ヘミングウェイも飲んだスペインのシェリー・ブランデー「フンダドール」
アメリカ人作家のヘミングウェイ氏が1926年に出版した小説「日はまた昇る」で「フンダドール」について細やかに描写されています。
シェリー・ブランデーとして「フンダドール」は、スペインはもとより、かつてはスペインの植民地だったフィリピンでも親しまれています。
フランスのブランデーにはない、香りと味わいがある「フンダドール」をご紹介します。
目次
そもそもシェリー・ブランデーとは何か?
ブランデーは、白ブドウなど果実を原料に造られたワインを蒸留し、オーク樽で熟成させた蒸留酒のことです。
シェリー・ブランデーの「シェリー」とはスペインの「へレス地方」のことです。
シェリー・ブランデーの「シェリー」とは、「ブドウの産地の名前」、または「熟成した地域の名前」のことなのです。
へレス地方は良質なブドウの産地
へレス地方はスペインのアンダルシア州カディス県にあります。
スペインの南西部に位置し、ジブラルタ海峡に近いため、海から吹く風が適度な湿度を保ち、ブドウの栽培に良い影響を与えています。
土壌は硫酸カルシウムとシリカを含んだ白っぽい色をしています。
これは鉄分などの無機質が少ない証拠です。
こういった土壌は水はけがとても良いのです。
へレス地方の適度な湿度、水はけの良い土壌、暖かい気温は、フランスの高級ブランデーの産地「コニャック」、「シャンパーニュ」、「シャリブ」とよく似ています。
へレス地方はワインやブランデーの原料になるブドウの栽培に大変適した土地なのです。
シェリー酒はワインとどう違うの?
シェリー酒とは、白ワインの1種です。
スペインの「原産地呼称」に認定されている白ワインなのです。
シェリー酒が世界三大酒精強化ワインの1つと言われるのはなぜか?
シェリー酒には「辛口」、「甘口」、「極甘口」があります。
シェリー酒で酒精強化されているのは、実は「甘口」と「極甘口」だけです。
その違いは製造工程にあります。
実はシェリー酒には、ソレラ熟成システムという独特な熟成方法が用いられています。
このシステムは、複数の収穫年で、すでに出来上がっているワインをブレンドして均一の味を保つ酸化熟成方法で、シェリー酒の他にスペイン産や南アフリカ産のブランデー、一部のラムやウイスキーにも用いられているのです。
つまり、「辛口」シェリー酒を造る発酵の工程途中で、すでに出来上がったシェリー酒を入れてアルコール度数を上げるので、ブドウの糖分の一部はアルコールに変化せずに残されているのです。
こうして出来上がった酒精強化ワインの1つ、シェリー酒の「甘口」や「極甘口」はアルコール度数は高く、果実感の溢れる優しい甘みが味わえるのです。
シェリー・ブランデーは酒精強化ワインで造られている?
11世紀頃のスペインではブランデー製造の技術が出来上がり、その後13世紀頃にシェリー酒の原型が出来上がりました。
ブランデーはシェリー酒の酒精強化用に作られていましたが、19世紀以降はブランデー単独の需要が高まり、シェリー・ブランデーとして販売されるようになっていきました。
そのため、より効率的にブランデーを造るため、蒸留方法も連続式を利用するように変わっていきました。
現在は酒精強化ワインを使っていますが、過去ではシェリー酒の生産と需要が高かったためシェリー・ブランデーの原料に酒精強化ワインが使われることはありませんでした。
ではフランスのコニャックとスペインのシェリー・ブランデーは何が違うの?
