いも焼酎の奥深い世界
焼酎好きの人たちの間で、いま最も人気で熱い視線を浴びているのがいも焼酎です、一昔前までいも臭いといわれ現地の人たち以外には人気がなかったいも焼酎ですが、いまではその風味が理解され多くのファンを作っています。
その理由には、いも焼酎の個性を理解してくれる人たちが増えたのもありますが、いも焼酎の製造者たちが努力をして飲み手のニーズにあったいも焼酎を作り出したからに他なりません。
昔のいも焼酎
かつてのいも焼酎は地元で取れる食用や澱粉用のサツマイモや白麹を使い糖化させそれを醸造しもろみを作りそれを蒸溜しただけのものでした。
コガネセンガンの登場
しばらくするといも焼酎作りに適するように品種改良されたサツマイモの品種コガネセンガンが開発されました。
以前は虫食いのある芋や鮮度の悪い芋が最終的に行き着く先であったいも焼酎がコガネセンガンの登場により風味や味が洗練され品質が向上しました。
麹カビ
いも焼酎に使用されるサツマイモは糖質が少なくその分澱粉質が多かったため、日本酒の製造で米に行うのと同じく澱粉を麹カビの力によって糖化させる作業を経て醸造されます。
麹の多様化
昔ながらの製造では白麹のみを使用していましたが、力強い濃厚なコクを産む黒麹や香りよく爽やかな飲み口を産む黄麹を使用した銘柄が出回る様になり、いも焼酎の味の幅が著しく広がりました。
産地による多様化
いも焼酎はサツマイモが原料となるため、サツマイモ栽培が広まった日本では地方によりそれぞれ違う方向へと発展し、ワインと同じ様に味の地域差が生まれました。
鹿児島県
サツマイモ栽培が広く行われる鹿児島県ですが、東西に長い鹿児島県では地方により水や気候風土が異なるので、しっかりとした骨格が味わえる力強い西部地方の伊佐美や、いも焼酎を飲み慣れない若者におすすめな東部地方で作られる爽やかで飲み口が良い森伊蔵などがあります。
宮崎県
いも焼酎だけでなく、ソバを使用したソバ焼酎や麦を使用した麦焼酎など焼酎の製造が盛んな宮崎県ですが、宮崎県西都市の岩倉酒造場の月の中など焼酎にモダンなテイストをいち早く取り入れた土地らしく、いも焼酎も鹿児島に比べて繊細な味わいのものが多いです。
伊豆諸島
鹿児島県や宮崎県ではいも焼酎の醸造過程によるサツマイモ澱粉の糖化に日本酒と同じく米麹を使用するのに対して、伊豆諸島では麦麹を使用しています。
そのため鹿児島県や宮崎県のいも焼酎に比べるとクセがなくドライな風味なので普段吞みにおすすめです。
いも焼酎の旬
11月になるとフランスを始め世界各地で有名なワインの新酒、ボジョレーヌーボーが旬を迎えるのと丁度同じように、いも焼酎にも旬の味を楽しむ新酒があります。
麦や米などの長期間保存が可能な原料を使用する焼酎の場合、仕込みの時期は限定されず一年中いつでも可能ですが、サツマイモの場合はそれとは異なり収穫後3日以内に加工しなければ腐ってしまいます。
そのため8月~11月のサツマイモの収穫を待って仕込みを始めます。
そして若潮酒造や大石酒造などで毎年商品化されるいも焼酎の新酒である焼酎ヌーボーが生まれます。
熟成させない分フレッシュで軽い味になり、新酒ならではの新鮮な風味を味わうことができます。
芋の品種
いも焼酎の原料となるサツマイモは1種類だけではありません。
どの品種を使うかによってもいも焼酎の風味や味は変わってしまいます。
現在いも焼酎に多く使用されているコガネセンガンですが、この品種は従来の品種と比べるとかなり澱粉質が多く、アルコール度数が高くなりやすいのでいも焼酎の原料として優れています。
コガネセンガンは澱粉質なので焼き芋よりも天ぷらや煮物などに使用すると美味しいですが、日持ちしないため出回りません。
いも焼酎に使用するために新たに開発されたサツマイモもあり、それがジョイホワイトです。
ジョイホワイトはフルーティーな焼酎になります。
一般過程でもおなじみのベニアズマもいも焼酎に使用されますが、サツマイモの風味が強いのでクセがあります。
ムラサキイモの系統もいも焼酎に使用されますが華やかでフルーティーないも焼酎になります。
おすすめの銘柄
山ねこジョイホワイトが原料でタンクにて貯蔵されます。
アルコール度数は25度でラムネやカリン、ヒノキを思わせる香りがあります。
料理によく合います。
さつま風来坊コガネセンガンが原料で木樽蒸溜由来の芳醇な香りとコクや旨みに優れています。
貯蔵酒をブレンドしまろやかな口当たりにしあげています。
黄麹蔵甘味がありフルーティーなので丁度日本酒でいう大吟醸のようにすっきりと高貴な味がします。
海草原のような爽やかな香りでほのかに甘い、減圧蒸溜と温泉水使用で爽快な味わいを生み出したいも焼酎界のパイオニアのような焼酎です。
まとめ
原酒と呼ばれるものや初溜取りなど、一般の焼酎と製法の違った銘柄が多く、また使用される原料のサツマイモや麹カビ、そして時には酵母も多様なのでいも焼酎の味の幅は広く、実際いも焼酎ほど銘柄で味の異なる焼酎はありません。
ですからこれらの風味や味の差、蒸溜された土地によっての地域差などを飲み比べる楽しさこそ、いも焼酎の醍醐味です。