日本を代表するサントリーのウイスキー その個性の秘密
サントリーのウイスキーというと、どんなイメージをお持ちでしょうか?
ジャパニーズウイスキーは、いまや世界でも人気を集めていますが、その代表的メーカーといえば、ニッカと並んで第一にサントリーの名が挙がります。
大規模な蒸留所において、多種多様な原酒を作っているサントリー、その酒造りと、日本を代表する製品について見ていきましょう。
サントリーウイスキーの特徴
サントリーのウイスキーは、世界でも極めて珍しい特徴を有しています。
これは業界第二位のニッカにも一部当てはまることですが、この二つのメーカーが競っている日本においては、そのまま二社のビジネスモデルのあり方が、ウイスキーの特徴を形作っています。
なにしろ、この二社で日本のウイスキーの9割を占めているのですから、当然でしょう。
世界のウイスキーと違う、サントリーの特長はどこにあるのでしょうか。
見ていきましょう。
蒸留所を3か所持っている
日本のウイスキー、中でもサントリーの酒造りは、極めて大規模な点に特色があります。
ウイスキーの本場、スコットランドに行きますと、有名なメーカーでも蒸留所は小規模なものです。
小規模な蒸留所では、多種多様なモルトウイスキーを製造しています。
モルトウイスキーは単式蒸留器で蒸留され、原材料の大麦の味わいが濃厚なウイスキーです。
大手酒造メーカーは、モルトウイスキーを買い付けて、連続式蒸留器で作られるグレーンウイスキーとブレンドして、世界に知られるスコッチを作り出しています。
各蒸留所は、そこで製造したお酒のみから造るシングルモルトも売り出し、これが人気を詰めています。
ですがもともとは、大手酒造メーカーへ、ブレンド用のモルトウイスキーを販売するのが主たる商売なのです。
ウイスキー作りはこのような分業から始まっているのですが、日本の場合は、他社からの買い付けというものをしません。
なにしろ、自社だけで豊富な種類のウイスキーが作れますので、買い付けてくる必要がないのです。
サントリーは、それぞれ大規模な3つの蒸留所で、個性豊かなウイスキーを作り続けています。
多様なポットスチルによるお酒の作り分け
サントリーの蒸留所のうち2か所では、単式蒸留によるモルトウイスキーを製造しています。
大阪と京都の府境にある「山崎蒸留所」、それから南アルプスのふもと、山梨県小淵沢市の「白州蒸留所」です。
名前を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
2か所の共通点は、いい水があることです。
白州蒸留所は、「南アルプス天然水」の工場が隣にあるくらいで、水には恵まれています。
モルトウイスキーの作り分けは、熟成させる樽の種類と、発酵段階にもよりますが、それ以前に蒸留釜(ポットスチル)の形によるところが大きいのです。
ポットスチルは、実に様々な形をしています。
同じ原料から、異なる味わいのウイスキーが生み出されるのです。
これについては、規模の大きさがものをいいます。
山崎蒸留所、白州蒸留所には、それぞれ8対16基のポットスチルが用意されています。
ふたつの蒸留所では、シングルモルトも作っていて世界的な人気を集めています。
蒸留所と同じ名前の「山崎」「白州」です。
これを作り上げるためのモルト原酒も豊富な種類があるわけです。
モルト原酒どうしを混ぜるのは、ブレンドでなくヴァッティングといいますが、ヴァッティングするお酒が豊富なので、品質も安定させられ大変有利です。
木桶とステンレス桶
ウイスキーも、蒸留段階の前に発酵があります。
この時点での酒造りは、ビールとよく似ており、発芽大麦を糖化させ、アルコールを生み出すものです。
この際の作業は発酵桶でおこないます。
山崎、白州の蒸留所では、発酵桶も2種類あります。
木桶とステンレス桶です。
木桶は手入れが大変で、その点では管理しやすいステンレス桶が有利です。
ですが、木桶には、乳酸菌などの微生物が棲みつくという大きな特長があるのです。
微生物により、ステンレス桶のお酒と異なる風味が生まれるのです。
両方の種類の桶を使うことで、豊かな味わい、多種多様な原酒づくりに貢献しているのです。
サントリーとミズナラ樽
