エキゾチックな味わい? インド生まれのウイスキーのおすすめ。
ウイスキーといえば、スコットランドやアイルランドというイメージですよね。
最近は日本のウイスキーも世界市場での存在感を増してきましたが、本場といえばイギリス、というイメージ。
そんなウイスキーですが、最近注目の市場がインドであるというのはご存知でしょうか。
世界トップセラーウイスキーの中でも、ランキング10位中8つはインドのものなのです。
まだまだ広がるインド市場、どんなウイスキーがあるのでしょうか。
インドのウイスキー事情って?
インドでは公共の場での飲酒やアルコール広告は禁止されています。
場所によってはアルコールの販売も制限されており、どこでも気軽にアルコールが手に入るというわけではありません。
そのような社会情勢にもかかわらず、インドのウイスキー市場規模はとても大きいです。
なんと、ロシア、中国に続く世界第三位。
インドの人々は蒸留酒を好み、輸入量は毎年25パーセントも増量しているそうです。
蒸留酒の中でもウイスキーが占める割合は9割近くと、ワインやビールを圧倒しています。
インド原産のウイスキーってどんなもの?
インドにサトウキビが伝わったのは紀元前6000年頃と言われています。
そのため、砂糖の精製の始まりは北インドという説が有力。
そんなインドではアルコールにもサトウキビを使用していました。
サトウキビの廃糖蜜や搾り汁を酵母でアルコール発酵させて飲んでいたというのです。
ですから、インドのウイスキーもこのサトウキビを使用したものがポピュラー。
サトウキビから造られたラム酒と言われるものに、発芽した大麦を原材料としたモルト・ウイスキーをブレンドするのです。
インドではこれが「ウイスキー」として流通しています。
もっともこれはスコッチ・ウイスキー協会からは認められておらず、EUではこのお酒を「ウイスキー」として販売することは許可されていないのです。
本場の規定からするとまがい物、というわけですね。
インドでのウイスキーの始まりは…
19世紀、インドはイギリスの植民地となり、支配を受けていました。
インドでスコッチ・ウイスキーを飲む習慣はこの頃始まったと言われています。
インドで初のウイスキー蒸留所を造ったのもイギリス人でした。
エドワード・ダイアー(Edward Dyer)という人が「Kasauli(カソーリ)蒸留所」を設立たのが始まりとか。
蒸留所の気候はまるでスコットランドのようで、ウイスキーを造るのにとても適していたのです。
近くには新鮮で豊富な湧き水があり、水の確保にも困りません。
自国から運んできた蒸留器や醸造器を使いウイスキーは造られ、パンジャビ州の英国軍人や一般市場の人々を喜ばせたそうです。
インディアンウイスキーの始まり!アムルット蒸留所
インド原産の穀物を使い、インド人の手によってはじめられた最初のウイスキーは「アムルット蒸留所」にて開拓されました。
「アムルット」とはサンスクリット語で「人生の霊酒」を意味するのだそうです。
創業は1948年といいますから、インド独立の頃からずっと続いているというわけですね。
この会社は起業当初は簡単なブレンディングとボトリングの機械を持つ、小さな工場に過ぎませんでした。
しかし他の蒸留所から購入したアルコールをブレンドして販売するなど、徐々に規模を拡大。
やがて80年代になると、オリジナルのモルト・ウイスキーを製造するようになりました。
しかし、当時のインドにはモルト・ウイスキーの市場が存在しません。
そのため、サトウキビから蒸留したアルコールとモルト・ウイスキーをブレンドします。
「マッキントッシュ・プレミアム・ウイスキー」と名付けて販売すると、これが大ヒット。
この大成功を受けて、1987年には現在のアムルット蒸留所を新設。
さらに1989年には蒸留酒コンサルタントのジム・スワン博士やハリー・リフキン氏を招き、製造工程の見直しや品質改善に力をいれています。
アムルット蒸留所の環境は…
アムルット蒸留所があるのはインド南部の街・バンガロール。
バンガロールはカルナータカ州の州都で、標高は93mほどです。
