チーズとブランデーは至福の組み合わせです。おすすめはウォッシュチーズ!
ブランデーを飲む時に、何をつまみますか?
味をしっかり感じたいから、おつまみは不要。
そんな方も多いかもしれませんね。
しかしブランデーと相性の良い食べ物をつまみながら飲むと、驚くべき相互作用があるかもしれません。
それによってさらにブランデーが味わい深くなったりすることも。
まず試していただきたいのは、チーズです。
特におすすめなのはウォッシュタイプ。
どんなものなのでしょうか。
目次
チーズの世界は奥が深いのです
私たちは簡単に「チーズ」と言いますが、実は種類も多く、製法も様々。
ざっとあげてみますと、以下のとおりです。
●フレッシュチーズ…熟成させない、くせの少ないチーズ。
●ハードタイプチーズ…水分量が38パーセント以下の硬いチーズ。
●セミハードタイプチーズ…日本のプロセスチーズに似ている。
初心者には食べやすい。
●青カビチーズ…いわゆるブルーチーズ。
塩辛さが特徴。
●白カビチーズ…もっちりとしてクリーミー。
代表はカマンベールチーズ。
●シェーブルタイプチーズ…ヤギのミルクから造られるチーズ。
●プロセスチーズ…日本人に一番馴染み深い。
ナチュラルチーズを溶かして再び固めたもの。
●ウォッシュタイプチーズ…匂いがかなりきつい。
どれをおつまみにしてもそれなりに美味しいのですが、おすすめはなんといっても「ウォッシュタイプ」のチーズです。
強烈な香りに好き嫌いの分かれるチーズですが、ブランデーとは相性抜群なのです。
ウォッシュチーズはどのように造られるのでしょう
ウォッシュチーズとは具体的にどういうものなのでしょうか。
ウォッシュとは洗うという意味ですよね。
このチーズは文字通り、「洗う」ことによって完成されます。
チーズについた菌は非常に分解力が強いため、洗って菌の量を調節してやらないと、美味しいチーズにならないのです。
勿論じゃぶじゃぶと洗うわけではありません。
目的はチーズについた菌の量の調節ですから、丁寧にそっとなでるように洗うのです。
ちなみにこの強力な菌というのは、私達にもお馴染みのあの菌と同類。
「枯草菌」と呼ばれ、大豆を発酵させる、納豆菌です。
こう記すと、匂いがきついというイメージが伝わるかもしれませんね。
日本人には大丈夫な匂いでも、外国の方にはちょっと厳しいにおいです。
それと同じで、ウォッシュチーズの強烈なにおいも、徐々に馴れてくるものかもしれません。
チーズを「洗う」ために…
美味しいチーズを作るために洗う必要のあるウォッシュチーズ。
一般的には塩水を使って洗うのですが、ものによってはビール、ウイスキー、ワインなどを使うこともあるとか。
勿論ブランデーも使用されます。
菌の調整が難しく厳重な温度や湿度の管理をする必要があり、とても手間暇がかかります。
その土地特有の地酒を使うことも多く、土地の特色の出やすいチーズと言えますね。
やっぱり匂いが無理なんだけど…
ウォッシュチーズはまろやかでなめらかな舌触り。
しかし、匂いにギブアップしてしまう人もいるかもしれません。
そんな方は、表面の皮をむいて食べてみて下さい。
匂いのもととなる菌が繁殖しているのはチーズの表面のみで、内部にはいません。
ですから、かなり食べやすくなりますよ。さらに、匂いはチーズの時期によっても違います。
チーズは発酵が進むとますます強い匂いを発します。
そのため、おすすめは若いチーズ。
あまり熟成させていないものを選ぶといいですよ。
しかし、その際はちょっと注意が必要。
若いチーズということは、造られてまだ日が浅いということ。
春や夏に作られたものならば材料となる乳をだす牛や羊が新鮮な牧草を食べていますが、秋や冬はそうではありません。
ですから、若いチーズを食べようと思ったら、春・夏に作られたものにしましょう。
秋・冬のチーズは原料となる乳の質があまり良くないので、発酵させた方がおいしいと言われているのです。
ブランデーでチーズを洗う?
