アメリカ・ニューヨークから!バーボン新時代は始まっている?
バーボンはケンタッキーのもの。
そんな考えはもう古いかもしれません。
近年、酒類の法律の規制緩和によって、アメリカ北部ニューヨーク州では小規模蒸留所が少しずつ増え始めています。
そうした蒸留所では、古いしがらみにとらわれることなく、新しいバーボンやその他のスピリッツが生み出されているのです。
オリジナリティが売り物のバーボンとは、一体どんなものでしょうか。
目次
バーボン市場の拡大!
近年、「ブラウン・リカー」と呼ばれるアルコールの消費が増えています。
いわゆるウイスキーなどですね。
中でもバーボンの売り上げは高く、消費者に人気がある事がわかります。
そんな状況を鑑みてか、2009年にニューヨーク州では酒類製造に関する規制緩和が行われました。
これによって、いくつかの小さな蒸留所が誕生しました。
伝統はまだまだ浅いけれど、新しさとスタイリッシュさでは本家を上回るニューヨーク州の蒸留所。
近年のニューヨークのカクテルブームもあって、蒸留所はまずまず順調に販売を行っているようです。
ニューヨークのバーでは…
現代カクテル発祥の地とも言われるアメリカですが、近年のニューヨークはその時代を彷彿とさせるカクテル人気。
もともとバーボンのようなアメリカンウイスキーはカクテルと相性が良いとされてきました。
バーでは様々なカクテルが楽しまれています。
そんなニューヨークのバーで流行しているコンセプトは「禁酒法時代」。
1920年代、禁酒法によって大っぴらにお酒が飲めなかった時代の、隠れ家的なバーが大好評だそうです。
古き善き時代のジャズと食事を楽しみながら、ひっそりと現代のカクテルを頂く…。
そんなコンセプトには、地元蒸留所のスピリッツが一番はまるのかもしれませんね。
キングスカウンティ蒸留所(Kings County Distillery)
法の規制緩和後、一番初めにできた蒸留所がこのキングスカウンティ蒸留所です。
ニューヨークの蒸留所の中では一番の古株となるわけですが、創設は2010年。
ケンタッキー最古の蒸留所「ウッドフォード蒸留所」ができたのは1812年と言われていますから、それと比べるとかなり新しいですよね。
この蒸留所があるのはニューヨーク州ブルックリン。
ウイリアムズバーグ地区に、たった30平米の面積で製造と販売を始めました。
経営者はコリン・スポールマンと、デヴィッド・ハスケル。
ハスケルは「NEWYOEKMAGAZINE」の編集者でもあります。
製造の際、彼らが重要視しているのは「地元」です。
原材料はニューヨーク州北部のFinger Lakesで有機栽培されたもののみを使用。
トウモロコシも大麦も、全てニューヨーク州内のもののみにこだわっています。
商品の販売先も地元ブルックリンがメインといいますから、まさに地元密着型の蒸留所と言えますね。
蒸留所はこんなところ
蒸留所があるウイリアムズバーグ地区はニューヨークでも古くからの歴史を持つ地域です。
そこから蒸留所の歴史は始まったわけですが、2012年には歴史あるブルックリン海軍工廠の中の主計官用建物に引越ししました。
スコットランド産のポットスティルを輸入し、ニューヨーク産の原材料を用いて製造を行っています。
2階建ての上階はミニ博物館ともいえる場所。
禁酒法時代のスティル、新聞の切り抜きなど、ニューヨークにおける蒸留酒の歴史にかかわるものが展示されています。
また、蒸留所から少し歩くと、テイスティングルームと従業員や訪問者用のバーがあります。
この建物もニューヨークの工業史跡ともいえるもので、アンティークでクラシックな雰囲気が楽しめます。
バーではキングスカウンティ蒸留所のバーボンやウイスキーがストレート、またはカクテルで頂くことができます。
特に人気があるのは人気アイスクリーム店「ピープルズポップ」のアイスクリームをチェイサーにして飲む事。
ブルックリンでは企業同士のコラボがさかんだそうですが、アイスクリームとウイスキーのコラボというのはなんだかおもしろいですね。
キングスカウンティ蒸留所のおすすめバーボンは…
