン・ウイスキーをブレンドすることで作られています。
この製法は、ブレンデッド・ウイスキーと呼ばれる製法で、スコッチ・ウイスキーなどでも一般的に用いられていますが、ジャパニーズ・ウイスキーのブレンドは、同系統と蒸留所で造られた原酒だけをブレンドして製造することを特徴としています。
スコッチ・ウイスキーのブレンデッド・ウイスキーは、異なる特徴を持つ蒸留所の原酒を売買し、ひとつの味にまとめあげることで作られます。
しかし、ジャパニーズ・ウイスキーの場合、ひとつの蒸留所の中で多用な原酒を生産し、ブレンドしています。
そのため、ブレンデッド・ウイスキーでありながら蒸留所ごとに個性的な味を保つ事を可能としました。
ブレンドする原酒を限定することで生まれるピュアな味わいが、ジャパニーズ・ウイスキーが世界で評価される一因を担っているのかもしれません。
樽にミズナラを使用
一般的なウイスキー樽には、ホワイトオークなどの木材が用いられますが、ジャパニーズ・ウイスキーは、ミズナラを用いた樽で熟成されるのも特徴です。
ミズナラの樽を用いることで、若い原酒には、ココナッツのような甘い香りをまとわせ、熟成された原酒には、白檀や伽羅のアロマオイルのような芳醇な香りを持たせることが可能となっています。
スモーキーの味が特徴的なスコッチ・ウイスキーと比較して、ジャパニーズ・ウイスキーが軽やかな甘みとクリアな後味を実現している所以は、この独自の樽によるところなのです。
ジャパニーズ・ウイスキーの歴史を知ろう
ジャパニーズ・ウイスキーの生産は、1929年頃から始まったとされていますが、その生産の歴史を知る上で欠かせないのが、サントリーの鳥井信治郎とニッカヰスキーの竹鶴政孝の存在です。
ジャパニーズ・ウイスキーの生産は、この2社から始まり、2018年現在でも2社で90%以上の国内シェアを誇っています。
ジャパニーズ・ウイスキーをより味わい深く楽しむために、鳥井と竹鶴にまつわるウイスキー製造の歴史を少しだけ紐解いてみましょう。
鳥井信治郎の夢
サントリーの創業者である鳥井信治郎は、元々、独自開発したワイン(赤玉ポートワイン)の製造・販売で成功を収めますが、後世に残る事業としてウイスキーの製造に乗り出します。
鳥井は、国内にウイスキー蒸留所を作るという事業計画を打ち出しますが、日本での製造は難しいこと、莫大な資金が必要となることなどを理由に社員やスポンサーから猛反対を受けます。
竹鶴政孝の挑戦
同じ頃、後にニッカウヰスキーを創業する竹鶴政孝は、サントリーとは無関係の酒造メーカーに勤務しながら、スコットランドに留学し、現地でウイスキーの製造方法を学びます。
日本に帰国した竹鶴は、蒸留所を建設しようと試みますが、景気の悪化や株主からの反対が重なり、建設が困難となってしまいました。
竹鶴は、蒸留所の立ち上げをあきらめきれず、そのまま酒造メーカーを退社しました。
実現した山崎蒸留所の建設
鳥井は、ウイスキー蒸留所建設を検討する中で、昔からの知り合いであった竹鶴がスコットランドでウイスキーの製造を学んでいたことを知り、サントリー(当時の屋号は「寿屋」)に招きます。
蒸留所建設の立地を決めるにあたり、2人の意見は対立しますが、調査の結果、水質の良さと、川の合流地点であり、霧が立ちやすい環境を評価して、大阪府島本町にある山崎の地に蒸留所を建設します。
これが、現在まで続くサントリーの山崎蒸留所の興りです。
竹鶴の独立と余市蒸留所
その後竹鶴は、サントリー(寿屋)を退社し、兼ねてから思い描いていた、北海道の地に余市蒸留所を立ち上げます。
余市蒸留所で最初に生産されたウイスキーが「ニッカウヰスキー」であり、後のニッカの興りとなります。
少し高くても飲みたいプレミアムなジャパニーズ・ウイスキー
鳥井と竹鶴のウイスキーの歴史を知ったところでいよいよ実物が飲みたくなるところです。
2018年現在、鳥井のサントリーと竹鶴のニッカウヰスキーからは、数多くのブランドが発売されていますが、ジャパニーズ・ウイスキーの原点を知ることができるウイスキーをそれぞれのメーカーの品からご紹介したいと思います。
山崎
サントリーが発売するシングルモルト・ウイスキーです。
サントリーのウイスキーの原点となる山崎蒸留所で製造されたウイスキーで、多くの品評で金賞を獲得し続けています。
味わいは、フルーティーな甘みと、バニラのような香りが残る後味が特徴で、まったりとしながら口を不快にさせない飲み口が特徴です。
ホワイトオーク樽、シェリー樽、ミズナラ樽の原酒をバランス良く用いることで特徴的な味わいを実現しています。
華々しい受賞歴を誇るため、プレミアがついてしまい、最も安い12年でも700mlで7,000以上の値がつきます。
2011年に1本100万円で限定発売された50年熟成のボトルは、2018年現在でもオークションなどで3,000万円を超える価格で取引されています。
余市
竹鶴が独立後初めて解説した余市蒸留所のシングルモルト・ウイスキーです。
味わいは、山崎と比較するとより、スモーキーさが目立ちます。
飲み口で、ウイスキーの原酒の酒の味が強力に主張し、後味はシェリー樽の甘い香りと磯の香りが残りあまり後を引きません。
ジャパニーズ・ウイスキーの中では、比較的ピーティー(煙臭い)で、スコッチのシングルモルトに近い味わいを実現しています。
価格は、700mlで4,000円ほどですが、20年を超える熟成ものは、数十万円の価格で取引されています。
手軽に楽しめる普段使いのジャパニーズ・ウイスキー
先にご紹介した2本は、そこそこ値を張ってしまい、ボトルの購入にはちょっとした覚悟が必要です。
次に、もう少しお手軽に歴史を感じることができるエントリーモデルとなる1本を各メーカーの製品からご紹介します。
サントリーウイスキーホワイト
サントリーウイスキーホワイトは、山崎蒸留所で最初に生産さた国産ウイスキー「白札」を現在に受け継いだブランドです。
味わいは、シェリー樽から来る華やかな香りと強めのアルコール味が同時に飛び込んできます。
まろやかさと強烈さが両立した味わいで、ロックでも水割りやハイボールにしてもどちらでも楽しむことができます。
バーボンが好きなかたにもおすすめできる1本です。
ブラックニッカ リッチブレンド
ニッカウヰスキーを代表するブランドの1本です。
お酒を飲まない方にも、「ひげのおじさん」のラベルで良く知られています。
味わいは、最初にシェリー樽から来る華やかな香りとカフェグレーンから来るフルーティーな味が口に広がります。
後味は、穏やかで、さっと後を引きません。
水との相性も良く、ロックや水割りで美味しく飲むことができます。
まとめ
ジャパニーズ・ウイスキーは、国産のウイスキーを作りたいという鳥井信治郎と竹鶴政孝の情熱とともに生まれたお酒です。
かつては、酷評されたジャパニーズ・ウイスキーですが、蒸留所の中で限られた原酒を組み合わせることで独自の味わいを生み出す手法で高い評価を得て、今やプレミア価格で取引きされる存在となっています。
まずは、身近に手に入る1本から、ジャパニーズ・ウイスキーの歴史を感じてみてはいかがでしょうか。