暑い国として知られるインドですが、バンガロールは湿度も低く、年間降雨量も860mmと少な目。
気候にはとても恵まれています。
ただ気温だけは本場のスコットランドやアイルランドのようにはいかず、冬は17℃、夏は32℃といいますから、ウイスキー造りにはかなり温暖ですね。
そのため、熟成の速度も速くピークは4年で訪れます。
アムルット蒸留所のウイスキーにとっては、ここからが重要。
絶えず品質チェックを行わないと、タンニン過多となってしまうからです。
それでも、一般より短い期間で長期熟成のような深みとまろやかさが出るのがこの場所の長所と言えます。
原料となる大麦麦芽はインドのラジャスタン地方やパンジャーブ地方のものに加え、英国産のものも輸入。
水は自社の井戸よりくみ上げ、常に28℃以下になるよう保たれています。
このようにして、この蒸留所では年間400万ケースが出荷されているのです。
蒸留所のあるバンガロールはウイスキーファンの聖地ともなり、ウイスキー目当ての観光客が増加中とか。
これからもまだまだ発展中のアムルット蒸留所は多くのファンの注目を集めているのです。
Amrut Fusion Indian Single Malt Whisky 50%
ジム・マーレイ著「ウイスキーバイブル2010」にて、世界第3位と位置付けられたウイスキーです。
100点中97点という高得点を受けたウイスキーは、世界中のファンを驚かせました。
インドを代表するシングル・モルト・ウイスキーです。
何も加えず、ストレートで頂くのがおすすめ。
カラー:ゴールデン・イエロー。
香り:スモーキーで魅惑的な香り。
ピートの香りとシュガーの甘さを感じる。
味わい:オークのまろやかな口当たり。
バニラ、チョコレート、そしてカスタードの甘さ。
最後は少しスパイシーさが残る。
AMRUT Raj Igala 40%
パンジャーブ州の大麦麦芽から造られたシングル・モルト・ウイスキーです。
以前はバーボン用に使用された樽で熟成されています。
「Raj Igala」とは「kingofeagles」(鷲の王)という意味です。
カラー:美しい黄金色。
香り:スパイシーでピーティ。
かすかに塩の香りを感じる。
味わい:ドライな舌触り。
かすかにオークを感じる。
リコリス、砂糖の甘さ。
フレッシュな果実のような華やかなフルーティさが口に残る。
Amrut Indian Single Malt Whisky 46%
2008年に「maltmaniacsawards」にてブロンズメダルを獲得したシングル・モルト・ウイスキーです。
カラー:ゴールデン・イエロー。
香り:リコリスとバーボンの香り。
タフィーの甘さも感じる。
味わい:まろやかで円熟した甘み。
バニラやキャラメルといった、深いバーボンの味わい。
クリームタフィーがシルキーに口になじむ。
インディアンウイスキーの今後は…
年々市場を拡大し、世界からも注目を集めるインド。
しかし、その市場は世界に開放されたものではありません。
ウイスキーの消費量の多いインドですが、スコットランドなど他国の蒸留所のものはそのうちの1パーセントに過ぎません。
これはインドが高い関税障壁を設けているから。
インド国外のウイスキーは関税のおかげで法外な値段になってしまうのです。
そのため、インド国内ではいまだにサトウキビを原料としたアルコールとモルト・ウイスキーをブレンドしたものが主流となって消費されています。
アムルット蒸留所が本格的なウイスキーを製造していますが、これはほとんどインド国外向け。
インドでは入手することさえできないのです。
インドのウイスキーが今後どのように発展していくのか、世界が注目しています。
まとめ
インド国内向けにはまだまだ本格的なスコッチやアイリッシュは浸透しそうにありません。
しかし、世界でも注目を集めるアムルット蒸留所の本格ウイスキーは評価も高く、飲んでみる価値はあります。
気温が高く、深くまろやかに熟成が進むという点では台湾のカバランウイスキーと同様ですね。
どちらも新興ウイスキーとして、今後大注目ではないでしょうか。
インディアンウイスキーに興味を持たれたら、是非お気に入りを探してみて下さいね。