スペイン・アンダルシア地方のブランデー。ブランデー・デ・ヘレスのおすすめを見てみよう
ブランデーはワインの副産物ともいえるもの。
美味しいワインがあるところなら美味しいブランデーもあるはずです。
この度目を向けて頂きたいのはスペイン。
シェリーワインの名産地です。
この地方にはシェリーワインと同様、独特で味わい深いブランデーがあります。
「ブランデー・デ・ヘレス」と呼ばれるものなのですが、ご存知でしょうか。
ブランデー・デ・ヘレスについてのあれこれとおすすめを見てみたいと思います。
目次
ブランデー・デ・ヘレスはスペインのブランデー!
ブランデー・デ・ヘレス(Brandy de Jerez)は、スペインで作られています。
コニャックやアルマニャックと同様、ワインを蒸留して作られたスピリッツ。
ブランデーとして販売される以外にも、シェリー・ブランデーの原材料として使用されることもあります。
ブランデー・デ・ヘレスの始まりは…
アフリカ北西部に住むイスラム教徒であるムーア人。
彼らは8世紀ごろにイベリア半島を侵略しました。
彼らが占領したへレスの地はワインの生産がさかんで、質の高いワインが生産されていました。
しかし、ムーア人は宗教上の理由からワインを飲むことが出来ません。
そのため彼らは「飲む」のではなく、ワインを蒸留してアルコール分を抽出しました。
そのようにして抽出されたアルコール分は香水や医療用のアルコールとして使用されたのです。
この蒸留技術を利用してブランデーの生産が始まったと言われています。
オーク樽でこのスピリッツを熟成させるという工程がいつ頃から行われ始めたのか、明確な日付の分かる資料はありません。
しかし、1580年にはへレス市議会が「ワインスピリッツ税」を課税していたという資料があり、この頃にはかなり普及していたのではないかと考えられます。
ブランデー・デ・へレスの世界的普及
18世紀と19世紀は特にスペイン国外への輸出が盛んに行われました。
当時ヨーロッパでも有数の大都市だったオランダを介し、スペイン産ブランデーは世界中に広まっていきました。
19世紀にはスペイン人の商人によりスペイン産スピリッツの特徴的な製造方法とエイジングプロセスのガイドラインが定められました。
「ブランデー・デ・ヘレス」という名前はこの頃につけられたものです。
「ブランデー」とはもともとオランダ語で「焼いたワイン(brandewijn)」を意味します。
しかし、へレスからのブランデーだけは「ホランダ」と特別な名前で呼ばれていました。
ブランデー・デ・ヘレスの蒸留方法
ブランデー・デ・ヘレスの蒸留方法は2通りあり、どちらも銅製の蒸留器を使用します。
どちらの方法をとっても原材料のワイン本来の味や香りが失われるほどの蒸留は行いません。
蒸留方法は次の2通りです。
1:アルキタラ(Alquitara)…ムーア人によってへレスの地に運ばれてきた伝統的なスチルを使用。
オーク材の火によって加熱されます。
このスチルを使用した蒸留方法で出来上がったスピリッツは、40~70度程度のアルコール含有量の低いもの。
通常最高級のワインを原材料とします。
そのため、出来上がったブランデーも最高級の味わいと言われます。
2:蒸留塔:アルキタラよりもより現代的で効率的な蒸留方法です。
ワインは蒸留器に継続的に加えられ、出来上がったスピリッツはアルコール度数70~94.8度の強いものになります。
ブランデー・デ・ヘレスの場合、2回蒸留は行いません。
蒸留回数が増えるほどワインの持つ風味や味わいが失われてしまうからです。
ブランデー・デ・ヘレスの厳しい条件とは!
