南米ペルーのオリジナルブランデー! ピスコってどんなお酒?
ブランデーの産地というと、頭に浮かぶのはまずフランスですよね。
しかし、南米ペルーにもおいしいブランデーがあるというのをご存知ですか?
それはピスコと呼ばれ、ペルーでは大変ポピュラーな飲み物なんです。
ピスコの日、なんていうのもあるそうですよ。
日本ではまだまだ聞きなれないこのブランデー、是非ご紹介してみたいと思います!
目次
ピスコとブランデーの違いって?
ブランデーとは、果実酒から造った蒸留酒のことですよね。
特に有名なのはやはりブドウを原材料としたものです。
ペルーのピスコも全く同じ。
ブドウジュースを造り、そこから醸造酒を造り、蒸留して出来上がりです。
過程だけ見ると、ブドウ由来のブランデーとなんら違いはありませんね。
しかし、はっきりわかる違いが一つ。
それは、カラーです。
大抵のグレープブランデーは何かしら色がついていますよね。
琥珀だったり、黄金色だったり、バリエーションは様々です。
一方ピスコは無色透明、または淡い琥珀の綺麗なホワイトブランデーです。
これは、熟成方法の違いによるものです。
ブランデーは一般的に樽に入れて熟成されますが、ピスコは樽熟成は行いません。
ですから樽由来の色がつかず、クリアな透明感を持つのですね。
お隣同志のチリとペルーでは…
ペルーの南、国境を接したお隣の国はチリです。
チリと言えば、ワインが有名ですね。
日本でもワインの輸入量はフランスを抜いてトップに立ちました。
デイリーワインとして人気を博すチリワイン、市場規模はこの10年で6倍にも拡大しているそうです。
ワインの生産地となればつまりはブドウの名産地。
チリは高品質のブドウの産地でもあるのです。
ブドウの栽培に適した地域を世界規模で「ワインベルト」と呼びますが、チリはばっちりその中にも納まっています。
(ちなみに他の国は、フランス、スペイン、中国、日本などです。)それに対し、ペルーは必ずしもブドウ栽培に適しているとは言えません。
前述のワインベルトには入っていませんし、過去に南米を襲った「フィロキシラ」と呼ばれるブドウの害虫にも多大な被害をうけ、チリのようにブドウ栽培がさかんになることもありませんでした。
そんなチリとペルーの間で、ピスコの定義については常に議論の種となっています。
なぜならチリでもペルーと同様、ピスコを造り販売しているからです。
しかも、商売上手なのは明らかにチリの方。
マーケティング戦略に長けているチリのピスコは売り上げも良く、生産量がペルーの10倍もあるというからすごいですね。
そのため、ピスコはチリのもの、とイメージされがち。
それに歯がゆい思いをしているのがペルーのピスコなのです。
一応、正式な定義としてはペルーのピスコ地方で栽培されたブドウを使用し、伝統的製法で造られたもののみをピスコと呼ぶ、とされています。
しかし、生産量が10倍も違えば、議論も起こってしまいますよね。
もう少しペルー産ピスコが世界に流通すれば認識も変わってくるのでしょうが、現状はチリに圧倒されています。
チリ産とペルー産の違いは?
同じピスコでも、実は少し違います。
まず、チリでは樽熟成を行うものがあります。
これはペルーではありえません。
樽を使用することは禁止されていますからね。
さらに蒸留回数。
チリには蒸留回数の制限はありません。
そのためチリ産ピスコの多くは数回蒸留を行い、一旦アルコール度数の高いピスコを造ります。
その後加水し、アルコール度数を下げます。
ウイスキーのような作り方ですね。
これに対しペルーの蒸留回数は1回と決まっています。
加水も禁止。
よってペルーの方がアルコール度数高めです。
ペルー産とチリ産、同じピスコでも別物と考えてもいいかもしれませんね。
ピスコの歴史って?
