オーストラリア生まれだけど「バーボン」? オーストラリア産のバーボンってどうなの?
バーボンの人気は今や世界的を席巻しています。
特にオーストラリアでの人気はすさまじく、ウイスキー市場の売上のうち60%をバーボンが占めているそうです。
そんなオーストラリアに、「バーボン」が出現しました。
バーボンと、バーボン人気が沸騰するオーストラリアに現れた、オーストラリア産バーボンを見てみたいと思います。
目次
オーストラリアで「バーボン」ってアリ?
オーストラリア産のバーボンと聞いて、違和感を覚えた方も多いのではないでしょうか。
バーボンはアメリカ合衆国を代表するウイスキー。
他の国で作られたものは見たことがありませんよね。
バーボンの定義をおさらいしてみたいと思います。
バーボンになるための条件とは…
バーボンはアメリカ合衆国で生産される「アメリカン・ウイスキー」の代表です。
世界的な人気を集めており、他のウイスキーとは異なる、独特の風味や口あたりが特徴です。
バーボンが「バーボン」と呼ばれるためには、厳密な規定をクリアする必要があります。
どんなものかと言いますと、以下の通りです。
- アメリカ合衆国国内で製造されていること。
- 原材料となるトウモロコシを51%以上含んでいること。
- 熟成には「新品の炭化被膜処理」を行われた「新品のオーク樽」を使用すること。
- 蒸留はアルコール度数80%以下で行うこと。
- 熟成のために樽に入れる前の原酒のアルコール度数は62.5%以下であること。
- 熟成後、製品としてボトリングする際のアルコール度数は40%以上であること。
これ以外にも、バーボンは「世界5大ウイスキー」と呼ばれるものの中で唯一「合成着色料」の使用が禁止されています。
バーボンはケンタッキー産でなければならない?
バーボンの産地といえば、すぐに思い浮かぶのが「ケンタッキー」ではないでしょうか。
ケンタッキーはバーボン発祥の地とよばれ、「バーボン・キャピタル」と呼ばれるほどたくさんのバーボンが作られています。
「ジム・ビーム」、「フォアローゼス」「ワイルドターキー」「ウッドフォードリザーブ」など、有名どころのバーボンはほとんどケンタッキーの蒸留所で製造されています。
バーボンを保存するための委員会や歴史ある蒸留所などもあり、まさに「バーボンの首都」。
ケンタッキーの人びとは、「ケンタッキー産でなければ、本当のバーボンとはよべない」と胸を張っています。
そのため、「バーボンはケンタッキー産」でなければならないというイメージが定着しているのです。
バーボンはケンタッキーだけのものではなかった!
「ケンタッキー産でなければ、バーボンではない」と発言したのは「バーボンフェスティバル」が開催される、「ルイビル市」の市長やケンタッキー州の州知事です。
しかし、厳密にいうと、バーボンの規定には「ケンタッキー産」に限定するとは記されていません。
記されているのは「アメリカ国内」ということばのみ。
つまり、バーボンはケンタッキーに限らず、アメリカ国内であればどこでつくられても問題はないのです。
近年アメリカは、「マイクロディスティラリー」と呼ばれる「小規模蒸留所」が次々と開設されています。
州の規定が緩和されたことなどにより、蒸留所を開設しやすくなっているのです。
そのため、ケンタッキー以外でもたくさんのバーボンが作られるようになりました。
ほとんどは従業員が少なく、製造本数もわずかなものですが、こだわりと品質はかなりのもの。
実際に、そうした小規模な蒸留所が国際的な大会で金賞を受賞しています。
例えば、シアトルのソード―という街にある「ウエストランド蒸留所(Westland Distillery)」。
この蒸留所で作られたシングルモルトウイスキーは世界各地でたくさんの賞を受賞し、そのクオリティの高さが認知されています。
また、同じくシアトルの「コッパーワークス蒸留所(Copperworks Distillery)」も世界的な評価の高いマイクロディスティラリーです。
アメリカの新興蒸留所に興味があれば、これらの製品からはじめてみるのがおすすめです。
アメリカ国内ならアリ、でもオーストラリアは…?