最大の違いは、シェリー・ブランデーを熟成する樽です。
コニャックに使われる樽の素材はリームザン・オーク樽ですが、シェリー・ブランデーにはアメリカン・オークで造られた樽を利用します。
コニャックでは新品樽やブランデーを造った古い樽を使っていますが、シェリー・ブランデーには必ずシェリー酒、特に「オロロソ」などを熟成させた後の古い樽を使っているのです。
そのため、コニャックには華やかな香り、シェリー・ブランデーには柔らかな甘い香りが生まれるのです。
また、コニャックは1つの樽で熟成したブランデーだけを瓶詰めするので、同じ年に造られたブランデーであっても樽の中での熟成具合で出来が異なり、瓶詰めされた数に限りができます。
しかし、シェリー・ブランデーのいいところは、味が均等化されるようにブレンドされて瓶詰めするので、変わらぬ味をスタンダードに味わえます。
コニャックが希少価値の高い高級品というならば、シェリー・ブランデーはいつでも気軽な値段で変わらない味わいを楽しめる大衆向けの商品と言えます。
みんな大好き「フンダドール」の魅力
スペイン語圏に住んだことのある方であれば、「フンダドール」を見かけたり、飲んだ経験をお持ちかもしれません。
過去にスペインの植民地だった国、例えばフィリピンのマニラなどでは日本円で1,000円ちょっと出せば美味しい「フンダドール」を購入することができます。
スペインでも、比較的リーズナブルに購入ができます。
だからと言って、味わいや風味が劣ることは決してありません。
むしろ、はじめて飲んでも親しみやすくて美味しいと感じることでしょう。
特に、お酒の味も甘党といった方であれば、ブランデーはお好きではないかもしれませんが、「フンダドール」を飲めばブランデーに対するイメージがきっと変わることでしょう。
「フンダドール」は、酸味が少なく、柔らかな香りで、一般的なブランデーよりも飲みやすのです。
ブランデーは食後に楽しむことが多いのですが、スペインやフィリピン、キューバなどでは「フンダドール」は食事をしながら楽しみます。
スペイン語圏では「フンダドール」は身近で、値段もリーズナブル、食事との相性も良いことから、長い間親しまれてきました。
甘いお酒がお好きな方であれば、「フンダドール」はおすすめです。
「フンダドール」のアルコール度数は「36度」、「38度」、「40度」の3種類販売されています。
ブランデーはアルコール度数が高いので苦手と言った方にも、36度であれば、果実感があるので女性にも飲みやすいので特におすすめです。
ぜひ、シェリー・ブランデーをはじめて飲むときは「フンダドール」からお試しください。
きっと、また「フンダドール」飲みたくなることでしょう。
「フンダドール」はコーラとレモンで割ると本当に美味しい!
ラム酒のコーラ割りはジュースのように甘くて美味しいですよね。
「フンダドール」もブランデーなのですが、コーラで割るのが一番美味しいと私は思っています。
「フンダドール」のコーラ割りには、よく冷えたコーラと氷の入ったロンググラス、それに厚めにスライスしたレモンをご用意ください。
レモンはグラスに浮かべると、爽やかな香りがします。
時々、マドラーやスプーンでレモンを押しつぶすと香りや酸味が増すのでお好みでどうぞ。
個人的にはフライドチキンや広島風お好み焼きと一緒に飲むのが大好きです。
ぜひ、一度お試しください。
小説の他に「フンダドール」の曲があるのはご存知ですか?
ゴフ・リチャーズ氏の作品で「高貴なる葡萄酒を讃えて」というアルバムの5曲目に「フンダドール、そしてシャンパンをもう一本」が収録されています。
スペインらしさ溢れる作品です。
「フンダドール」は、多くの食卓にのぼる身近なシェリー・ブランデーでありながら、芸術的感性を刺激する香りや味わいを人々に与えているのかもしれません。
未成年の方は「フンダドール」を味わう前に、曲をぜひ聴いてみてください。
ブラスバンド部の方であれば、友達を誘って、演奏してみるのも楽しそうですね。
まとめ
へレス地方は、フラメンコ発祥の地でもあります。
内に秘めた情熱を芸術に昇華させた作品や伝統はスペインならではでしょう。
ブランデーというと高級品というとイメージですが、「フンダドール」は、日本で売られている「下町のナポレオンいいちこ」のような存在と言えるでしょう。
しかし、「フンダドール」に使われるブドウも、熟成させる地域も最高です。
「フンダドール」の魅力は最高の素材を気軽に楽しめるところだと私は思っています。