原料がわかると、楽しみ方もわかる!~ウイスキーに隠されたこだわり~
琥珀色の輝きに、きついアルコールと深いコクが特徴なウイスキーですが、皆さんの中にウイスキーが「どんな工程で、どんな材料から作られているか」をちゃんと説明できる方はいますか?
知識などなくても、飲んで楽しめればいいという考え方もあるかもしれませんが、ウイスキーを詳しく知ると、飲んだ時の香りや味わいの“根拠”がわかって、さらに楽しめるようになります。
今回は、ウイスキーを1ミリも知らない方にも、よく嗜まれている方にも、わかりやすくウイスキーの原料と細かい特徴について紹介していこうと思います。
まずはウイスキーの原料と作り方を知ろう!
醸造から蒸留、熟成までを解説ウイスキーの種類を左右する原料は、穀物です。
大麦やトウモロコシ、ライ麦を使うものもあります。
簡単に原料ごとのウイスキーの種類と特色を挙げていきましょう。
●モルトウイスキー
大麦を原料とするウイスキーです。
大麦には「苦みと香ばしさ」をウイスキーに持たせる重要な役割があります。
注意点ですが、スコッチウイスキー(スコットランド産のウイスキー)とアメリカンウイスキーでは、「モルトウイスキー」の定義が異なり、前者は「原料が大麦麦芽のみ」、後者は「原料の51%以上が大麦」となっています。
●グレーンウイスキー
原料はトウモロコシ・ライ麦・小麦粉等、大麦以外の穀物です。
モルトと比較すると、香りは控えめですが、柔らかな甘みが特徴です。
とはいえ、グレーンウイスキー単体で飲む機会はおそらく少ないでしょう。
主なグレーンウイスキーの役割は、次に紹介するブレンデッドウイスキーにおけるバランス取りです。
●ブレンデッドウイスキー
日本産ウイスキーに一番見られるタイプのウイスキーなので、味わいには馴染みがあるかもしれません。
モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして作ります。
モルトの香ばしさとグレーンの甘みが中和され、新たな味わいとなります。
●ライウイスキー
カナディアンウイスキー(カナダ産ウイスキー)によくみられるタイプのウイスキーです。
名前の通りライ麦が原料となっており、とても軽い口当たりを楽しめます。
ウイスキーのあの重い感じが苦手な方には、是非一度試して頂きたいウイスキーです。
●コーンウイスキー
原料がトウモロコシのウイスキーのことを指しますが、つまりはバーボンウイスキーのことです。
甘さと深いコクが特徴で、モルトウイスキーとの違いは飲んでみるとすぐにわかると思います。
ただ、厳密に言うと、「トウモロコシを80%以上使用しているもの」が純粋にコーンウイスキーと呼ばれます。
地域の特性を生かしたウイスキーたち
ウイスキーを生産している現地の地理の特性を見ると、ウイスキーの種類に違いがあることはより明白になります。
例えば、原料の穀物に違いがあるのは、その穀物が現地に豊富だから、それを使用するからです。
また、綺麗な水がとれる自然の多い場所に、ウイスキーの蒸留所が多くあります。
つまり、ウイスキーは周りにある“自然”の良さを存分に生かしている飲み物だと言うことができるでしょう。
そこで、少し変わった地理の特性を利用しているウイスキーを1つ紹介しようと思います。
スコッチウイスキーの中では有名な“ボウモア”の蒸留所は、海抜0mの位置にあります。
原料の大麦を発芽させ、乾燥させる工程で、そこに海からの潮風が吹き抜けていくのです。
そう、ボウモアにはかすかに“潮の香り”がするのです。
おすすめの飲み方は、1,2滴の水をストレートに垂らすだけです。
そうすると、ウイスキーにこもっていた香りが一気に開けて、潮の香りももちろん、甘みや香ばしさも強くなります。
熟成する樽によって仕上がりが異なる?
