ジャパニーズドリーム? 日本発イチローズ・モルトウイスキーのおすすめ!
世界的なウイスキーブームを受けて、日本でもあちこちに地ウイスキーを造って販売する業者が増えてきました。
しかしそれらのほとんどは地元の酒造メーカーのオマケのようなもので、ウイスキー専業で造られているわけではありません。
町おこし、村おこしの一つですね。
ちょうどNHKの朝ドラでそこら中がプチウイスキーブームでしたし、なんとか乗っかっておこうという感じでしょうか。
実際のところ、日本のウイスキー市場は9割をサントリーとニッカウヰスキーが占めています。
新規参入はなかなかに厳しそうに思えます。
そんな中、小規模ながら世界的に高い評価を受けている蒸留所があります。
それが「イチローズ・モルト」を生み出している、秩父蒸留所です。
どんなウイスキーを製造しているのか、見てみたいと思います!
海外ファン垂涎の的?プレミアがついたウイスキー
ジャパニーズウイスキーと言えば、近年は世界中から高評価を受け、すっかりワールドワイドになってしまいました。
山崎は世界にターゲットを定めたのか、海外限定のモデルをリリースしていましたよね。
海外からの熱い視線を受けるジャパニーズウイスキーですが、評価が上がるとともにお値段もうなぎ上り。
これはジャパニーズに限らず、ウイスキー全般にいえることですが、プレミアもののウイスキーには大層な値段がついてしまうのです。
例えば、サントリーで限定販売した「山崎50年」のファーストロットは、香港のオークションで300万円もの値が付きました。
これを受けて他の山崎の価格も上昇。
もはや一般人が楽しむどころではありませんね。
しかし、この「山崎50年」の300万円をも上回る金額で落札されたのが、秩父蒸留所の「カードシリーズ」です。
こちらは5本セットの「ロイヤルストレートフラッシュ」というもので、落札価格はなんと500万円を超えました。
日本の小さな蒸留所で造られたウイスキーが、大手に負けない評価と人気を受けているというのはすごいことですよね。
どんなメーカーが造っているの?
秩父蒸留所を保有し、「イチローズ・モルト」などの人気ウイスキーを造りだしているのは埼玉県秩父市にある「ベンチャーウイスキー」。
国内唯一のウイスキー専業メーカーです。
創業は2004年で、蒸留所は3年後の2007年に造られました。
すごいことに、一本平均1万もするウイスキーは市場に出れば即完売、創業以来黒字経営が続いているそうです。
中には予約だけで売り切れてしまうものもあります。
そんな「ベンチャーウイスキー」ですが、創業まではなかなかにご苦労も多かったようです。
創業者、肥土伊知郎氏(あくといちろう)の実家はもともと古い酒蔵でした。
1625年からといいますから、かなりの老舗ですよね。
そんな老舗酒蔵も、不況を受けて経営が悪化してしまいます。
肥土氏は営業権を他社へ引き渡しました。
その時、大切な4000樽ものウイスキー原酒は廃棄されることになってしまいます。
原酒を諦めきれなかった肥土さんは、方々に原酒の保管を頼んでまわりました。
なんとか引き受けてくれたのは、福島県の笹川酒造。
そこに原酒を預けて、自身は「ベンチャーウイスキー」を起業しました。
当時の肥土さんはウイスキー取り扱いの免許もなく、元手もなかったそうです。
それでも諦めず手を尽くし、蒸留所設立まで全力を注ぎました。
地道に日本全国を営業・視察して回ったり、本場スコットランドへも視察に行きました。
そうした努力おかげで2008年、念願の秩父蒸留所を立ち上げることができたのです。
秩父蒸留所のこだわり
秩父蒸留所はその名の通り、埼玉県秩父市にあります。
「ベンチャーウイスキー」の肥土氏は、日本全国を歩き、ウイスキー造りに適した場所を探していました。
そして結局、地元である秩父に落ち着いたのです。
秩父は水も空気も良く、なんといっても地元の支援が得られたからというのが大きな理由です。
やはり人の繋がりが大切ということですよね。
夏は高温多湿、冬は氷点下になるという厳しい環境ですが、これがウイスキーには良かったようです。
短期間での熟成でも、風味よくまろやかなウイスキーが仕上がります。
さらにスコットランドやケンタッキーといった本場とは全く違った熟成を見せ、秩父にしかないオリジナルなウイスキーが出来上がりました。
オリジナルなウイスキーが出来る秘密は、気候以外にもあります。
蒸留所の設備です。
特にこだわったのは、製造において最も重と言えるポットスティル(蒸留器)です。
こちらは本場スコットランドのメーカーから直輸入しています。
わずかな形状の違いが大きな差を生むこの器械、日本のメーカーに製造をお願いする事もできたそうですが、そのデリケートさ故に断念したそうです。
さらに樽にもこだわりが。
サントリーなどでも使われる、ジャパニーズウイスキーの象徴ともいえる木材ですね。
そうです、ミズナラが使われています。
この日本古来の木材を使うことにより、ウイスキーは独特の風味を持って完成します。
海外の愛好家たちに言わせると、まさに「オリエンタル」。
まさしくオリジナルな味わいです。
ベンチャーウイスキーの革新的こだわり!
