ウイスキー業界の伝説、ジム・スワン博士と素晴らしい蒸留所のおすすめ。
ウイスキーファンなら、ジム・スワン博士の名前をご存知の方は多いのではないでしょうか。
世界各地の蒸留所でコンサルタントを務め、数多くの有益なアドバイスを行ってきたウイスキー業界のお助け屋です。
そんなジム・スワン博士は2017年2月14日、エジンバラの自宅で突然の死を迎えました。
突然の出来事にウイスキー業界には大きな衝撃が走っています。
彼が手掛けた多くの有名な蒸留所と、おすすめウイスキーを見てみたいと思います。
ジム・スワン博士ってどんな人?
ウイスキー業界では次々と新しい試みや蒸留所が立ち上がっています。
ジム・スワン博士はそうした新しい試みや新興の蒸留所に最良で現実的なアドバイスを行ってきました。
スワン博士は世界飲料業界のコンサルタントです。
英国王立化学学会のフェローであり、醸造と蒸留研究所のフェローシップを受賞しました。
彼の専門にはオーク樽での熟成、蒸留、ブレンディングなどがあります。
多くの化学論文の著者であり、国際ワインアンドスピリッツコンペティションのパネル委員長裁判官でもありました。
そんなスワン博士の協力のもと、素晴らしいウイスキーを生み出すに至った蒸留所は数多くあります。
彼の功績を称え、「Whisky Advocate」は2005年、博士に「Pioneer of the Year」賞を与えました。
世界各地でウイスキーの発展に尽力した功績が認められたのです。
ジム・スワン博士の略歴
ジム・スワン博士は1979年にヘヘリオットーワット大学を卒業し化学及び生物科学の博士号を得ています。
1970年代から80年代にかけては英国政府とEUの資金提供を受けたプログラムの管理も行っていました。
また、ウイスキー愛好家からは1980年代のフレーバーホイールの原著者の一人として知られています。
化学分析コンサルタント「atlock and Thomson」に勤めました。
ここでスコッチウイスキーの仕事にいくつか携わります。
そのため、博士はやがてウイスキーの研究開発と蒸留所の問題解決という仕事に向かうようになりました。
仕事上他の酒造メーカーとの接触が増え、様々なワインメーカーや飲料会社と共に働いた経験が製造工程を理解する上で大きな役割を果たしたと言います。
他に類を見ないウイスキー専門のアドバイザーということで、ジム・スワン博士は各地でひっぱりだことなりました。
彼は常にウイスキー業界の先頭に立ち、革新的な役割を果たすようになったのです。
カバラン蒸留所
こちらは台湾にある蒸留所です。
ジム・スワン博士が係わった中でも特に有名なものです。
2005年創立という比較的新しい蒸留所ですが、造られたウイスキーのクオリティの高さは世界中のファンを驚かせました。
温暖な気候の台湾でウイスキー造りを始めたのは台湾の有名飲料メーカー「金車グループ」。
もともとはコーヒーや乳飲料などを作る会社で、ウイスキーとは全く縁がありませんでした。
ですから、発案当初は多くの反対意見が起こったといいます。
しかし、台湾で素晴らしいウイスキーを造りたいという熱意のもとグループは世界各地を回り、様々な施設を訪れました。
その中には本場・スコットランドや日本も含まれています。
100種以上の銘柄を評価したうえで、グループはウイスキー造りの為の研究開発チームを立ち上げます。
その際グループに専門的知見と提案を行うべく呼ばれたのがジム・スワン博士だったのです。
以後も博士自らスピリッツの点検に訪れ、定期的に蒸留所のチェックを行っていました。
博士のアドバイスのもと、温暖な気候の台湾で造られるウイスキーは、本場スコットランドよりも短い熟成期間で芳醇なウイスキーが出来上がりました。
そのクオリティは専門家をうならすもので、創立からわずか5年の2010年には「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション」でゴールドメダルを獲得しました。
さらに同年、「ワールド・ウイスキー・アワード」でも賞を受賞しています。
現在蒸留所ではウイスキーの本場・スコットランドから直接輸入した蒸留器や欧米の有名蒸留所から借り受けた貯蔵樽のおかげで、年間900万ボトルもの生産が可能になりました。
