ブレンディッド・ウイスキーって何? おすすめ銘柄は?
穀物を原料に発酵・蒸留したお酒がウイスキーですが、原料を大麦麦芽(モルト)のみで作ったのがモルト・ウイスキー、トウモロコシ、小麦などの穀類と麦芽を原料にしたのがグレーン・ウイスキーです。
風味の個性が強いため、ラウド・スピリッツと呼ばれまれるモルト・ウイスキーと、風味が軽く穏やかなサイレント・スピリッツとよばれるグレーン・ウイスキーを、それぞれの持ち味を活かしながら、まろやかな香りと味にブレンドしたウイスキーが、ブレンディッド・ウイスキーです。
ブレンデッド・ウイスキーの製造方法
モルト・ウイスキー
大麦を発芽させて、熱風・乾燥して発芽を止めた状態を麦芽といい、ウイスキーの重要な香味要素となります。
麦芽を粉砕しお湯と混ぜ、麦芽の酵素でデンプンを糖化し、できた麦汁を酵母で数日間発酵させると、アルコール濃度7%程度の発酵液ができます。
発酵が終わるとポットスチルとよばれる銅製の単式蒸溜器を使って2回蒸溜して、アルコールを70%程度まで濃縮します。
銅製の蒸留器を使うのは硫黄の香りを除去するためで、液色は無色透明、エステル香を多く含んだ蒸留液になります。
その後、木製樽の中で長期間貯蔵しますが、樽の材質、内側の処理、樽のサイズ、貯蔵庫の気温や湿度などによって熟成状態はさまざまに変化します。
熟成するにつれてフルーティーなエステル類、ボディーのもとになるタンニンが増していき、熟成香味だけでなく、液色も琥珀色に変わっていきます。
また、樽材の成分から甘い香りのバニリンなどの芳香物質が生成し、刺激臭の強いアルデヒドや、硫黄分は減少していきます。
グレーン・ウイスキー
トウモロコシ、ライ麦や小麦など穀物が原料で、粉砕した原料に水を加えて加熱し、デンプンが糊状になったところで麦芽を加え、麦芽の酵素でデンプンを糖化します。
できたもろみを数日間、アルコール濃度8~10%程度まで発酵させた後、マルチカラムとよばれる多塔連続式蒸留機を使って、アルコール濃度を90~95%程度まで高めて、味や香りが少ないライトなグレーン原酒を造ります。
グレーン・ウイスキーはモルト・ウイスキーとブレンドして風味を出すための原酒ですから、個性が抑えてあります。
蒸留後、モルト・ウイスキーと同様に木製樽の中で長期間貯蔵します。
ブレンド
熟成が最高の状態を迎える年数は、原酒、樽、気候、貯蔵庫内の位置によって様々ですが、熟成状態を見極めて原酒の樽を開け、個性の強いモルト原酒と、香味がライトなグレーン原酒をブレンドします。
一般的なブレンデッド・ウイスキーで20~40種類の原酒が調合されます。
ブレンダーが原酒の個性を十分に把握し、理想のウイスキーを目指して原酒を調合することで、ウイスキーの風味の幅が格段に広がるのです。
蒸留所毎のブレンド技術を代々受け継ついだ職人が、製造工程の最後にその技術を発揮するのがブレンディッド・ウイスキーだといえます。
ブレンデッド・ウイスキーの銘柄
スコッチ・ウイスキーの売り上げの約90%を占めるのがブレンデッド・ウイスキーです。
ジョニーウォーカー、バランタイン、シーバスリーガル、J&B、オールド・パー、ホワイトホース、カティサークやブラック&ホワイトなど、ほとんどのスコッチ・ウイスキーがブレンデッド・ウイスキーです。
ジャパニーズ・ウイスキーでもサントリーの響、ローヤル、リザーブ、オールド、角瓶などがブレンデッドで、ニッカでは伊達、ザ・ニッカ、ブラックニッカ、フロム・ザ・バレルなどがあり、キリンでは富士山麓50°、ローバートブラウンがブレンデッド・ウイスキーです。
アイルランドではポット・スチルにグレーン原酒をブレンドしたウイスキーが主流で、タラモア・デュー、ジェムソン・スタンダード、パワーズ・ゴールドラベルなどがあります。
カナダでも、C.C.の愛称で親しまれているカナディアンクラブなど、ライ麦を原料にしたフレーバリングとグレーン(ベース)をブレンドしたウイスキーが主流です。
スコッチ・ウイスキーのおすすめ銘柄
ジョニーウォーカー・黒ラベル
四角いボトルに斜め24度でに貼られたラベルでお馴染み、世界で一番売れているスコッチ・ウイスキーで、往年のファンには黒ラベルですが、赤ラベル、緑ラベル、ゴールドラベル、プラチナムラベル、青ラベルなど多くのラインナップがあります。
おすすめしたいのは、もちろんジョニ・黒12年、手ごろな価格になりました。
