スコッチウイスキーその魅力と楽しみかた
世界的なウイスキーブームが再来し、年間11億本以上の輸出を誇るスコッチウイスキーの中でも、ウイスキーファンの中では垂涎の的ともいえるシングルモルトウイスキー。
各地域や蒸留所ごとに様々な性格を主張し楽しませてくれる、この琥珀色に輝く液体は、友との語らいの潤滑油として、パートナーとの親睦を深めるツールとして、独居を優雅に楽しむ相棒として、今日も世界中で飲み継がれています。
日本ではクルマ事情もあり低アルコール化、若者のアルコール離れが進んでいますが、この奥深く魅惑の世界へ誘う素敵なお酒をもう一度見直してみたいとおもいます。
目次
スコッチウイスキーとは
ウイスキーの代表格と言われるスコッチウイスキーはイギリス北部のスコットランドで造られます。
面積・人口共に日本の北海道とほぼ同じですが、130もの蒸留所がひしめいている、まさしく「ウイスキーの聖地」です。
世界で最も古いと言われるお酒の一つにワインがありますが、北緯55度もあるこの地域ではブドウが取れず、大麦やライ麦でお酒を造る事を始めました。
後にアルコール濃度を高める蒸留技術が発明され、国の理不尽な課税を逃れるために樽に入れて隠しておいた所、長期保存により色と味わいに深みが増す事を発見し、あの香しい高貴な酒が誕生しました。
蒸留酒はラテン語で「アクア・ヴィテ」(生命の水)と呼ばれていましたが、この土地のゲール語で「ウシュクベーハー」と呼ばれ、18世紀頃から「ウイスキー」と呼ばれるようになりました。
スコッチウイスキーの造り方
大麦に水を吸わせて発芽させ、大麦麦芽(モルト)を造りピート(泥炭)を燃やし乾燥させます。
この時スコッチウイスキー独特の、あの香しいスモーキーフレーバが付きます。
乾燥した麦芽を粉砕して温水に漬けこむと麦芽のでんぷん質が糖化酵素により甘い「麦汁」となります(自然な甘さでこれがまたおいしい!
ぜひ市販していただきたいものです)この麦汁に酵母を加えると酵母菌により「ウオッシュ」と呼ばれる7~8%のアルコールつまりビール・ワイン・日本酒と同じ「醸造酒」となります。
これをポットスティルと呼ばれる釜で蒸留すると水分が飛んでアルコールが凝縮され、高アルコールの「蒸留酒」が出来上がります(ジンやウオツカ、日本の焼酎も同様の酒類です)これを樽に入れて長年貯蔵し、あの琥珀色のかぐわしいウイスキーとなります。
スコッチウイスキーの種類
スコッチウイスキーにはもちろん蒸留所ごとの違いもありますが、大きく分けて「シングルモルト」「ブレンデッド」の二つに分けられます。
「シングルモルト」はその名の通りモルト100%で造られます。
一つの蒸留所で造られたものを「シングルモルト」違う蒸留所のウイスキーをブレンドした物を「ブレンデッドモルト」と言い、区別しています。
この大麦100%のモルトウイスキーは非常に性格の強い味わいとなりますが、トウモロコシなど他の穀物を使い、連続式蒸留機でピュアな味わいのグレーンウイスキーを混ぜて、マイルドな味わいの「ブレンデッドウイスキー」が出来上がります。
現在スコッチウイスキー全出荷量の40%以上がこの「ブレンデッドウイスキー」で、長らく水割り文化を形成してきた日本ではマイルドなブレンデッドウイスキーが好まれてきました。
スコッチウイスキーの産地
一言でスコッチウイスキーと言っても産地によりそれぞれはっきりとした特徴があります。
主な産地で次の5か所に分けられます。
[ハイランド]およそ40か所の蒸留所がありますが、それぞれはっきりとした性格があり、ピートの香りが強く主張しています。
[スペイサイド]おおよそ50か所の蒸留所があり、「もっともバランスの取れた華美な味わい」と言われています。
[ローランド]蒸留所は3か所のみで、穏やかな風味のウイスキーが多くなっています。
[アイラ]8か所の蒸留所があります。
麦芽を乾燥させるピートは海岸線で採掘されるため、出来上がったウイスキーはヨード香のような独特な香りがします。
「クレオソートな味わい」とも表現されます。
[キャンベルタウン]3か所の蒸留所があります。
特徴としてオイリーでコクがあり、香り豊かな特徴があります。
