なぜバーボン樽の内側は焦げているの?キャラメル感、ヴァニラ感の秘密
バーボンに特徴的なキャラメル感、ヴァニラ感。
ここではその源である、バーボン樽の「焼け焦げた内側」についてご紹介します。
焦がした樽を使うことはバーボンの大きな特徴です。
製造の規定にも、バーボンの熟成には必ず新品の焦がした樽を使わなくてはならない、とあります。
バーボンのアイデンティティの一つですらある樽の焼き入れ。
どのようなものなのか、少し見てみましょう。
チャーとその効果
蒸留したバーボンの原酒を保存する樽の内側を焼き、焦がすことを「チャー(Char, Charing)」といいます。
焦がされた木材の表面は炭化、少し内部はキャラメル化し、熟成中のウイスキーに香りや色を着け、粗さをとり、滑らかに落ち着かせていく効果を持つようになります。
また、木材自体の臭いが原酒に移りすぎるのを抑える効果もあります。
はじめにこの方法を考案したのが誰なのか正確にはわかっていないようですが、今ではこの炭の効果・キャラメルの効果はバーボン造りには欠かせないものとなっています。
しかし、欠かせないことは間違いなく義務づけられてすらいるチャーリングですが、細かい部分で蒸留液とどのように作用しているのか、実は科学的に判明しているわけではないといいます。
化学的な分析も追いついていないようで、職人の腕に依るしかない、という、不思議な工程ですね。
焼くシーンは見た目も綺麗で、もし興味があれば動画などをご覧になってみることをおすすめします。
炭の力
炭といえば、濾過効果も有名です。
バーボンが樽の中で熟成されていく途中、夾雑物に対しては焼きを入れた樽の内側……つまりまさに炭そのものが、強い味方になります。
観賞魚の水槽や洗濯機の中の場合のように「炭を液体に入れる」のとは逆で、液体を「炭の中に入れる」という図式になりますね。
樽の濾過効果に守られながら、バーボンは少しずつ成長し味わいを深めていきます。
また、炭によるミネラル成分の調整・変化の効果も大きいようです。
これもまた、詳しいメカニズムはわかっていないそうですが、炭がウイスキーのミネラル分に変化をもたらし、味わいを変えていくことは経験的には間違いないといえます。
焼き方いろいろ
チャーにはいくつも段階があります。
時代や地域、また樽製造所のこだわりによって異なるようですが、"NO.1″から"NO.4″まで、十数秒から一分程度まで強く焼くという区分が一般的です。
中でも、一分ほどかけて焦がしていく"NO.4″を別名「アリゲーターチャー」と呼びます。
焦げた木を見てみると、テカりのある、ごわごわとひび割れた独特のテクスチャがありますね。
あれをワニの皮に見立てた呼び方です。
そこは北米、やはりクロコダイルやカイマンではなく、アリゲーターなのでしょう。
アリゲーターチャー
アリゲーターチャーまで焼くと、前述のようにひびが入ったような状態ですから、樽の内側と原酒とが触れ合う表面積が大きくなるというメリットがあります。
樽由来の好ましい成分や香り、スモーキーさがより移りやすくなるわけです。
前述の炭の神秘的な効果も強まるでしょう。
やはりチャーリングの効果はアリゲーターが大きくなるのでしょうか。
No.4だけ別名がついているくらいですし、有名どころでは、ワイルドターキー、ジムビームといったブランドもこのアリゲーターチャーを採用しているそうです。
まとめ
前述のように、チャーリングがバーボンに対し科学的にどう作用しているのかは、はっきりとわかっているわけではないようです。
樽に由来する化合物だけでも1000種類を数えるといいますから、分析だけでも難しく、まして相互作用にいたってはなかなか見当もつかない部分があるといいます。
しかし、職人技で焼いた新樽でこそおいしいバーボンが仕上がるのは事実。
大変不思議な、かつバーボン造りに欠かせない、チャーリングについて少しご紹介しました。