ブランデーはコニャック…6つのクリュと5大コニャック・メゾン
ブランデーの生産国といえばフランス、なかでも南西部のコニャックとアルマニャックが有名な生産地です。
コニャック地方はボルドーの北側に位置し、コニャック市を中心としたシャラント県とシャラント・マリティーム県で、ここで造られるブランデーだけがコニャックと名乗ることを許されています。
年間の平均気温は13℃前後で暖かく、適度な雨量とブランデーに適した葡萄が栽培できる多彩な土壌が広がっています。
コニャックの製造方法
コニャックの原料にする葡萄の90%以上がユニ・ブランという品種で、糖分が少なく、酸味が強く、フルーティーで、柑橘系のさわやかな風味の葡萄です。
収穫された葡萄は圧搾機で果汁されて大樽の中で自然醗酵され、1週間程度で7~8%のアルコール分を含んだ白ワインに仕上がります。
蒸留はシャラント式の単式蒸留器を使い、直火加熱で2回蒸留して、約70%まで濃縮します。
酸味が強く、アルコール分が低く貧相なワインが、蒸留後に却って芳醇なブーケへ変わり、香味が濃縮します。
蒸留を終えると数年から数十年の間、樽の中で貯蔵し熟成されると、アルコール度数が下がり、色が琥珀色に変化して、まろやかなブランデーに変っていきます。
6つのクリュ
コニャック地方を6つのクリュに区分し、その区域内で造られ、他の区域ものを調合してないコニャックは、クリュ名を呼称してもよいことになっています。
区域分けの基準はブドウを作る土壌の質で、高品位な葡萄が得られる土壌順に、石灰質のグランド・シャンパーニュとプティト・シャンパーニュ、フリント質のボルドリー、赤い粘土質のファン・ボア、砂地のボン・ボアとボア・オルディネールの6区域に分けられ、コニャック市を中心として同心円状に広がっています。
グランド・シャンパーニュ
グランド・シャンパーニュの作付面積は小さく、生産量もコニャック全体の1%以下です。
しかし、この地域の土壌は岩盤の上に貝の化石が多く堆積した地層で、石灰含有量は35%にもなり、糖度が低く、酸度が高い理想的な葡萄が栽培できます。
グランド・シャンパーニュ地域で収穫された葡萄だけを使ったブランデーのみ、グランド・シャンパーニュと表示できます。
プティット・シャンパーニュ
もろい石灰質で水はけが良く、ミネラルを豊富に含んだ土壌ですが、栽培される葡萄は糖度が低く、酸度が高く、 ブランデーはグランド・シャンパーニュと同様、独特のフローラルなブーケと上品な味わいがあります。
グランド・シャンパーニュと比べて、プティット・シャンパーニュのほうが、やや穏やかな味わいに仕上がります。
なお、グランド・シャンパーニュのブランデーに50%以下の割合いで、プティット・シャンパーニュをブレンドしたものをフィーヌ・シャンパーニュといいます。
ボルドリー
コニャック市の北東に位置し、ボルドリーは6つのクリュの中で、最も小さなクリュです。
土壌は石灰層の脱炭酸化によるフリント質で、冬に水分を多く蓄え、夏は乾燥します。
ボルドリーの葡萄からは、スミレの香りと呼ばれるエレガントで、まろやかでやわらかなブランデーが産まれ、高い品質のコニャックと評価されています。
レミーマルタン
1724年にレミー・マルタンが創業して以来、コニャックの代表銘柄として広く親しまれています。
6つのクリュの中で、最上級のグランド・シャンパーニュとプティット・シャンパーニュ、2つの地区で収穫された葡萄だけを使用する大手コニャック・メゾンです。
蒸留もレミーマルタン方式、蒸留は、リーズ(底に沈んだかす)をろ過しないで蒸留します。
樹齢100~150年のリムーザン地方のオーク樽で貯蔵・熟成しています。
レミーマルタン XO
おすすめのレミーマルタン XOは、400種以上の原酒をブレンドしたセラー・マスター渾身の作です。
卓越したプレンディング技術を持つものだけが、この複雑な作品を作り出すことができ、グランド・シャンパーニュのまろやかでしっかりした味わいと、プティット・シャンパーニュの柔らさが融合したコニャックです。
ブレンドされてフィーヌ・シャンパーニュとなった原酒は、樽に戻されて、さらに1~2年間マリッジされます。
贅沢な飲み口で複雑な香りが形成され、極上のアロマ、熟した秋の果実の深い香り、深い奥行きがあり、滑らかな味わいに仕上がっています
ヘネシー
1765年、アイルランド出身のリチャード・ヘネシーが創業し、250年を超える歴史を持つコニャックを代表するブランドです。
創業者の妥協なき探究心と情熱は、脈々とヘネシー家に受け継がれてきました。