ポットスティルはスコットランドの特注品、樽はミズナラ。
こだわりは随所に見られますが、大手と異なるのはやはり樽でしょうか。
先ほどミズナラ、と記しましたが、他にもアメリカン・オークやシェリーなど、様々な樽が、大きさもバラバラに熟成庫に並んでいます。
これは熟成の過程で様々な樽を試しているのです。
多様な熟成、熟成の程度など、樽ごとの様子を見ます。
大手では大きさや種類はきっちり揃えておかれていますから、この様子も小規模蒸留所ならではと言えるのではないでしょうか。
さらにすごいのは、樽の自社生産にチャレンジしているということ。
熟成庫から少し離れたところには、樽を造る工場があるのです。
廃業した樽生産会社から、ドイツ製の樽製造機をもらい受けたそう。
ウイスキーの生産樽は全世界的に不足していて、買い付けも大変とか。
自社生産で満足のいくものが出来れば、さらにオリジナル色の強いウイスキーが出来上がるのではないでしょうか。
イチローズ・モルトのおすすめ!
世界的にもファンが広がっているイチローズ・モルトは入手困難で、「秩父のバーでしか飲めない」と言われるほど。
一応通販で取り扱っているところもあるようなので、興味がわいたら是非、チャレンジしてみるのはいかがでしょう。
おすすめをいくつか見てみたいと思います。
イチローズ・モルトMWR(ミズナラウッド)リーフラベル
2010年ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)において、ベスト・ブレンディッド・ジャパニーズモルト(NOAGE)を受賞しました。
使用している原酒は、肥土氏が大切に保管していた実家の原酒、羽生蒸留所モルトです。
こちらをキーモルトとして、数種のモルトをヴァッティングし、ミズナラリザーブバットで再熟成しました。
カラーは褐色を帯びたゴールド。
ピーテッドモルトが多用されているため、スイートさが引き立ちます。
口に含むと奥深い甘みが広がり、やがて複雑な味わいとピート感が広がります。
人工着色料は使わず、冷却濾過も行っていません。
ウイスキー本来の味を楽しむことが出来ます。
イチローズ・モルトダブルディスティラリーズ
2009年ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)において、ベスト・ブレンディッド・ジャパニーズモルト(NOAGE)を受賞しました。
こちらも着色料無し、冷却濾過無しです。
鮮やかな飴色のカラーです。
使われているのは羽生蒸留所モルトと秩父で造られたモルト。
これをミズナラ樽に入れて熟成させました。
わずか1年程度の熟成ですが、秩父の気候のおかげで数年熟成のものに負けないまろやかでしっかりとしたコクを味わえます。
カードシリーズ
こちらはボトルにトランプの絵が記された、シリーズウイスキーです。
ハート、スペード、クローバー、ダイヤ、そしてジョーカーがあります。
羽生蒸留所モルトをホグスヘッド樽に貯蔵した後、最後の数か月は様々なカスクにてフィニッシュさせています。
2つの樽による熟成のおかげで、味わいに深みと複雑さが生まれました。
樽出しの味わいを守るため、こちらも無濾過、無着色、無加水で仕上げています。
6つのボトルそれぞれに違った個性がありますので、それぞれ試してみるのがおすすめですよ。
ただし、1シリーズ200本~400本という希少性の高いものですから、入手困難かもしれません。
特に「ジョーカー」は羽生蒸留所モルトの最後を意味する貴重な一本のため、少量限定生産でした。
コレクター垂涎のアイテムとなっていますね。
めぐり合うのは奇跡に近いかもしれません。
まとめ
秩父ならではのオリジナルウイスキー、試してみたいですね。
かなり話題になったので、一時期は入手困難でしたが、現在は少し緩和されているようです。
ネット通販なら、適正価格で売っているところも多いです。
前述のカードシリーズは無理でも、イチローズ・モルトのシリーズなら手に入りますよ。
まだまだ今後が注目されるイチローズ・モルトウイスキー、おすすめです!