ウォッシュチーズの特徴である、「洗い」。
その中でも、ブランデーを使って洗われたチーズこそ、ブランデーのおつまみにはぴったりです。
どんなチーズか見てみたいと思います。
エポワス・チーズ
こちらはフランスを代表するウォッシュタイプのチーズです。
ブルゴーニュ地方のエポワス村で造られています。
見た目はクリーミーなオレンジ色で、中はミルク色のチーズがとろけています。
こんな優しい外見ですが、匂いはやはり強烈。
フランスでは「神様のお御足」、イギリスでは「豚の足の指の間」と呼ばれているそうです。
チーズの熟成中は塩水とブランデーで丹念に洗浄。
使用されるブランデーはブルゴーニュ産の「マール」です。
マールと言えば、イタリアのグラッパと同じ「搾りかすブランデー」ですが、ブルゴーニュはその産地として特に有名なのです。
エポワス・チーズの歴史
伝説によると16世紀にエポワス村の近くにあったシトー派の修道院の僧侶によって開発されたと言われています。
食通で有名なフランス18世紀の政治家ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランはエポワス・チーズを「チーズの王様」と評したそうです。
そんな素晴らしいチーズも、戦争の時代を経て激減しました。
1950年代にはエポワス・チーズを造っている農家はたったの2軒。
チーズは滅亡の危機にさらされます。
人気を博した頃は首都パリにまで輸送されていたエポワス・チーズでしたが、一時は完全に出荷が止まってしまいました。
そんな中、立ち上がったのがエスポワ村のロベール・ベルトーという農夫でした。
彼はチーズ会社ベルト―社を立ち上げ、昔ながらの製法を守ってエポワス・チーズの生産を行いました。
そして、ついに1991年にはAOC(原産地呼称制度)によってエポワス・チーズの名前が認められたのです。
これによってエポワスの名は保護され、ブランド的価値を持つようになりました。
エポワス・チーズの条件とは!
原産地呼称制度によって認められているエポワス・チーズ。
以下の条件を満たさないものはその名を語ることは許されません。
1.原材料はBrune、Montbéliarde、Simmental françaiseの3種類の牛の乳とする。
2.コート・ドール県北西部の半分、ヨーヌ県の3郡、オート・マルヌ県の2郡に生産地を限定する。
ちなみにエポワス村はコート・ドール県にあります。
エポワス・チーズにおすすめのブランデーはやっぱりこれ!
マールを使用して造られたチーズですから、やはりここはマールを味わうのがおすすめです。
特にブルゴーニュ産なら間違いないですね。
ルイジャドマール・ド・ブルゴーニュ ア・ラ・マスコット
ルイ・ジャド社がおよそ3年に1度だけ作るマールです。
ワイン作成に使用した、ピノ・ノワールの搾りかすを丁寧に圧搾しています。
その後、アランビックを使用して1回の蒸留を行い、樽の中で長期熟成させました。
オーク樽の香りと味わいが円熟したまろやかさを醸しています。
ブランデーの余韻を残したままチーズを含むと、ブランデーのアロマがより強くなりまろやかな味わいが残ります。
濃厚なエポワス・チーズとの相性は抜群です。
まとめ
よほどのチーズ好きでないと、ウォッシュタイプのチーズは頂かないのではないでしょうか。
このチーズはとても繊細なので、食べごろを見極めるのも大変。
食べかけを置いておくとすぐに乾燥してしまいます。
今日は美味しいブランデーとチーズを食べる!
と決めた日に購入するのが一番おすすめです。
同じ産地で造られたチーズとブランデー。
試してみると、ブランデーの新たな楽しみが見つかるかもしれません。