ウイスキーは蒸留された後、樽でしばらく眠ります。
この工程が、個々のウイスキーの風味や味わいを大きく左右すると言ってもいいでしょう。
樽には何種類かあって、それぞれに香り付けの特徴があるので挙げていきましょう。
●オーク樽
楢(ナラ)や樫(カシ)などのオーク材を使用する樽で、ワインの熟成にも使われます。
ウイスキーに淡い黄金色を付け、バニラのような滑らかな香りを特徴づけます。
●ミズナラ樽
ミズナラを使用する樽で、ミズナラの生息する日本ならではの熟成樽と言えます。
サントリーウイスキーが初めて世界でミズナラ樽を使って熟成しています。
長時間熟成することが多い樽であるため、熟成されたウイスキーは刺激の少ない舌触りに、キャラメルのような甘い芳香が特徴です。
●シェリー樽
木材はオークと同様樫の木ですが、一度シェリー酒を貯蔵した後にもう一度ウイスキーの熟成用に使用するものをシェリー樽といいます。
上品でスパイシーな芳香と、わずかな酸味をウイスキーに特徴付けます。
樽で熟成しないウイスキーもある!
Georgia Moon (ジョージアムーン)というアメリカで作られたウイスキーなのですが、ほとんど熟成がされていないのです。
厳密には熟成30日以下となっています。
モチーフとなっているのは、アメリカ禁酒法時代の密造酒で、敢えて荒々しく製造しているようです。
種別でいうとバーボンなのですが、バーボンと呼ぶには「2年以上の熟成」が必要なので、このジョージアムーンは生粋の「コーンウイスキー」と言えます。
アルコールを強く感じますが、コーンの甘みと可愛いデザインに対する荒々しい味わいは、一度試して頂きたいものです。
燻製の香りがするウイスキーがある?
ウイスキーの製法の中でも、特に特徴的なものをご紹介します。
“ピート“という言葉はご存知ですか?
ピートとは、泥炭という意味で、スコットランドでは、このピートを使って発芽させた麦の乾燥を行うものがあります。
この過程で麦は煙でいぶされることになるので、その麦を使ったウイスキーは、燻製のような香りがします。
主にスコットランドのアイラ島エリアで作られるウイスキーにこの製法が使われており、ピート系のウイスキーは限られますが、一つ一つの味わいがとても強力で、好きな人は一気に魅力にとりつかれるのは間違いないでしょう。
ピート系ウイスキーのおすすめ
●ボウモア
先ほど紹介した、潮の香りがするウイスキーです。
実は、ボウモアもピート系ウイスキーなのです。
煙の香りの強さは控えめで、ピート系の入門として親しまれています。
●ラフロイグ
「ヨードチンキのような香りがする」という感想をよく聞きます。
薬品のような香りと強いピートの香りによって、飲む人を選ぶほど個性的なウイスキーです。
初めて飲むピート系がラフロイグで、もしも「この味は好きだ」と思えたなら、あなたは生粋のピート好きかもしれません。
●アードモア
アイラ島エリアで作られることの多いピート系ですが、このアードモアは別の地域(ハイランド)で作られています。
シルキーな舌触りと、バニラのような甘い芳香が魅力的で、奥にわずかに感じるピートが良いアクセントになっています。
ウイスキーのテイスティングを楽しんでみよう
原料となる穀物、作る地域、熟成する樽によってウイスキー風味が異なることは理解して頂けたと思います。
それでは、ウイスキーのテイスティングを楽しむために、原料とその原料が生み出す風味について簡単にまとめてみましょう。
●穀物
味の軸となる部分に影響し、舌触りや口当たりを左右する原料です。
●使用する水
口に含んだときの重みを左右します。
サラッと舌から喉へと流れていくものもあれば、少しオイリー(油のように重みがある)さを感じるものもあります。
●熟成に使う樽
ウイスキーに琥珀色を付けます。
淡い黄金色から、深みのある琥珀色まで様々です。
また、木の香りが液体に移るので、バニラのような甘さだったり、ナッツのような香ばしさ、フローラルなスパイシーさが、ウイスキーに特徴づけられます。
お気に入りのウイスキーを探す方法
ウイスキーの一本一本は決して安くはありません。
一本買ってみて、それが自分に合わなかったら、ちょっと気分が重くなりますよね。
そういったことがないように、“バー”でその道のプロの方におすすめを聞いてみるのが一番です。
今回紹介したような、「口当たりがいいもの」だったり「荒々しくて重いもの」などのある程度の目安を伝えれば、それに当たるウイスキーを選んでくれるので、シングルサイズで飲んでみてから決めるのが良いでしょう。
まとめ
如何でしたでしょうか?
今回は、ウイスキーをより楽しんで頂くために、原料やその原料由来の香りや味、こだわりのある数々のウイスキー製法について紹介してきました。
ブランドや値段でウイスキーを選ぶのも基準の一つですが、どの地域でどんな風に作られているのか、どういった香りや味わいがするのか、という基準で選んでみるのも面白いかもしれませんね。