南米といえば浮かぶのがインカ帝国。
すぐれた文明をもった国でしたが、スペインによって征服され、滅びてしまいました。
そんな時代にスペインのコンキスタドール(征服者)ピサロによって、はじめて南米にブドウの苗がもたらされました。
気候的にはブドウの栽培に適さないとされるペルーですが、南部の海岸地方は違います。
砂漠性気候で、冬でも日照時間が長く、晴れが続く。
これはブドウ栽培にうってつけで、糖度の高い優れた品質のブドウを造ることができました。
おかげで、たくさんの高品質ワインが製造されました。
しかし、当時はスペインもワインの製造・輸出に力を入れていたところ。
国産ワインを圧迫するペルー産の優秀なワインは、あまり歓迎されませんでした。
それどころか、スペインは植民地であるペルーでのワイン造りを推奨しません。
ワイン造りに制限をかけられたペルーでは、代わりにピスコ造りがさかんになっていきました。
ピスコの由来
ピスコという名前は、生産地であるピスコ地方に由来しています。
現在でいうと、首都リマの南方の漁港の街です。
もともとはインカ帝国で使用されていた言語、ケチュア語で「ピクス」と呼ばれていました。
これは「鳥」という意味で、街の名前でした。
その後住民が増え、街が拡大すると、「ピスコ」と呼ばれるようになります。
「鳥の谷」という意味で、これが定着しました。
スペイン植民地時代にはこのピスコの港からペルー産ブランデーは出荷されました。
本国スペインやその他の植民地へ運ばれたペルー産ブランデーは、税関に登録される際はピスコ港の名前で登録されました。
そのためペルー産のブランデーはいつしか街の名前「ピスコ」と呼ばれるようになったのです。
1999年にはペルーで原産地呼称法が制定されました。
これによって、400年もの歴史を持つピスコは他のスピリッツとは区別され、オリジナリティを認められるようになったのです。
さらに2006年には「ピスコ原産地呼称統制委員会」が設立され、その品質の維持と向上を厳しく管理されるようになりました。
現在、ピスコが生産されているのはピスコの他、イカや南部の街タクナなどがあります。
また、「ピスコ」の由来とされるものはもう一つあります。
それは器。
この地域には優れた陶器を造る技術を持つ、「piskos」(ピスコス)と呼ばれる人たちが住んでいました。
当時、彼らが造った粘土造りの壺はアルコールやチチャを保存するのに使用されていました。
その後スペイン人が入植してきた際も、そこで造られたブランデーはこの壺に入れられます。
そうするうちに、この壺に納められたブランデーはその名が付き、他の蒸留酒とは区別されるようになっていったのです。
「ピスコス」や「ピスキリョース」と呼ばれた壺は、ピスコ酒のために使われるようになりました。
やがて、壺と輸出に使われる港は同じ名前を共有するようになったというわけですね。
ピスコの原材料とは…
南半球に属するペルーでは、ブドウの収穫は2月から3月です。
北半球では真冬と言えますね。
そんなペルー最大のブドウ産地「イカ」ではヨーロッパ系の高級ブドウ品種が多く栽培されています。
赤用にはカベルネ・ソーヴィニヨン、マルベック、メルロー。
白用にはピノ・ブラン、モスカテルなど。
それ以外に特筆すべきは、ケブランタ種です。
これはブドウ栽培の始まりより、この地特有の品種として多く栽培されてきました。
このケブランタ種がピスコの原材料となります。
ケブランタ種はスペインから持ち込まれた黒ブドウを品種改良して造られた、ペルーオリジナルのものです。
乾燥性の気候で石ころだらけの土地でも育つよう改良されたおかげで、ピスコ地域のみならず、国内の似たような環境の場所でも栽培されるようになりました。
ケブランタ種は強い香りを持ちませんが、これを使用することにより独特の風味を持ったピスコが出来上がります。
ピスコにも種類がある!
ピスコの中にもいくつかの種類があります。
ブランデーにコニャックやアルマニャックがあるのと同じような感じでしょうか。
といっても別に産地にこだわった呼称ではないのですが…。
puro(プーロ)
ケブランタ種から造られたピスコです。
モリャール、ネグラといった香りの少ない品種も使われます。
柔らかい香りが特徴。
aromatico(アロマティコ)
アロマティコ種から造られたピスコ。
これはモスカート種から派生した、とても香りの強いブドウです。
mostoverde(モストベルデ)
発酵の過程で濾されたブドウ果汁のことです。
糖分がアルコールになっていないものを指します。
acholado(アチョラード)
様々な品種のブドウを濾したもの。
ピスコはペルーのブランデーではありますが、私達が認識するブランデーとは違ったオリジナリティを強く感じますね。
ピスコの造りかたって?