スコッチウイスキーの飲みかた
最もスコッチウイスキーの味わいを堪能できる飲みかたは、何と言っても常温でストレートにて楽しみたいものです。
バーのゆっくりと流れる時間の中、数年・数十年寝かせた逸品を、歴史を顧みながら香り・味わい・のど越しと自分の感覚を研ぎ澄ませながらじっくりと味わうひと時は、その日一日の至福のときと言えます。
とはいえ西洋人と比較して日本人はアルコールに弱い人種。
40度以上あるウイスキーをそのまま飲むには少し抵抗があります。
このような場合はウイスキーと常温の水(もちろんきれいな水)を半分半分で割って飲むのも良いでしょう。
実はウイスキーのブレンダーはこのようにしてティスティングする時が多く、「最も香りを分析しやすい」飲みかただそうです。
マイルドな味わいのブレンデッドウイスキーの場合は、日本で良く飲まれる、氷を入れた「水割り」でも良いでしょう。
よく冷やした水割りはすっきりとした爽やかな飲み口で楽しめます。
最近また流行しているハイボールはスコッチウイスキーでは合いません。
あの独特のピート香が鼻につき、飲み口も抵抗があります。
もちろん良質の氷と共に味わうオン・ザ・ロックも格別。
氷がゆっくり溶けてウイスキーと交わる時、ウイスキーは目が覚めたように華やかな香りを放ちます。
夏場はクラッシュアイスに入れてミズトにすれば飲み口良く、思わずグラスが進むでしょう。
スコッチウイスキーの価格
スコットランドで最も大きな蒸留所で造られる「グレンフィディック」で3,000円台。
その他の12年熟成物は5,000円台。
熟成が進んで17年ほどで、10,000円台。
熟成の極みと言われる30年物となれば100,000円を超えます。
ブレンデッドウイスキーは謙価版が多く、12年以下の熟成品であれば2,000円以内で入手できます。
スコッチウイスキーに合うおつまみおすすめ
スコッチウイスキーに特化するわけではありませんが、イギリス式で考えれば「フィッシュ&チップス」でしょう。
手軽にほおばれてお腹も満たされます。
一つの皿を囲み話に弾みが付きます。
あとは「ローストビーフ」肉には赤ワインが定番ですが、ジューシーなビーフと適度な脂身が奥深いウイスキーの香りと相まって、味わいに深みをもたらします。
もう一つは「アイスクリーム」を食べながら飲んでみるのはいかがでしょう?
クリーミーで甘いアイスクリームにきりっとしたウイスキーの味わいを差し込み、何とも言えない香ばしさと余韻を楽しめます。
その他ご自身の好きなおつまみ何でも問いませんが、醤油やワサビを使った日本的な食べ物の場合は冷たく冷やした「水割り」にした方がすっきりと楽しめるでしょう。
酒場での楽しみかた
バーカウンターの棚に磨きこまれたウイスキーのボトル。
日本よりはるか北方のスコットランドから旅してきたスコッチウイスキーが所せましと並んでいます。
好みのボトルをキープして「マイボトル」をバーに置くのもよし、棚の端から順に飲んで個性を楽しむのもよし、飽きてきたらマミーテーラ(スコッチをジンジャーエールで割ってレモンを絞る)スコッチキルト(スコッチをドランブィという甘いリキュールで割ったカクテル)にして楽しむのも面白いでしょう。
喫煙者であれば葉巻と一緒に嗜むのも粋なものです。
いずれも大人のたしなみ。
スコットランドの職人が長い年月をかけて造り上げた「生命の水」を時間を掛けてゆっくりとお楽しみ下さい。
まとめ
ウイスキーほど樽で長く熟成させる酒はありません。
丹念に醸し出されたウオッシュ(蒸留されたばかりの状態)を厳選された素材の樽(香りづけにシェリーの空き樽を使う事もあります)で12年。
希少価値ですが長いもので50年熟成するものもあります。
長い年月、時代の変換を見ながらあの香しい酒となります。
この香りの複雑さはワインの比ではありません。
若いころは落ち着きがなく向こう見ず。
年を取るにつれ、丸くなり味わい深くなっていく、人間の成長と同じではないですか。
15世紀から(文献では)人間の知恵と感性で造られ続けてきたこのお酒の歴史とロマンを、今宵は時間をかけてゆっくりとお楽しみください。