ケンタッキーはバーボンの始まりの地であり、数多くの名品が生まれる場所です。
しかし、バーボンはケンタッキーだけのものではありません。
ケンタッキーの人びとがなんと言おうと、アメリカ国内で作られていれば、それは全て「バーボン」なのです。
それでは、前述の「オーストラリア産」のバーボンはどうでしょうか。
製法や細かい原材料などの規定を守っていれば、バーボンとよべるのでしょうか。
答えは勿論「NO」です。
アメリカとオーストラリアの間で締結された自由貿易協定には「バーボンまたはテネシーウイスキーは米国の法律に従って、米国内で製造されなければならない」という注釈が加えられています。
つまり、オーストラリア産のバーボンはバーボンと名乗ることを許されないのです。
オーストラリアのバーボン人気ってどんなもの?
もともとオーストラリアではスコットランド産の「スコッチウイスキー」が人気の主流でした。
しかし近年、このスコッチにとってかわったのが「バーボン」です。
アメリカ文化の普及に伴って、アメリカを代表するウイスキーであるバーボンが人々には魅力的に映るようになってきたのです。
現在のオーストラリアではバーボンが市場の半分以上を占めています。
人口で換算すると、オーストラリア人はアメリカ人の2.5倍もバーボンを愛飲していることになるといいますから、いかにバーボンが流行しているかがわかりますよね。
このバーボンブームにのって、大手蒸留所も積極的にプロモーションを展開しています。
「ジム・ビーム」や「ジャックダニエル」はオーストラリアにて魅力的なキャンペーンを展開。
それが功を奏して、現在これらのブランドがビッグ2としてオーストラリアに君臨しています。
こうしたビッグブランド以外にも、150種類以上のバーボンブランドと400種類以上のバーボンボトルがオーストラリアの市場を巡っているのです。
Bluestill distillery(ブルースティル蒸留所)の「バーボン」ってどんなもの?
オーストラリアのバーボンブームにのって、オーストラリアの蒸留所もそのブームにあやかるべく活動しています。
「タイガー・スネーク・サワー・マッシュ・ウイスキー」で知られる「カメロン・シメエ蒸留所」はマーケテイング戦略に「バーボン」という言葉を使用。
「テネシー州のウイスキーとケンタッキー州のバーボン」からインスピレーションを得たとしたのです。
他の蒸留所も、自社のウイスキーに「バーボンスタイル」と名付けるなど、バーボンを彷彿とさせる戦略を行っています。
ところが「ブルースティル蒸留所」は自社のウイスキーラベルに、ダイレクトに「バーボン」とつけてしまいました。
実際にラベルに「バーボン」の文字を入れて販売したため、ちょっとした騒動が巻き起こります。
アメリカ・ケンタッキー蒸留者協会と蒸留酒協会が、アメリカとオーストラリアとの間に締結された自由貿易協定を違反しているとして米国貿易代表部の事務局に報告したのです。
バーボンファンからも批判を受けていますが、ラベルは以前そのまま。
ホームページにも「バーボン」と記されています。
BLACK WIDOW HONEY BOURBON
オーストラリアのニュータウンで作られています。
ラベルには「BLACK WIDOW(黒い未亡人)」を彷彿とさせる女性の肖像が使用されており、独特な雰囲気です。
カラーは琥珀。
甘い口当たりのバーボンです。
しかし、バーボンといいながらもアルコール度数は37.5%。
バーボンの規定の40%に足りていません。
ですから、原産地の問題としてだけではなく、製品としてもちょっとバーボンとは認めにくいかもしれません。
まとめ
バーボンブームに沸くオーストラリアに現れた、「オーストラリア産バーボン」の「BLACK WIDOW HONEY BOURBON」。
残念ながら、あまり芳しい評価を得ることは出来ていないようです。
しかし、本場ケンタッキーのバーボンとは異なる、独特の風味が美味しいとする人もいます。
興味があればインターネットで購入できますので、トライしてみてはいかがでしょうか。