豊富なウイスキー原酒がサントリーの強みですが、この原酒を熟成させる樽にも豊富な種類があります。
シェリーやバーボンをかつて熟成させた樽を使う点はスコッチと同様ですが、さらにサントリーの強みがあり、それはミズナラ樽です。
ミズナラ樽は、戦中戦後にホワイトオークから作った樽が不足し、やむなく日本の木を使った代用品でした。
ミズナラもホワイトオークと近縁ではありますが、性質はだいぶ異なり、そもそも樽を作ること自体困難だったといいます。
そして、ミズナラで熟成されたウイスキー原酒は、当初はまるで評価が得られないものでした。
ところが、2回、3回と熟成に使われるうち、このミズナラで育ったウイスキーが思わぬ変化を見せます。
独特の味わいが生まれてきて、白檀や伽羅といった香木のような香りがでてきたのです。
現在では、ミズナラ樽は日本のウイスキーを個性づける重要な存在となっています。
このミズナラ樽が、サントリーでは豊富にあるのです。
サントリーのシングルモルトを味わう
企業規模の大きさにより、一社で個性豊かなウイスキーを作り上げられる、サントリーのシングルモルトを見てみましょう。
山崎
サントリーのみならず、日本を代表するシングルモルトが山崎です。
山崎だけではありませんが世界的なウイスキーブームにより、品薄なのが残念です。
サントリーが、多様なポットスチルと豊富な種類の樽で、バラエティに富んだウイスキーを作り続けていることについては触れました。
シングルモルト山崎においても、ミズナラ樽のウイスキー原酒を使っています。
えりすぐりの樽から生まれる、甘く華やか、複雑であるが豊かな香りが、山崎の特長です。
山崎蒸留所は、自然に恵まれていながら都会からも近く、見学に便利です。
新幹線からも見えますが、ぜひ一度お出かけください。
白州
白州蒸留所は、山崎と異なり、標高も高い森の中の蒸留所です。
この蒸留所で生まれる、森の香り漂うシングルモルト白州は、今や山崎に匹敵する人気を集めるようになりました。
緑色の瓶からも自然を感じます。
白州は、山崎よりもピート(泥炭)の香りが強く、スコッチに近くなっています。
ピートとは、麦芽を乾燥させる過程で焚くもので、このためにスモーキー香をウイスキーに付けます。
ピートのフレーバーは、ウイスキーにおける大きな個性となります。
ピーティでありながら、山崎よりもやや軽い味わいを持つのが、白州です。
サントリーのブレンデッドウイスキーとグレーンウイスキー
次に、シングルモルト以外のサントリーの代表商品を見てみましょう。
こちらも個性豊かです。
響
サントリー最高峰のウイスキーが、ブレンデッドウイスキーの響です。
響を構成するのは、山崎、白州の両蒸留所、それから知多蒸留所製造のグレーンウイスキーの中から選りすぐられた、エリート原酒です。
ミズナラ樽由来の香りも、響では効果的に使われます。
ブレンデッドウイスキーらしく、甘くまろやかな味わいが響の特色です。
日本を代表するウイスキーは、氷を入れない1対1の水割り(トワイスアップ)で味わうのがおすすめです。
知多
サントリーの蒸留所は3つあると説明しました。
山崎、白州ともうひとつある蒸留所が、愛知県の知多蒸留所です。
こちらはモルトウイスキーを作っている蒸留所と役割が異なり、ブレンデッドウイスキーのボディを形作る、グレーンウイスキーを作っています。
トウモロコシ等を原料に、連続蒸留器で作ったグレーンウイスキーは、通常市場には出ません。
ブレンドのためのウイスキーだからです。
ですが、その大変珍しい、シングルグレーンウイスキーが蒸留所の名を冠した「知多」です。
グレーンウイスキーも、個性はやや弱いものの、非常に多くの樽を持つサントリーでは、ある程度多様な商品が作り上げられるわけです。
グレーンウイスキーらしく、非常になめらかな中の、甘さをぜひ味わってみてください。
まとめ
サントリーウイスキーの特長を、商品とともに見てみました。
ものづくりを大きな規模でおこなうと聞きますと、画一的、大量生産というイメージが浮かぶものです。
ですが、ウイスキーに関しては、規模の大きさは、バラエティの豊富さにつながるのだということがおわかりいただけたでしょうか。
ウイスキーに興味を持った方は、世界各地のウイスキーとともに、日本を代表するサントリーにもぜひ着目してみて下さい。