ブランデー・デ・ヘレスにはコニャックやアルマニャックと同様、品質を維持するための厳しい条件があります。
こうした生産地や方法の統制は「ブランデー・デ・ヘレス規制委員会(Consejo Regulador del Brandy de Jerez)」によって行われています。
ブランデー・デ・ヘレスの条件とは以下の通りです。
- ブランデーデヘレスは「へレスデラフロンテラ」、「プエルトデサンタマリア」、「サンルカールデバラメダ」の地方自治体協会内(いわゆる「シェリートライアングル」)で生産されなければならない
- シェリーの熟成に使用されていたアメリカンオークでできた、500リットルの樽で熟成させなければならない
- 現在まで伝わる、伝統的な熟成プロセス「Criaderas y Soleras」を使用しなければならない
シアデラスイソレラ(Criaderas y Soleras)システムとは
スペインでサワーやブランデーを生産するシステムは「シアデラスイソレラ」と呼ばれています。
これは古いブランデーと新しいブランデーを混ぜて、一貫した品質のブランデーを作るためのシステムです。
スペインのブランデー製造者たちは「古い高品質のブランデーが新しいワインの教師になる」と考えています。
プロセスは以下の通りです。
- 通常三段に積み重ねられているカスクの中で、一番したにあるカスク(ソレイラ)から1/4のスピリッツが取り除かれます
- 二番目のカスク(シアデラ)から同量のスピリッツを取り出し、ソレイラに注ぎます
- 一番上のカスクから同量のスピリッツを取り出し、シアデラに注ぎます
- 一番上のカスクには新しいスピリッツを注ぎます
このプロセスは4~5か月、または1~2年ごとに行われています。
ブランデー・デ・ヘレスの種類はどんなものがある?
前述の「ブランデー・デ・ヘレス規制委員会」は熟成期間によってブランデー・デ・ヘレスを分類しています。
- ブランデーデヘレスソレラ(Brandy de Jerez Solera)…最も若くフルーティ。
平均熟成期間はおよそ1年
- ブランデーデヘレスレゼルヴァ(Brandy de Jerez Solera Reserva)…平均熟成期間はおよそ3年のブランデー
- ブランデーデヘレスグランレゼルヴァ(Brandy de Jerez Solera Gran Reserva)…最古のブランデー
平均熟成期間はおよそ10年。
おすすめのブランデー・デ・ヘレスを見てみよう
スペインにはブランデー・デ・ヘレスを生産している「ボテガ(ブランデーを生産・熟成させる場所)」が30以上あります。
多くはスペイン国内外で販売され、ブランデー・デ・へレスをの歴史と品質を代表するものです。
カルロス1世(Carlos I)
1772年に設立されたボテガ「オズボーン」のブランデーです。
エアランブドウを使用した最高級ワインを原材料として使用。
伝統的なポットスチル「アルキタラ」を使用し、職人の技で丁寧に蒸留されています。
その後、アメリカンオーク樽で熟成させました。
伝統的な「シアデラスイソレラ」プロセスを経て、香りの発達を促進し、時間をかけて比類のないブランデーを完成させました。
- カラー:黄金色のハイライトを持つアンバー
- 香り:バニラ、カカオ
- 味わい:バランスの良いまろやかさ
グラン・デューク・ド・アルバ(Gran Duque de Alba)
シェリー生産において最も古い歴史を持つボテガの一つ、「ウィリアムス・アンド・ハンバート(Williams&Humbert)」のブランデーです。
家族経営で130年ものあいだシェリー・ブランデーを生産してきました。
へレスでも最も古く、偉大なブランドです。
伝統的な「シアデラスイソレラ」プロセスで作られています。
こちらもアメリカンオーク樽が熟成に使用されています。
平均熟成期間は10~20年です。
- カラー:金色のマホガニー色
- 香り:複雑で優しい香り
オーク樽由来のウッディさもある
バルサミコの深い香りも感じる - 味わい:口当たりは円やかでスムーズ
バニラ、トーストの軽やかで甘い味わい
まとめ
シェリートライアングルでのみで生産される「ブランデー・デ・ヘレス」。
スペインのみならず世界中で愛されているブランデーです。
その証拠にスペインでは、蒸留所を巡るツアーも人気。
シェリーワイン製造所巡りの他に、ブランデー・デ・ヘレスのボテガを巡るルートも増えています。
通常のブランデーより飲みやすいため、女性や初心者にもおすすめ。
日本でも入手できますので、気になったら探してみて下さいね。