意外と知られていないウイスキーの王道!アイリッシュの魅力を丸ごと紹介
ウイスキーといえばどこのものを連想しますか?
スコッチ、バーボン、それとも国産でしょうか。
日本ではスコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアン、そしてジャパニーズ・ウイスキーをまとめて5大ウイスキーと呼んでいます。
アイリッシュ・ウイスキーは、5大ウイスキーの中ではそれほど目立った存在ではありませんが、歴史が長く他のウイスキーにも影響を与えたといわれています。
ここでは、元祖ウイスキーともいえるアイリッシュの魅力を紹介していきます。
アイリッシュとスコッチの大きな違いは製法と香り
アイリッシュ・ウイスキーはアイルランド共和国と、イギリスに属している北アイルランドで生産されるウイスキーのことで、主に大麦を原料としています。
熟成はバーボンやシェリーなどに使用していた樽か、ホワイトオークの新しい樽を使用して3年以上行います。
モルト、グレーンといった分類はスコッチと共通していますが、大麦を発芽させるモルティングの際にピートではなく石炭や木材を使用する点が大きく異なっています。
そのためスコッチのようなスモーキーなフレーバーのついたものは少なく、穀物の芳醇な香りが特色です。
モルトにした大麦以外に、生の大麦や小麦といった穀物の割合が全体の半数以上を占めているのもポイントです。
原料や製造法によって、モルト、グレーンのほかにピュアポットスティル、そしてブレンデッドの4種類に分けられます。
ピュアポットスティル・ウイスキー
ピュアポットスティル(大麦麦芽)と未発酵の大麦、オート麦を原料に、単式蒸留機で3度蒸留させたもので、アイリッシュだけに見られるタイプです。
生の大麦のピリッとした味わいが感じられることから、アイリッシュの特色が良く出ているとして大切にされてきました。
60年代以降、ブレンデッド・ウイスキーの広がりにより、全体に占める割合が減ってしまったものの、ブレンドされてもなお味の決め手として独特の存在感を発揮しています。
モルト・ウイスキー
大麦麦芽のみを原料とするウイスキーで、1つの蒸留所のみで作ったモルトのことはシングルモルトといいます。
単式蒸留機を使って2、3回蒸留させることで雑味が抜けてまろやかな味わいになります。
モルティングの際にはピートの代わりに石炭や木材を使用し、キルトと呼ばれる炉の中で乾燥させるのもポイントです。
スコッチではほとんど廃れてしまった3回の蒸留を行う目的は、穀物の風味が強くなりすぎないようにするためだといいます。
グレーン・ウイスキー
トウモロコシなどの穀物を原料としており、コラムスティルという連続式の蒸留機を使って蒸留を行います。
モルトよりも軽くすっきりとした味わいで飲みやすいのですが、そのままボトルに詰められることは少なく、主にブレンド用として使用されます。
ピュアポットスティルにモルト、グレーンの原酒をブレンドしたものがブレンデッド・アイリッシュ・ウイスキーで、ピュアポットスティルの持ち味が出て独特の風味になります。
スモーキーなフレーバーはほとんどなく、すっきりとした味わいです。
スコッチより古い?謎だらけのアイリッシュの歴史
アイリッシュ・ウイスキーはヨーロッパで最も古くからある蒸留飲料の1つとされています。
ウイスキーという言葉も、アイルランド語で「命の水」を意味するuisce beatha(イシュケ・バーハ)に由来しています。
ちなみに、スコッチやカナディアンのラベルではウイスキーの表記を「whisky」とつづりますが、アイリッシュやアメリカン、ジャパニーズでは「whiskey」とつづります。
一番古い伝承では6世紀にアイルランドの修道僧が製造を始めたといわれ、12世紀にはビールに似た濁り酒が飲まれていたといいますが、確かな記録は残っていません。
ウイスキーはアイルランドからスコットランドに伝わってスコッチになったともいわれていますが、どちらが先かの議論は決着がつきそうにないのが現状です。
世界のウイスキーだったアイリッシュの衰退
アイリッシュ・ウイスキーに関する確実な記録では、ブッシュミルズ蒸留所が操業していたことがはっきりと分かる1784年にまで時代が下ります。
18世紀にはピョートル大帝らの高評価を受け、アイリッシュの価値は上がっていきました。
2千もの小さな蒸留所が乱立していたのを19世紀半ばには160に統合、1880年には28の蒸留所が操業していました。
世界のウイスキー・シェアの6割を占めていた時代もありました。
しかし最大の輸出先であったアメリカが1919年に禁酒法時代に入ったこと、アイルランドの内戦の影響などからアイリッシュはスコッチにシェアを譲ることになりました。
多くの蒸留所が閉鎖に追い込まれ、現在も操業しているものは4つしか残っていません。
今も現役!アイルランドにある蒸留所4つ
ブッシュミルズ蒸留所
1608年にアントリムの領主サー・トーマス・フィリップスが立ち上げた世界最古の蒸留所といわれており、北アイルランドのアントリム州にあります。
かつてはピュアポットスティルを製造していたこともありましたが、現在ではモルト・ウイスキーが主流です。
ブッシュミルズのシングルモルトはモルトの王道的な味わいで、初心者にもおすすめの1品。
ブレンデッド・ウイスキーではブラック・ブッシュが有名です。
ミドルトン蒸留所
アイルランド南部、マンスター地方にあるコーク州の蒸留所で、1825年にマーフィー三兄弟によって創業されました。
1975年には世界最大の蒸留機を備えた蒸留所として、かつての建物の後ろにリニューアルされました。
創業時の蒸留所跡は、ウイスキー博物館の一部として一般に公開しています。
タラモア・デューやジェイムソンといったすでに閉鎖された蒸留所の銘柄を引き継いでいるのが特色です。
レッド・ブレストやジェイムソン、グリーンスポットといったピュアポットスティルのほか、ブレンデッド・ウイスキーも数種類生産しています。
クーリー蒸留所
独立系の蒸留所を設置するという国の意向を受けて1967年に創業された比較的新しい蒸留所で、アイルランド東部のレンスター地方のラウス州クーリー半島にあります。
「古き良き時代のアイリッシュ・シングルモルトを復興させよう」という目標のもと、ジョン・ティーリングによって設立されました。
現在ではビーム・サントリーが親会社となっており、シングルモルトのカネマラが特に有名です。
スコッチのアイラほどではありませんが、アイリッシュには珍しいピート香が強く通向けの味となっています。
他にもブレンデッドタイプも何種類か生産しています。
キルベガン蒸留所
アイルランド中部ウェストミーズ州キルベガンのブロスナ川沿いにある蒸留所で、アイルランドで最も新しい蒸留所と呼ばれています。
もともとは1757年に創業されましたが、当時の名前はブロスナ蒸留所で、マシュー・マクマナスという人が製造を始めました。
1843年にジョン・ロックによって買収されたため、ロックス蒸留所としても知られています。
1958年に一度閉鎖されたものの、クーリー蒸留所が所有権を買い取り、博物館や熟成のための倉庫として使用。
150年ほど前にタラモア蒸留所で使用されていたポットスティルを搬入し、ブロスナ蒸留所の創業250周年にあたる2007年にキルベガン蒸留所として復活しました。
まとめ
ここでは、スコッチと少し比較していく形でアイリッシュ・ウイスキーの特徴や蒸留所、代表的な銘柄などを紹介していきました。
5大ウイスキーの中ではあまり知られていないアイリッシュですが、穀物の豊かな風味を楽しめる銘柄がいくつもあります。
ピュアポットスティルやシングルモルトをストレートで味わってみてはいかがでしょうか?