ピスコの製法には厳しい決まりがありますので、ペルー国内どのピスコも大体同じような造り方をしています。
まずはブドウの分析から。
ピスコを造るのに十分な糖度を持つブドウを選定します。
その後、選定したブドウを使用してブドウジュースを造ります。
十分に圧搾しなければなりません。
近ごろは圧搾機を使用しているところがほとんどですが、中にはいまだに原始的な方法―足で踏みつぶすーを行っている酒造もあるそうです。
こうしてできたブドウジュースは発酵楼に入れられ、ワインが造られます。
アルコール度数が10%前後になるまで触りません。
十分に発酵したら次は蒸留です。
原酒をポットスティル(銅製の蒸留器)に入れて、蒸留を行います。
蒸留後は樽ではなくスチールやガラスのタンクで熟成。
そしてフィルターで残滓を取り除いて、ビン詰めされます。
こうして完成された無色透明のクリアなブランデーがピスコと呼ばれるのです。
アルコール度は大体38~40度くらいとなります。
みんな大好きピスコサワー!
400年以上の歴史を持つこのピスコ、ペルーでは欠かせない飲み物として愛されています。
なんといっても「ピスコサワーの日」といって、ピスコで造ったカクテルを祝う日が制定されているほどです。
ピスコを使ったこのピスコサワー、カクテル好きならご存知ですよね。
ピスコ自体よりも有名かもしれないこのカクテル、まろやかな味わいと飲みやすさで女性にもおすすめできるカクテルです。
レシピをご紹介しますね
ピスコサワー
ピスコ:45ml
卵白:1ケ分
レモン果汁:適量
砂糖:適量
材料を全て合わせ、氷を入れる。
全てをミキサーで泡立てる。
これで出来上がりです。
泡がふわふわで、甘いけれど少し酸味もあって、くせになるおいしさです。
2008年リマで開催されたAPEC会議では各国首脳に供されて、認知度はさらにたかまりました。
そんなピスコサワーを祝う「ピスコサワーの日」が制定されたのは2003年。
毎年2月の第一土曜日はペルー各地でイベントが行われています。
そんなピスコサワーが生まれたのは1915年のこと。
旧リマ市街にて、カリフォルニア出身のビクトール・モーリスが経営する「Morrisbar」がその発祥と言われています。
最も当時は卵白ではなく、ただの水が使用されていたようです。
その後1933年にバーが閉店し、レシピを持ったバーテンダーはよそのホテルに移り、そこで卵白を加えた今の形に仕上げたそうです。
一人のバーテンダーから生まれたカクテルが、今や世界中に愛されています。
さらにオリジナル酒であるピスコはペルー国民の誇り。
「ピスコの日」はペルー国民にとって特別なお祝いなのです。
おすすめのピスコはこれ!
まだまだ日本では馴染みのないピスコですが、入手は可能です。
「神の美酒」とも言われ、世界中で愛されるブランデー、おすすめをご紹介したいと思います。
ピスコ タカマアチョラード
タカマ社はペルーで有名なワインメーカーです。
そのタカマが造るこちらのピスコは「アチョラード」。
様々な品種をまぜ、濾したものですね。
別名「アンデスの悪魔」とも呼ばれているこのピスコ、2009年にはスペインの「ワイン&スピリッツコンテストで金賞を受賞しています。
アルコール度数は少し高めの44度。
程よいブドウの香りが特徴で、カクテルとの相性も抜群です。
もちろんピスコサワーにも!
ピスコ タベルネロケブランタ
こちらも南米では有名な、ペルーの老舗ブランド「タベルネロ社」のピスコです。
甘酸っぱさと口当たりの良さが特徴です。
「ピスコ タベルネロケブランタ」はペルー産のケブランタ種を100%使用。
ほのかに甘い上品なブドウの香りが楽しめます。
アルコール度数は41度。
定番銘柄ですので、ピスコを試す際にはまずこちらから始めるのがおすすめですよ。
まとめ
「ピスコサワー」が有名なペルーのブランデー「ピスコ」ですが、他にも美味しそうなカクテルがあるんです。
ペルーのパッションフルーツ「マラクヤ」を使用した「マラクヤサワー」、滋養強壮で有名な「マカ」を使用した「マカサワー」など、レストランやバーでは様々なオリジナルピスコカクテルを楽しめるそう。
中には「マチュピチュ」なんて名前がついたものもあります。
まさしく「ピスコ」はペルーの国民的ブランデーといえますね。
いつものコニャックやアルマニャックではないものをトライしてみたくなったら、ぜひこちらのペルー産ブランデー「ピスコ」を試してみて下さいね。