スコットランド伝統の製法と、高度な科学技術の両方を用いて高い純度と品質の最高級ウイスキーを造り続けています。
KAVALANSingle Malt Whisky
スコッチの専門家をも唸らせた、カバランのシングルモルトウイスキーです。
宣蘭県員山(ぎらんけん いんざん)の雪山(せつざん)山脈から湧き出る甘味を含んだ上質な水で造られています。
台湾独特の亜熱帯気候により、深い熟成と円熟味が感じられる逸品です。
2010年に「タイムズ」主催の「バーンズナイト」のブラインドテイストテストでトップの評価を受けました。
カラバンの名前が世界に認識されるきっかけともなったウイスキーです。
アルコール度数は40度。
カラー:鮮やかな琥珀。
香り:南国のフルーツ、バニラ、ココナツ、チョコレート。
味わい:マンゴーのまろやかさの後に柑橘系の後味が残る。
KAVALANsolistex-bourbonsinglecaskstrength
バーボン樽を使って熟成されたシングルモルトウイスキーです。
2010年のワールド・ウイスキー・アワードにてゴールドメダルを受賞しましたさらに2013年には同コンペティションでゴールドメダルとウイスキートロフィーを受けています。
アルコール度数は57.8度。
カラー:ビビッドな黄金色。
香り:トロピカルフルーツ、ココナッツ、バニラ、ウッドスパイス。
味わい:シルクのようななめらかな舌触りでまろやか。
バニラやオークの味わい。
ペンダリン蒸留所
こちらは最近復活を遂げた、ウエールズのウェルシュ・ウイスキーの蒸留所です。
もともとウエールズはアイルランドやスコットランドと並ぶウイスキーの産地だったのですが、他の二つとは異なり衰退の一途をたどりました。
19世紀にはウエールズにある全ての蒸留所は生産を中止してしまいます。
1887年以降完全に途絶えてしまったウェルシュ・ウイスキーを復活させたのがこのペンダリン蒸留所。
現在世界でただ一つしかないウェルシュ・ウイスキーの蒸留所なのです。
ウェルシュ・ウイスキーの特徴はなんといってもハーブ。
天然のハーブによるフィルター濾過を行うため、ハーブが香る芳醇なコクと柔らかい飲み口が楽しめます。
ウイスキーのスモーキーさが苦手という方や、ウイスキー初心者におすすめなのです。
ジム・スワン博士はこのペンダリン蒸留所の創設より関わっています。
ペンダリン蒸留所独特のシングルモルトを生み出したマスターブレンダーでもあったのです。
PenderynMadeira
蒸留後の原酒をまずバーボン樽に寝かせ、その後マデイラワイン造りに使用された樽で熟成させたウイスキーです。
熟成期間はおよそ5年。
マデイラワインの甘さや口あたりが感じられ、飲みやすいことからとても人気があります。
カラー:淡いゴールド。
香り:クリームトフィーや芳醇なフルーツ、レーズンの香り。
味わい:まろやかで優しい口当たり。
口に含むとトロピカルフルーツやバニラの甘さが広がる。
2014年サンフランシスコワールドスピリッツコンペティションにて銀メダルを受賞しました。
Penderyn Portwood
こちらはフランスにファンが多く、もともとはフランス限定で造られたものでした。
しかし、人気が高まったため、通常販売されるようになったウイスキーです。
カラー:美しい琥珀。
香り:ドライフルーツとチョコレートの濃厚な香り。
味わい:ハチミツとスパイスの複雑な味わい。
オークとハチミツの甘さが残る。
2016年ワールドウイスキーマスターズのヨーロッパシングルモルトプレミアム部門にてゴールドメダルを受賞しました。
まとめ
ウイスキー業界では新しい革新を求めて、世界中で様々な試みが試されています。
ウイスキー造りには向かないとされてきた温暖な気候のもと素晴らしいウイスキーを生み出したカバランや失われた時を復活させたペンダリンはその代表とも言えます。
ジム・スワン博士はどちらも創設から立ち合い、その発展に尽力してきました。
結果、カバランもペンダリンも世界で認められる品質のウイスキーを生み出しました。
博士の専門知識とアドバイスがなければ、それはなしえなかったことでしょう。
他にも博士の携わった蒸留所はたくさんあります。
興味を持たれた方は、そんな蒸留所で生まれたウイスキーを試してみて下さいね。