創業以来高い評価を受け、数々の賞を獲得してきたキングスカウンティ蒸留所。
現在製造されているのは主にバーボン、ムーンシャイン、ウイスキー。
その中で、おすすめバーボンを見てみたいと思います。
キングスカウンティ バーボン・ウイスキー
ものすごくシンプルなボトルに入った、シンプルなラベルのバーボンです。
シンプルさがスタイリッシュすぎるというか、ワイルドなイメージのバーボンが洗練されたものに見えてきます。
このバーボンの原材料はニューヨーク産の有機コーンと英国からとりよせた麦芽大麦。
アメリカンオーク樽の中で熟成させます。
新鮮なコーンの甘く豊かな香りと、オーク樽由来のキャラメルのような香ばしさが特徴です。
ベースはバニラやカラメルのスイートさ、糖蜜です。
そこにシナモンやスパイスの複雑な味わいが混ざり、素晴らしいバランスを生み出しています。
2013年と2014年に「ADI Craft Spirit Awards」にてシルバーメダルを受賞しました。
キングスカウンティピーティッド・ バーボン
2016年に「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション」においてダブルゴールドメダルを受賞しました。
よりスモーキーなピーテッド麦芽を使用しています。
スコティッシュ・モルトウイスキーに一般的な製法です。
ピートの強いバーボンというのはあまりなく、この蒸留所のオリジナリティが出ていると言えますね。
カラーは深い琥珀。
甘いオークとコーンの香り。
ダークチョコレートのようなまったりとした味わい。
スモーキーさとスパイシーさが微かに残ります。
ブラックダート蒸溜所(BlackdirtDistillery)
この蒸留所はマンハッタンから車で一時間の、ニューヨーク州ワーウィックにあります。
もともとはワイナリーがありましたが、2012年にワイン、バーボン、アップルジャックを製造する一大拠点として統合し、経営を開始しました。
さらに2016年には30キロほど離れたウッドベリーコモンに「ブラックダートバーボンバーン」をオープン。
ここでは販売の他、テイスティングなども行っています。
ウッドベリーコモンにはハイエンドブランドのアウトレット施設もあるため、多くの買い物客が買い物ついでに蒸留所の製品を楽しんでいます。
ブラックダート地域とは…
もともとは湿地で、120000年前の氷河期には湖がありました。
土壌は大変豊かで、栄養分が豊富です。
そしてその名のとおり土は真っ黒。
しかし土地が豊かであるので、作物の栽培には適しています。
ニューヨーク地域の玉ねぎの半分はこのブラックダート地区で造られています。
そしてそんな豊かな土地だからこそ、バーボンの原材料も素晴らしいものが手に入るというわけですね。
Black Dirt Bourbon Batch #3
ブラックダートバーボンは80%のブラックダート産トウモロコシ、12%の麦芽大麦、8%のライ麦で造られています。
発酵後、ドイツ製のポットスティルで蒸留され、アメリカンオーク樽にて最低3年間熟成させます。
これはブラックダート蒸留所の3番目のバッチとなるバーボンです。
カラーは綺麗なハチミツ色。
カラメル、タフィー、バニラの風味が楽しめます。
さらに、ローストコーン、ナッツ、ハチミツが口に広がり、スパイシーなライ麦がアクセントとして残ります。
Black Dirt Bourbon Batch #5
こちらも最低3年熟成させたバーボンです。
5番目のバッチのものですね。
ライ麦の味わいが強く、甘ったるいバーボンが苦手な方におすすめです。
まとめ
新しいバーボンのキーワードは「地元」ではないでしょうか。
小さな蒸留所は地元と自身の品質にのみ目を向け、ワールドワイドな製品になることは望んでいません。
そのため、個性豊かでオリジナルな味わいが楽しめるのですね。
ブラックダート蒸留所の方は日本で探すのは難しそうです。
しかし、キングスカウンティ蒸留所のバーボンなら通販でも取り扱いがあるようです。
ニューヨークで人気のちょっとおしゃれなバーボンに興味を持たれたら、是非探してみて下さいね。