ピート香、蜂蜜の甘さなどスコッチ・ウイスキーの特徴を一瓶のボトルにまとめた逸品で、まろやかでクセがなく飲みやすいウイスキーです。
数十種類のモルト原酒がブレンドされて造られていますが、キーになるモルト原酒は、カーデュ(スペイサイド)、タリスカー(アイランズ)、ラガヴーリン(アイラ)などです。
モルト・ウイスキーとして販売されているのもがありますから、ジョニー・黒と飲む比べてみるのも面白い飲み方かもしれません。
バランタイン・17年
おすすめはバランタイン17年で、1937年の誕生以来、ザ・スコッチと称えられ、バランスのとれた気品ある優雅な香りと味わいが世界中の愛飲者から高い評価を受けています。
キーとなる7つのモルトを指して「バランタイン魔法の7柱」とよびますが、スコットランドの各地からモルト原酒とグレーン原酒を40種以上厳選し、ブレンドした贅沢なスコッチです。
華やかでまろやかな味わい、クリーミーで蜂蜜のような甘味、豊かで力強く瑞々しさのある逸品で、5人のマスターブレンダーによって引き継がれたブレンド技術が味わえます。
シーバスリーガル 12年
ブレンデッド・ウイスキーの定番、シーバスリーガル12年は癖がなく、ストレートやロックでも飲みやすいおすすめのウイスキーです。
値段も手頃で、ハーブ、蜂蜜、フルーティーな香りとバニラとヘーゼルナッツの風味、熟したリンゴと蜂蜜のような甘さ、クリーミーでまろやかな味わいから、ウイスキーの女王よばれるウイスキーです。
キーモルトは、スコットランド・スペイサイドにあるストラスアイラ蒸留所で作られたモルト原酒で、エステル香とリンゴと蜂蜜のような甘い香りと味わい、樽由来のウッディさが特徴です。
ジャパニーズ・ウイスキーのおすすめ銘柄
響
サントリーが世界に誇るブレンデッド・ウイスキーの最高峰、響がおすすめです。
名水が湧き出る京都・山崎と甲斐駒ケ岳の麓・白州蒸溜所で蒸留されたモルト原酒、伊勢湾に臨む知多蒸溜所で造られるグレーン原酒、貯蔵された80万以上の樽の中から厳選された原酒を重ねあわせ、一つにブレンドするのは繊細な感性と細やかな技が必要です。
華やかで柔らかい味わいが、幾重にも広がる複雑で繊細な香味は、ジャパニーズ・ウイスキーならではの美しく調和のとれたハーモニーです。
ザ・ニッカ
ニッカウヰスキーのブレンデッド・ウイスキーのなかで上位に位置する銘柄で、余市と宮城峡蒸留所で蒸留された異なるタイプのモルト原酒と宮城峡のカフェ式連続式蒸溜機で蒸留されたグレーン原酒を、ニッカ社内で受け継がれるブレンディング技術でまとめ上げたプレミアムウイスキーです。
スモーキーさは感じられず、モルトの香り、フルーツのような華やかな香り、甘い熟成香、そしてモルト原酒のコクとグレーンの甘さが調和し、まろやかでスムースな口あたり、伸びのある味わいが楽しめます。
富士山麓
平成28年3月にリニューアルされた富士山麓 樽熟原酒50°がおすすめです。
富士御殿場蒸留所が開設されたのが昭和48年、富士の東側・標高630メートルの斜面に位置し、富士山の良質な湧き水、年間平均気温13℃、平均湿度も60〜70%とウイスキーにとっての理想的な環境が揃っています。
この蒸留所ではモルトとグレーン原酒の仕込みからブレンド、ボトリングまで一貫して製造していて、グレーン原酒はマルチカラム(多塔連続式蒸留機)に加え、ケトル(単式蒸留器)、ダブラー(シーグラム社が開発し、バーボンのスタンダードとなった蒸留器)という3種の蒸留器を併用して造っています。
キリンならでは、最高の技術を駆使したモルト原酒も完成度が高く、柔らかくて深みのある豊かなグレーン原酒も揃っていることで、ブレンドされたウイスキーは幅が広がり、奥の深い香りと味わいが生みだされます。
まとめ
お手頃の価格で、シングル・モルトにくらべて癖のない味わいが特徴のブレンデッド・ウイスキー。
モルトとグレーン原酒を厳選してブレンドしたウイスキーは、奥の深い味わいを秘めています。
ウイスキーの本当の味が理解できるようになり、ブレンダーの目指すウイスキーが得心できるようになると、まろやかに味が調和されたブレンディッド・ウイスキーが深い味わいに変わるのではないでしょうか。
最近、ウイスキーの消費量が回復してきており、国産ウイスキーの原酒が不足しているといわれます。
海外のウイスキーを輸入して、不足分を補なうとの噂ですが、ジャパニーズ・ウイスキー愛好家としてはうれしい半面、寂しいかぎりです。