上質の葡萄ができるグランド・シャンパーニュ、プティト・シャンパーニュ、ボルドリー、ファン・ボアの4つの地区に葡萄畑を持ち、ヘネシー式よばれる蒸留法で抽出した原酒を、樹齢100年以上のフランスのオーク樽で貯蔵・熟成。
貯蔵されている30万樽の中から最高の原酒を選び出し、ブレンドしています。
なかには熟成200年を超える原酒も貯蔵されています。
ヘネシー V.S.O.P フィーヌ・シャンパーニュ
グランド・シャンパーニュにプティット・シャンパーニュをブレンドしたのが、フィーヌ・シャンパーニュ。
おすすめのヘネシー V.S.O.P フィーヌ・シャンパーニュは、フィーヌシャンパーニュと呼ぶための厳しい条件を満たした約60 種類の原酒からブレンドされ、繊細で洗練された素晴らしい味わいを実現しています。
V.S.O.Pですが、熟成年数25年の原酒もブレンドされ、深い味わい、繊細なアロマ、微かにオーク樽の香りが残ります。
1976年に日本初登場、すらりとした透明なボトルで、琥珀の液色を主張しています。
カミュ
1863年、初代ジャン=バティスト・カミュがコニャック製造・販売会社を設立しました。
カミュはボルドリーに広大なぶどう畑を所有していますが、カミュのコニャクにはボルドリーの古酒が隠し味として使われているので、繊細でまろやさな味わいがあります。
また、熟成にも古樽を使用していますので、スミレの香りの樽香が感じられます。
カミュの経営者で、マスターブレンダーでもあるシリル・カミュは直系の5代目で、創業以来、家族経営を守り続ける唯一の大手コニャック・メゾンです。
カミュ ボルドリー XO
おすすめはカミュ ボルドリー XOです。
ボルドリーのカミュが所有する畑から採れた葡萄だけを使用し、オーク樽で長期熟成して造られたシングル・クリュ・コニャックです。
スミレの香りとヘーゼルナッツの繊細なアロマが特徴的ですが、スムースでリッチな味わい、豊かで力強く丸みのある口当たり、数々の魅力に溢れており、世界から称賛されているカミュの魅力が凝縮されています。
マーテル
英仏海峡のジャージー島出身のジャン・マーテルによって1715年の創業、300年を超える伝統があり、最高のコニャックづくりが伝承されてきました。
マーテルはボルドリーの60%を所有しており、葡萄の澱りをきれいにろ過したうえで蒸留された原酒は、軽やかな味わいで澄んでいて、香りもフルーティー、華やかな風味があります。
木目が細かく、上質のオーク材として有名なトロンセのオークの樽で貯蔵し、ゆっくりと熟成されてバニラや蜂蜜の香りが付加されています。
マーテル XO
アーチ型のボトルが特徴的なマーテルXOがおすすめです。
ボルドリー地区のブドウと、グランド・シャンパーニュ地区のブドウがブレンドしてあり、ボルドリーの香りとまろやかさに、グランド・シャンパーニュの爽やかで力強い味わいが、微妙にバランスされ、絹のようになめらかな余韻を引き出しています。
液色は琥珀色と明るいマホガニーと暗い金色を混ぜ合わせたような独特の色合いです。
クルボアジエ
クルボアジェは1809年にパリで創業され、1928年にコニャック地方に移転しています。
皇帝ナポレオンが愛飲するブランデーとしてクルボアジェを選んだため、ナポレオンのコニャックとよばれています。
高品質の葡萄を確保するため、800件以上の農家と栽培契約を結んでおり、グランド・シャンパーニュ、プティト・シャンパーニュ、ボルドリー、ファン・ボアの4つのクリュで栽培された葡萄を使用しています。
醸造後に澱とともに蒸留し、旨みを蒸留液に溶け込ませる蒸留法を採用しています。
厳選されたオーク樽に貯蔵された原酒は、熟成されて複雑で滑らかな味わいに変わっていきます。
クルボアジエ ナポレオン
クルボアジエとナポレオンとの関係を祝って20世紀に造られた銘酒が、おすすめのクルボアジエ ナポレオンです。
グランド・シャンパーニュ産とプティ・シャンパーニュ産の葡萄をブレンドし、フルボディでありながら、華やかな香りとまろやかな味わいで、口の中に長い余韻を残す上品なコニャックです。
手間のかかる澱とともに蒸留することで、気品に溢れる香りや味わいがもたらされ、熟成によって生まれる白檀とマッシュルームの繊細で絶妙なハーモニーが特徴です。
まとめ
世界中の人々に愛されるコニャックには、V.S.O.P、ナポレオン、XOなどの等級があります。
日本酒の特定名称酒とは異なり、熟成年数によって決められた基準です。
コニャックは何種類もの原酒をブレンドして造られていますが、使われた原酒の中で最も若い熟成年数を表す等級を表示する決まりになっています。
ブランデーは熟成年数が長いほうが、味がまろやかになり、飲みやすくなるといわれます。
果たしてそうなのか?
買い揃えて、飲み比べてみれば判るでしょうか?